茶席の椿 床の間を飾るつぼみ一輪の美しさ 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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茶席の椿 床の間を飾るつぼみ一輪の美しさ

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こんなに咲くと大迫力!

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夏の茶席の主役「木槿」

夏の茶席の主役「木槿」

ただ一輪の美しさに圧倒されます

ただ一輪の美しさに圧倒されます

今年も椿が咲き始めました。ほんの一輪飾っても部屋を華やいだ雰囲気にする椿。ぎっしりと木に咲く姿は実に絢爛豪華です。古来から日本人に親しまれてきたこの花ですが、茶人達も茶席の飾りとして、ことのほか椿を愛してきたことは、品種に残る数々の銘からも窺い知る事が出来ます。
千宗旦や織田有楽と言った茶人の名を取った「宗旦椿」や「有楽椿」。「数寄屋」や「侘助」の銘は、茶の湯の心を表わす言葉である、「数寄」「侘び」から取った事が想像出来ます。また、京都の大徳寺には、千利休から秀吉が譲り受けたと伝えられる椿の木が残されています。
ところで茶席の花の生け方には、茶の湯独特の美意識に則した決まり事があります。椿も茶席にふさわしい姿で飾られ、日常の中で楽しむ椿とは趣を変えた魅力を発揮しています。茶席での椿の飾られ方、その鑑賞の仕方についてご紹介します。

「炉の季節」の女王「椿」

茶の湯では、5月から10月までを夏季の「風炉の季節」、11月から翌年の4月までを冬季の「炉の季節」と大きく二つに分け、釜を据える場所や、扱う道具を変えて、折々の季節感が味わえる茶席をしつらえます。
茶席の花も季節に合ったものが使われますが、炉の季節に床の間を飾る花は何と言っても椿です。多くの花が冬枯れとなった頃に、寒さに負けず盛りのシーズンを迎える椿。その開花の期間は、炉の季節と完全に一致するため、炉の季節の床の間は椿一色。「炉の花は椿」とは、茶人の間では言い慣わされた言葉です。
逆に早く咲いたからと言って、10月に椿を生けることはありません。風炉の季節の終わりには菊やホトトギスといった、所謂「草花」を生けるのが約束。
11月の「炉の季節」を待って、しつらえをがらりと変えた茶席に登場する椿は、見る者を改まった気持ちにさせます。

茶席の椿はつぼみが原則。そのココロは?

開花しきった椿のあでやかさには目を奪うものがあります。しかし茶席の椿は基本的に開花したものを飾りません。「侘助」のように小さく筒型に咲く一部の品種を除き、ほとんどの場合、開花を直前にした、膨らんだつぼみの姿を生けます。
ちなみに風炉の季節の第一の茶花は「木槿(むくげ)」ですが、この花は朝咲いて夕方にはしぼんでしまう所謂「一日花」。木槿を生ける時には、完全に開花したものを使います。
つぼみを飾る理由として、椿は開花した時よりも、開花する直前の方が生き生きとしたエネルギーを孕んでいるからと言われます。確かに開花の時を待つつぼみの膨らみは、瑞々しい力を感じさせます。
しかしつぼみを飾るもうひとつの理由として考えられるのは、開花した椿が、茶席に飾るにはあまりにあでやかすぎる、という事です。妖艶とも言える開花した椿に比べ、つぼみは上品で楚々とした印象です。そして木槿は開ききっていても楚々とした美しさです。
「茶禅一味」と言う言葉がありますが、茶の道を志す者にとって、茶の湯は禅の修行。茶席はその道場。修行するものが座る道場に、あでやかさは不要なのです。

千変万化に茶席を飾れど、ただ一輪―思わず頭が下がる崇高な美しさ

「炉の花は椿」と書きましたが、かと言って炉の茶席の床の間はどれも同じ、という訳ではありません。椿には白、赤、ピンクといった色の違いは勿論のこと、前述の「侘助」をはじめとして、「初嵐」「白玉」「曙」「加茂本阿弥」「西王母」などの様々な銘を持った品種があり、現在その数は何と二千二百種にも登るとか!品種によって、つぼみの形も丸く愛らしいものや、細長く端正な印象のものと様々です。
また、11月頃には紅葉した照葉の一枝を添えて生けられる事が多く、これから開花を迎える椿と散りゆく葉の取り合わせは、見る者に万物の移ろいと輪廻の姿を感じさせます。また、年が改まれば、今度は梅や蠟梅、芽吹いた柳と取り合わせるようになり、床の間は一変して華やいだ印象になります。特に新年の「初釜」の席では、大きく結んだ芽吹き柳の枝と紅白の椿の取り合わせが茶席を豪華に演出します。
しかしやはり、椿には一輪のみ入れた姿にこそ崇高な美しさがあります。ただ一輪の椿に対峙していると、おのずと頭が下がる思いにとらわれます。
茶席を様々に飾りつつ、見る者に敬虔な気持ちを抱かせる椿。茶人達に愛されてしかるべき花なのです。


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