イクラはどうして赤いのでしょう? 七十二候<鱖魚群(さけのうおむらがる)> 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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イクラはどうして赤いのでしょう? 七十二候<鱖魚群(さけのうおむらがる)>

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パーティーシーズンを盛り上げる赤色☆

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心身の疲労を回復させる食べ物としても知られています

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下流をのぼっている間に出会って結婚しちゃいます!

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ふるさとに帰れるのは100匹のうち2匹以下。がんばれ〜

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街や家に赤いモノが増える12月がやってきました。『鱖魚群(さけのうおむらがる)』、サケが群れをなして川をさかのぼる時季です。日本の主流は、シロザケ。秋には海から帰りはじめ、すでに食卓を賑わしていますね。サケはなんと、「里帰り出産」するためにわざわざ自分が生まれた川に戻ってくるのだそうです! 両親の故郷で産み落とされる卵たち・・・そういえば、イクラってどうしてこんなに赤いのでしょう?

イクラの赤は、お母さんからもらった色

イクラは、「魚卵」という意味のロシア語『икра (イクラー)』が語源。つまり、もともとはサケとはかぎらないのですね。ロシア語でイクラは「赤い魚卵(красная икра クラースナヤ・イクラー)」、ちなみにキャビアは「黒い魚卵(чёрная икра チョールナヤ・イクラー)」と呼ばれています。秋から冬にかけて、イクラの表面の皮はだんだん丈夫になっていくそうです。
ところで、サケは「白身魚」だという事実をご存じでしょうか? あの身の色はマグロなどのようにもとから赤いわけではなく、海で食べているオキアミやエビなどのエサによって赤くなったものなのです。甲殻類に含まれる『アスタキサンチン』は、じつはオキアミやエビが食べている藻類に含まれている色素成分。サケの身が赤いのは、食物連鎖の結果だったのですね。養殖などで海を回遊しないサケの身は白っぽいままなのだとか。そのため、美味しそうに見えるよう色素成分を与えて「着色」したりもするそうです。
この『アスタキサンチン』は強い抗酸化作用があることで知られ、最近はそのアンチエイジング効果なども話題になっています。サケの両親は、愛する卵を守るために体内で赤色を移動させます。オスは、外敵からガードするため自分の体の表面に。メスは、子どもが包まれている卵の表面に。イクラの赤は、両親の愛情の証だったのです! しかも川を遡りはじめたサケは、もう何も食べません。産卵が済むとまもなく、真っ白な体で死んでいきます。

どうやってふるさとを探し当てるのでしょうか

生まれた稚魚はやがて海に出て、北太平洋を数千キロにわたって回遊。親になるまでには3年〜6年かかります。それで本当に、生まれた川まで、まちがいなく帰ってくるのでしょうか? 海流があるとはいえ、広い海の中で、いったい何をたよりに方向を定めて泳いでいるのでしょうか。
1954年に北海道の常呂川(ところがわ)でおこなわれた「標識放流」調査では、なんと98%のサケがちゃんと戻ってきたという結果が報告されています。魚には、太陽の位置を基準にして方角を決め 一定の方向に移動できる能力があるといいます。ただ、サケの回遊する北太平洋は天気の悪い日が多く、しかもサケは60mもの深いところを泳ぐことも多いため、はたして太陽の位置をたしかめることができるかどうか・・・しかし一方で、日の出の頃にサケが水面近くまで浮かんでくることが観察されていて、このとき太陽の位置を定めているのかも?とも考えられるそうです。そのほかにも「海水の温度差や塩分の濃度差を感じて回遊しているのではないか」「地球の磁気を感じているのではないか」など諸説があり、おそらくサケはいろいろな能力を活かして回遊していると考えるのが正しいようです。
さて、無事に沿岸近くまで回遊してきたサケですが、こんどは自分の生まれた川をどうやって探し当てるかというと・・・生まれた川の水の匂いを記憶していて、それをたよりに帰ってくるのだそうです。以前テレビ番組で、利き酒ならぬ「利き水」によって川の名前を当てる人を見たことがあります。じつは川の水にはいろんな物質が溶け込んでいて、川によってそれぞれ匂いがちがうようです。サケがその匂いの中でどの物質を嗅ぎ分けているのかはまだわかっていないそうですが、なにか特定の匂いではなく、川に溶け込んでいるいろいろな匂いをおぼえているのではないかと考えられています。いわれてみれば、嗅覚の鈍った人間でさえ、自分の生まれた街の匂いはそれとなくわかったりしますよね。そして、嗅ぐととってもリラックスします。最後は生まれた場所で安心して死にたい・・・そんな思いが、過酷な川のぼりに耐える力になっているのでしょうか。

サケが自然に産卵できる川は少ないようです

卵のときではなく「孵化したとき」にいた川の匂いをたよりに帰ってくる、というサケの性質を利用して、サケがいなくなってしまった川に卵を持っていって孵化させ、もういちど帰ってきてもらおうという試みもおこなわれています。現在、日本産のサケのほとんどは、河口付近で捕獲され人工孵化によって育てられているのです。サケを自然のままで産卵させようとしても、途中で密漁されたり、産卵できる場所がととのっていなかったりするからだそうです。卵から稚魚になるまで育てて川や海に放すと、そのサケが自分でエサをとって大きくなり、再び戻ってきてくれるのですね。
昔は、北海道から東北地方にかけての川のいたるところで、自然のままで産卵して増えたサケがとれていたといいます。アイヌの人たちは、サケを「神の魚(カムイチェプ)」といって大切にしていました。産卵で力尽きたサケの体は生きものに食べられるだけではなく、バクテリアによって分解されてプランクトンを増やし、翌春に孵化した稚魚たちはそれを食べて成長するのです。命がけの長い旅をして帰ってきたサケがふるさとの水の中で安心して生涯を全うできるよう、川に心を向けていたいですね。<参考>
『サケのたんじょう』桜井淳史(あかね書房)


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