朝晩の冷え込みが一段と厳しくなってきました。神嘗祭もべったら市も、時代祭りも過ぎ、本日23日は二十四節気「霜降(そうこう)」。時雨のたび色づく山々に、実りの秋の収穫が終わった田畑に、初霜が降りる時節がやってきます。

七十二候では、今日から「霜始降(しもはじめてふる)」

10月も終盤となり、朝夕の冷え込みに冬の到来を予感させる晩秋となってきました。本日23日から二十四節気では、「霜降(そうこう)」。そして七十二候でも、今日から「霜始降(しもはじめてふる)」に暦が変わります。
「露が陰気に結ばれて霜となりて降るゆえなり」と暦便覧に記されるように、北国から徐々に朝の露が霜となり、山々は次第に色鮮やかな紅葉で染まっていきます。
霜が降りる条件とは、気温が4度以下となり、地表付近が氷点下になること。昼間晴れていて放射冷却が起きてぐんと冷えこんだり、秋の時雨によって空気中の湿度も高いときに霜が降りやすいのだそうです。
北海道ではすでに雪が降り、今年は冬の到来が早いよう。コートや暖房器具、毛布など、しっかりと冬支度を始めておきたいですね。

奈良「春日大社」では「国宝殿」が今秋リニューアルOPEN

平成28年は、奈良・「春日大社」の20年に一度の式年造替の年。11月6日の正遷宮に向けて、10月1日より旧春日大社宝物殿が「春日大社国宝殿 Kasugataisha Museum」として、リニューアルオープンしています。
およそ1300年間絶えることなく人々を見守り続ける春日大社は、国宝352点、重要文化財971点をはじめ多くの文化財を所蔵。神様がお使いになる「神宝(じんぽう)」が多く奉納され、とくに平安時代から鎌倉時代にかけての王朝美術工芸品の宝庫なのだとか。
開館にあたっては、国宝・重要文化財の中から珠玉の名品約50点が勢揃い。国宝「金地螺鈿毛抜形太刀」(きんぢらでんけぬきがたたち/平安時代)、国宝「蒔絵箏」(まきえのこと/平安時代)、国宝「赤糸威大鎧・竹虎雀餝」(あかいとおどしおおよろい・たけとらすずめかざり/鎌倉時代)など、悠久の絢爛美と意匠を誇る神の宝であり、国の宝が公開される展示は必見です。
また、第六十次式年造替の外遷宮を記念した、御假殿参拝用の御朱印も期間限定(平成28年11月6日の本殿遷座祭まで)で授与されているとか。壮大な歴史を紡ぐ春日の杜へ、この秋、足を運ばれる方もきっと多いことでしょう。

野山には「あけび」が実り、「玉はばき」の花が咲きます

蔓になるオレンジ色の実が「からすうり」、薄紫色の実が「あけび」。樹木が艶やかに色づくなか実るあけびは、秋の野山の風物詩だといわれています。熟すと縦に割れるので、中の透明なゼリー状の果肉をそのまま食べたり、残ったほろ苦い皮をカットしてあく抜きしたあと、味噌で炒めたり。山形県などで栽培もされていて、この時節の味覚として親しまれていますね。

秋の山や丘陵地に咲くのが、「コウヤボウキ(高野箒)」という長さ1.5センチほどの小さな花。キク科の小低木なのですが、クルリと反り返った筒状の花びらが、間近で見るとなんとも可憐です。
~始春の初子(はつね)の今日の玉はばき 手にとるからにゆらく玉の緒~  万葉集/大伴家持
万葉の歌に詠まれた「玉箒(たまはばき)」が、今に該当する「コウヤボウキ」。玉箒とは、コウヤボウキで作った箒(ほうき)に玉を飾ったもので、玉は命を表し、延命長寿を意味するもの。旧暦正月の最初の初子の日に宮中では、辛鋤とともに飾ったのだそうです。
辛鋤は農耕、(蚕の床を掃くための)玉箒は養蚕。神事でもある国の大事なふたつの産業の繁栄を祈るものだったのでしょうか。
また「コウヤボウキ」という名は、竹を植えることが禁じられていた高野山で、この枝で箒を作ったことからつけられたとか。
――そんないにしえの由来を秘めて咲く花や蔓に成る実を見つけに、日々色づく野山を散策したくなる「霜降」の時節となりました。