3月に入り、冬から春の訪れを少しずつ感じるこの頃。
スポーツの世界でも球春到来という言葉があるように野球のシーズンに突入してきます。
中でも今年は4年に一度、野球の世界一を決める大会ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が間もなく開幕を迎えようとしています。
サッカーでいうW杯のような位置づけでしょうが、サッカーほど世界中でプレーされている印象のない野球。
アメリカ、中南米、アジアといった地域では盛んに行われているものの、他の国の野球事情はどうなっているのでしょうか?

決勝が行われるドジャー・スタジアム
決勝が行われるドジャー・スタジアム

野球の世界一はアメリカじゃない!?

野球にも世界ランキングがあります(世界野球ソフトボール連盟制定/WBSC)。
ユースなどアンダーカテゴリーの試合もランキング決めの対象となるため、その国の野球の総合力をはかるものといえます。
WBSCの加盟国数は現在142。ちなみに、国際サッカー連盟の加盟国数は211。
サッカーに比べると少ないものの、割と多くの国で野球が行われているイメージです。
野球の「世界ナンバー1」の国といえば、アメリカの印象が強いのですが、意外にもアメリカは世界1位ではないのです。
世界ランキング1位の座についているのは、なんと日本!
2位にアメリカ、3位に韓国、4位に台湾と続きます(2016年11月時点)。
ちなみに、女子のランキングもあり、こちらも日本が1位、2位アメリカ、3位カナダと続いています。
11月に行われたU-23ワールドカップ(男子)では、日本が初代王者に輝きました。
代表トップチームだけでなく、アンダーカテゴリーの国際大会での結果もランキングに反映され、国全体としての強さをはかるものになっています。
ただ、アメリカがどのカテゴリーにもドリームチームで挑んでいるかというと、そうとは限りません。
サッカーW杯のように、各国が一枚岩となり本腰を入れて国際化を進めていくことができれば、世界ランキングも納得いくものになるでしょう。

競技力強化には、若い世代の活躍も必須
競技力強化には、若い世代の活躍も必須

意外と野球が盛んなあの国

東アジア、北米、中南米が世界ランキングの上位に来る中、欧米勢でも健闘している国があるのです。
今回のWBCにも出場するオランダ、イタリアです。世界ランキング9位のオランダは侮ることのできない野球強豪国。オランダは実は4つの国で構成されている王国で、その4つのうちの「キュラソー」という国は中でも野球が盛んです。
日本でも活躍しているバレンティン選手(ヤクルトスワローズ)もキュラソー出身のひとりです。
キュラソーはカリブ海に浮かぶ島国。そういった地理から考えると野球が盛んなのも納得ですね。
そして、もうひとつ欧州でも活発に野球が行われている国がイタリアです。
イタリアにはサッカー同様に「セリエA」から順にA2、B、C1、C2とランクによってカテゴリー分けされたリーグが存在します。1944年にローマ南部ネットゥーノという街で、初めて野球が行われたということから、意外とイタリア野球の歴史は古いことがわかります。
ただ、近年では国際試合のレギュレーションやルールの変化への対応が遅れ、同じ欧州のオランダと比べると国際舞台での飛躍に苦しんでいるといわれています。

街並みが美しいオランダ・キュラソー
街並みが美しいオランダ・キュラソー

なかなか進まない野球のグローバル化

アメリカ、中南米、東アジアだけでなく、オランダ・イタリアのようにヨーロッパでも野球が行われている場合もありますが、やはりまだ、国際的な広まりからすると偏っているという印象をもたれている野球。
その象徴が、オリンピック種目からの除外でしょう。
しかし、WBCは元々「野球の世界一決定戦」という名目でつくられた大会です。
にもかかわらず、第4回を迎えようとしても、各国がドリームチームを送り出せるような状況には、まだ至っていないのが現状でしょう。
世界の競技人口でみると、バスケットボールが第1位で約4億5000万人、サッカーが第2位で2億5000万人、野球は7位で3000万人といわれています。
アメリカの国技といってもいいバスケットボールと野球では大きな差が生まれています。
NBAが積極的に国際化を進める一方で、MLBはWBCには消極的な姿勢です。
やはり、野球の国際化の鍵を握るのはアメリカといえるでしょう。
―― 本番直前の練習試合では不安な面を見せていた日本代表ですが、再び世界一の座を目指してがんばってほしいですね。
ふだんは、なかなか観ることができない各国の野球を観られるのもWBCならではの楽しみ方でしょう。