熟した柿と牛乳を混ぜるだけで固まる超簡単デザート「柿プリン」。TVなどでも話題となり、ご存じの方もいらっしゃることでしょう。柿はラテン語で「神の果実」と呼ばれ、日本では古くから「柿が赤くなると医者が青くなる」ほど健康効果があるとされてきました。他のフルーツとはちょっと次元が違うほどの高評価!そんな柿パワーの秘密にせまります。

甘くて美味しいだけでもじゅうぶんなのに♪
甘くて美味しいだけでもじゅうぶんなのに♪

柿が赤くなると女性は美肌効果で白くなる!

昔は、冬を迎える前に柿を食べて風邪を予防したそうです。柿はビタミンCの含有量が果物の中でもトップクラス。柿1個を食べると成人の1日分の必要量を上回るほど。また、柿には消化を促進する酵素や、ガンを予防するビタミンA、便秘予防・利尿促進・二日酔いに効果のある食物繊維、骨の老化を防止するビタミンBも含まれています。夏の疲れが残ったまま仕事をし、宴会なども増えるこの時期。現代人も栄養いっぱいの柿を食べて、これからの季節に備えたいものです。
渋みのもと「タンニン」(お茶や赤ワインのポリフェノールで知られていますね)の働きも見逃せません。タンニンには、コレステロールを少なくして高血圧を防ぐ効果があります。また、たんぱく質凝固作用で虫歯菌やO-157菌を殺菌・抗菌したり、インフルエンザやエイズウイルスも抑えることができるといわれています。タンニンの多い渋柿を傷口に当てると血止めになり、防腐・解熱効果もあるそうです。
柿の豊富な栄養と強力な抗酸化作用は、体調管理だけでなく老化防止や美容にも効果を発揮! 夏に紫外線を浴びてダメージを受けたお肌の回復を早め、肌荒れやシミ・そばかす、シワやたるみまで予防してくれるのです。柿みたいにツヤツヤの美肌なら秋のおしゃれがいっそう楽しくなりそうですね。

元祖日本のドライフルーツ!
元祖日本のドライフルーツ!

行き倒れの人を救いながら全国に広まった?

奈良時代頃に中国から渋柿が伝わると、日本では宮中の儀式に用い、寺社などに植え、14世紀以降には甘柿がつくられるようになり、やがて柿は日本特有の「神の果実」として世界に知られる果物となりました。仏典にも登場し、昔の僧侶の住宅跡にも柿の木が。また、タイの大きな寺院には柿の木が植えられていて、高僧が亡くなるとこの木で棺桶をつくって祭ったとされています。仏教と柿は、強いつながりがあるようです。
生のままでは持ち運びに重くて、日持ちしない柿。そこで、干すことで甘さや栄養を濃縮させ、軽くて保存のきく携行食にしました。この「干し柿」を持って旅をした僧侶たちによって、柿は日本じゅうに広まったとも考えられています。
赴いた先々で、干し柿は病気やケガなどに苦しむ人々のお悩みを解決。行き倒れの人に食べさせればたちまち元気を回復し、下痢や便秘のお腹は調子を取り戻し・・・驚くほど効き目があるのに、口に甘くて美味しいなんて!人々にはまさに神様の良薬に見えたのではないでしょうか。
柿パワーを知った人々は、万能薬として種から育てはじめます。柿は、病害虫が少なくて日本の気候風土に合い、全国各地で育ちました。恩恵は食用だけではありません。未熟な実からとった柿渋には防水・防腐作用があり、ビニールなどなかった時代にコーティング剤としても大活躍。日本人にとって、もっとも身近でお役立ちの作物になったのですね。
一説によると、民話『さるかに合戦』のサルは、ちゃんと柿が熟すのを見極めて木に登り、甘みを増すためわざと地面に落とすなど、柿の知恵をさりげなく伝えているのだとか・・・。

サルのおしえ。柿は甘くしてから食べるべし
サルのおしえ。柿は甘くしてから食べるべし

「柿プリン」のつくりかた。なぜ固まらないの?!

<材料>
・熟しきった柿1〜2個(約200〜300g)
・牛乳(約100〜150g。柿の半量くらいをお好みで。多く加えるほどゆるくなります)
<つくりかた>
1. 柿は、皮をむいて種をとり、適当な大きさに切る。
2. すぐミキサーに入れ、牛乳も加えて、1分間ほど撹拌する。
3. 器に流し入れ、3時間ほど冷蔵庫で冷やし固めればできあがり♪
なんとゼラチンも卵も不要!? それがなぜ、固まるのでしょうか。
秘密は、熟した柿に含まれる水溶性の食物繊維《ペクチン》。それが牛乳の《カルシウム》と結びつくことによってゲル化し、フルフルに固まるのです(市販されている「牛乳と混ぜるだけ」でできるデザートは、この仕組みを利用したものだったのですね)。
逆に言えば、《ペクチンとカルシウム》が反応しないとプリンになりません。シンプルではありますが、熟しきった柿を・切ったらすぐ入れ・牛乳と混ぜる、全てがポイントのようです。冷やす時間を長くするほど固めになります。
基本の手順があまりに簡単すぎるためか、「あえて固い柿(←好み)を使った」「柿を前もって切っておいた」「ヘルシーにしたくて豆乳を使った」「植物性のアイスを入れてみた」・・・等々、つい(余計な)工夫をしてしまったために上手く固まらない例が多いのだそうです。あるテレビ番組では牛乳の一部をバニラアイスにして濃厚さを出していましたが、その場合は必ず「アイスクリーム」として分類されているものを使用してください。
甘みを加えたいときは、コンデンスミルクを。もちろんできあがったプリンになら何をかけてもOKです。無添加の柿プリンは離乳食や介護食にもぴったり。固形物を飲み込みにくい人も秋の味覚を楽しめます。

どこまでもやさしい味のとろけるプリン
どこまでもやさしい味のとろけるプリン

熟した柿はゼリーやシャーベットにもどうぞ♪

おもてなしには、柿の皮を器がわりに使うとおしゃれです。
◇柿ゼリー◇
熟した柿をミキサーでペースト状にしたものを火にかけ、沸騰したら火を止めて、ゼラチン大さじ1を1/2カップの水でふやかしたものを混ぜ、冷やし固めます。プレーンヨーグルトともよく合います。
◇柿シャーベット◇
熟した柿をつぶして白ワインなどを混ぜ、凍らせます。
もちろん、デザートにはちょっと固めの柿をカットしてそのままいただくのも美味!
口臭・虫歯を防ぐ効果もある柿。秋の恵みの食卓を柿パワーで締めて、風邪に負けない体づくりをしておきたいですね。
<参考>
『カキの絵本』松村博行(農文協)

自然界の甘みここに極まれリ
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