パリシンドロームと日本人のゴミ拾い

2016/10/25 16:30

秋も深まるこの季節、海外のニュースをご紹介しましょう。 「花の都パリ」──とは使い古され表現ですが、パリと言えば、映画のような美しい街並み、芸術的でお洒落なイメージが昔からあります。ところがそんなパリのイメージに憧れて実際に住んでみると、現実はまるで違い、失望して帰国する……そうしたケースも意外とあるようです。 原因のひとつは街の汚れなのですが、そんななか、パリで日本人が街の清掃活動をしているというニュースが! 自発的に始まったパリのゴミ拾いは、フランス人にも広がっているそう。 そこで今回は、「パリシンドロームと日本人のゴミ拾い」についてお届けします。

水の都、芸術の都などパリの呼び名はいろいろあるけれど…。写真はセーヌ川とエッフェル塔
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理想と現実のギャップで鬱に近い状態に イギリスBBCで流れたニュースにより、海外でも知られるようになったパリシンドローム。 そのニュースの内容は……、 ──『映画アメリやパリのファッション、そしてルーブル美術館に代表されるような芸術や文化、ロマンティクな薫りに胸を膨らませて渡仏する日本人は多い。年間約100万人の旅行者が訪れ、うち数万人の在仏日本人の多くはパリで暮らしている。しかし、パリとのショッキングな出会いにより、「パリシンドローム(パリ症候群)」という深刻なカルチャーショックに陥ってしまう。その数は年間12人程度。とくに30代女性にその傾向が見られ、日本大使館では24時間ホットラインを設け、必要であれば病院を探す手助けをしている』──というものでした。 パリシンドロームは、1991年に精神科医の太田博昭氏が『パリ症候群』という著書を発表し、この精神疾患が認知され始めました。 空気を読みながらコミュニケーションする日本人が戸惑う、しっかり自己主張をすることが必要なフランスでの暮らし。 雑誌やテレビで見たロマンと品格ある街並みには、犬のフンやタバコの吸い殻、空き缶が放置されていて…。 パリシンドロームとは、こうした現実に対峙しきれなくなり、鬱病に近い状態になってしまう精神医学用語なのです。 なぜ日本人が、ゴミ拾いのボランティアを? 世界から見ると、日本は路上にゴミが散乱してないことに賞賛の声があがるほど、清潔な国です。こうした国民性もあり、海外旅行に出かけた際にカルチャーショックを受けることも多々あるでしょう。 とはいえ、パリの街のゴミ問題は、かなり深刻です。 そのパリで今、日本人が中心となり、清掃活動が行われています。 始めたのは、東京・原宿に拠点を置きゴミ拾いボランティアを行うグリーンバードの元メンバー。2007年に支部を立ち上げ、月1回、シャンゼリゼ通りやチュイルリー公園などパリ市内を清掃しています。 「なぜ、日本人が。何のために?」。そう思われるかもしれません。 しかし、その答えはとてもシンプル。自分の住むところだから綺麗にしたいという、当たり前の気持ちから行っているとか。さらに、その行動はフランス人にも好意的に受け止められている様子。そして輪は少しずつ広まり、ボランティア活動をする人は、日本人よりフランス人の方が多くなっているようです。 カルチャーのギャップを乗り越え、自発的な活動を行うことで、フランス人の意識改革にもひと役買っていると言える「パリシンドロームと日本人のゴミ拾い」。パリシンドロームを救う一助となればよいですね。 秋の旅行シーズンに、渡仏される方もいることでしょうぜひ、日本人とゴミ拾いに想いを馳せてみてはいかがでしょう。

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