「食用菊」召し上がったこと、ありますか?

各地で菊の品評会や菊祭りがひらかれる季節です。
花そのものをお料理や飲み物でいただく「食用菊」もこの季節10月がもっとも流通量が多く旬のシーズンです。
彩りが豊かでサラダやフリッターなどででいただける花「エディブルフラワー」はフレンチやイタリアンで近年知られていますが「食用菊」は日本古来より長く楽しまれてきました。松尾芭蕉が滋賀県の堅田に招かれた際「蝶も来て酢を吸ふ菊の鱠哉」と詠んでいることから、当時(1690年頃)にはすでに食用菊の酢和えが食されていたことがうかがえます。
お料理の菊ときくと、刺身のつまとして知られている「小菊」を思い浮かべる方もいらっしゃるのでは?「食用菊」は小菊よりも少し大ぶりで、黄色やピンク色(紫色)の花びらが美しく、苦味も少なく、シャキシャキとした食感です。香りがよく、酢の物やお浸し、天ぷら、味噌汁などにしていただきます。
新暦換算すると重陽の節句(旧暦9月9日)も間近ですね。
本日はそんな「食用菊」の食べ方や、即席の菊花茶や菊花酒の作り方をご案内します。

無病息災を願う菊酒
無病息災を願う菊酒

疲労回復・食欲増進の他にこんなにある!食用菊の主な栄養素と働き

中国原産の菊ですが、菊にまつわる不思議な記述が『史記』に残っています。
「東方の三神山に長生不老(不老不死)の霊薬がある」と始皇帝の命を受け、3,000人の童男童女(若い男女)と百工(多くの技術者)を従え、五穀の種を持って、東方に船出したが、「平原広沢(広い平野と湿地)」を得て、王となり戻らなかった。
不老不死の霊薬は菊、東方とは日本だといわれています。
霊薬とされた菊の効能は下記のとおりです。
【解毒作用】体調不良・二日酔いに
菊には生体内の解毒物質「グルタチオン」の産生を高めることが発見されています。
【ビタミン類が豊富】老化予防・がん予防
食用菊には、全体的にビタミン類が多く含まれています。
特にビタミンEのαトコフェロールが多く含まれています。αトコフェロールは活性酸素を除去する抗酸化作用があるといわれ、がん予防や老化予防に効果が期待できるといわれています
日本大学薬学部・理学部 山形県衛生研究所から、食用菊に含まれているクロロゲン酸とイソクロロゲン酸には発ガン予防効果や悪玉コレステロールを押さえる効果があると発表されています。
【ミネラルが豊富】高血圧や目の疲れに
体内で作る事ができない亜鉛、鉄、銅などのミネラルが含まれていると同時に、アミノ酸も含まれています。
食用菊には血圧の上昇を抑える作用のあるカリウムや、造血をサポートする葉酸も比較的多く含まれています。
また香り成分はリラックス効果があるとされます。
アロマテラピーで知られるカモミールやイモテール(ヘリクサム)もキク科ですね。

食用菊の酢の物
食用菊の酢の物

どんな味?「もってのほか」「思いのほか」おもしろい食用菊の種類名

「食用菊」の主な産地は愛知県、山形県、新潟県、秋田県、沖縄県です。
県それぞれで名前がいろいろですね。
●阿房宮 (あぼうきゅう)
「阿房ぎく」ともいい、黄色い八重大輪の食用菊。ほんのりと甘味があり、香りがよくて苦味はほとんどありません。おもに青森県や岩手県などで栽培。青森県の特産「干し菊(菊のり)」はこの阿房宮の花びらを蒸して乾燥させたものです。また品種改良された「八戸菊」や「十五夜」などもあります。
阿房宮 は秦の始皇帝が工事させた大宮殿の名でおなじみですね。
●延命楽(もってのほか・かきのもと)
紫がかったピンク色をした八重の食用菊。地域によって名前が異なり、山形県では「もってのほか」や「もって菊」、新潟県では「思いのほか(おもいのほか)」や「かきのもと」と呼ばれています。
旬の時期は10月から11月頃。苦味はあまりなく、シャキシャキとした歯ごたえで風味のよい食用菊です。
香り高くきりっとひきしまった花姿からも、花言葉は「高貴」「高尚」「高潔」という花言葉がうまれました。
菊は、見た目の美しさ、そして様々な効能から高貴な方にきっと重宝がられたのでしょう。菊は皇室の御紋章ですね。

山形県「もってのほか」
山形県「もってのほか」

「食用菊」をたべてみよう!飲んでみよう!

店頭ではパックで売っています。
花なのでなるべく早く食べる方が香りや食感が美味しいです。
保存する場合は、新鮮なうちにゆでて冷凍します
●食用菊の保存方法
・生の場合は、乾燥しないように袋に入れて冷蔵する
使うまでは乾燥しないよう袋などに入れ、冷蔵庫に入れておきましょう。
・冷凍保存の方法
生のままでは冷凍できませんが、さっと茹でた物を冷凍しておくことは出来ます。茹でた後キッチンペーパーなので余分な水分を切ってからラップなどに小分けし広げて凍らせます。使うときは冷蔵庫で解凍し、和え物などに使います。
●湯通しの仕方
・ガクをとり、花びらの状態にする(花びらを食す場合、菊の形のままいただく場合はそのままで)
・熱湯にお酢を少したらしさっと茹でる。
・色止めのため冷水にとる
・ザルにあげキッチンペーパーで水分をぶきとる
●食用菊の食べ方と主な料理
茹でたものでおひたしや和え物に。例えば小松菜と焼きしめじに食用菊をいれてポン酢でいただくのはいかがですか?簡単で美味しいですね。いつものきゅうりの酢の物や白和えなどに少し加えるだけでぐっと彩りがアップし秋らしいメニューにランクアップです。また巻きずしにいれるとおもてなしのお寿司になりますね!
散らし寿司やおかゆ、お味噌汁に散らしたりもいいでしょう。生のまま花びらを彩りとしてサラダに加えるのもお勧めです。天ぷらの材料にも使われますね。
●重陽の節句に 簡単に菊花茶や菊花酒
旧暦9月9日は重陽の節句は別名「菊の節句」といわれ、菊酒や菊花茶が楽しまれる風習があります。
ガクを取らず、菊の花ごとゆでたものを緑茶や紅茶、ゆず茶、日本酒や焼酎などにうかべると、即席の菊花茶や菊花酒のできあがりです。お料理用に下準備したひらひらの花びらのものをうかべて飲んでいただくのもいいですね。
一般的には、菊花茶は天日干ししたもの、菊花酒は菊をお酒に1か月ほど漬け込んだものを頂きます。

せっかくなのでこの季節、見目麗しく食べて美味しい菊をもっと身近に感じとりいれて楽しみたいものです。
参考文献:野菜ナビ(WEB) /旬の食材百科(WEB) /花ことば小さな花に想いをたくして(書籍 池田書店)

菊花茶
菊花茶