木々の緑も落ち着いた葉色に変わりゆく秋を迎え、連休まっただ中の人も多いと思いますが、みなさんは「ヤマボウシ」という樹木をご存じですか?  「ヤマボウシ」は植樹本数が少なくても、豊かに生い茂る葉が庭を豊かに見せてくれることから、庭木としても人気が高く、公園や街路樹でもよく見かけます。
このヤマボウシ、9月に実をつけるのですが、やサル、鳥たちの好物であるこの実を、私たちはあまり食べません。スーパーには並ばない、知られざる秋のフルーツ「ヤマボウシ」。その味や食べ方をご紹介します!

秋の空に映える鮮やかな赤い「ヤマボウシ」の実
秋の空に映える鮮やかな赤い「ヤマボウシ」の実

「ヤマボウシ」ってどんな樹?

「ヤマボウシ」について、もう少し詳しくお伝えしましょう。
日本原産、ミズキ科ミズキ属の植物で、春~夏にかけてハナミズキのような手裏剣状の白い花を咲かせます。
花びらが頭巾(ずきん)を被った法師のようだということで「ヤマボウシ」という名がついたそうですが、正確にはこれは花びらではなく、総苞(そうほう)と呼ばれる部分。本当の花びらは中心にある緑色の部分なんです。

初夏に咲く、ハナミズキに似た白い花(総苞)
初夏に咲く、ハナミズキに似た白い花(総苞)

9月になると、その緑色の部分が黄味がかった赤色となり、3㎝程度まで膨らみます。外皮は硬く、特徴的なイボイボがついており、完熟すると地面に落下します。
糖度15を超えるものもあるヤマボウシの実は、甘いものに目がない熊の大好物。
今の時期、山中に落ちている熊の糞にヤマボウシの種が混じっていることも多いそうです。熊がいない街中では鳥たちが好んでついばんでいますが、私たちの身近にあるこの甘い実を放っておくのはもったいないですね!

気にしていると、意外と身近で見かけるはず!
気にしていると、意外と身近で見かけるはず!

「ヤマボウシ」の食べ方

完熟後に地面に落下した実は、その衝撃で外皮が剝(む)け、黄色いトロリとした可食部が出てしまうこともあります。落ちた実を拾う際は、外皮が剝けていないものを選びましょう。
ヤマボウシの実を生食する場合は、よく洗って外皮を剥き、やわらかい中身をスプーンですくって食べます。中には種が1~4個入っており、口に入れるとジャリジャリするので、種は食べないようにしましょう。また、洗った実を冷凍し、シャーベット状になった実を食べるのもおすすめです!
気になるお味は……ですが、マンゴーやバナナといった南国系フルーツに似た強い甘味があります。香りもよく酸味はあまりありませんので、小さいお子さんでも美味しく食べられます。

“ヤマボウシ拾い”は秋のレジャー
“ヤマボウシ拾い”は秋のレジャー

「ヤマボウシジャム」の作り方

乾燥させてドライフルーツする食べ方をはじめ、潰したものを炭酸水に入れて、少量のレモンを絞り入れる「ヤマボウシスカッシュ」といったアレンジ方法もありますが、いちばんのおススメは「ジャム」です。
ヤマボウシの難点である種をキレイに取り除けば、保存がきくうえ簡単に作れるので、気になる人はぜひトライしてみてください! 作りおきしておくと、パンにつけたり、ヨーグルトと混ぜたり、パンケーキのトッピングにしたり……と、さまさざまな用途を楽しめますよ。
では早速、「ヤマボウシジャム」の作り方をご紹介しましょう。
【用意するもの】
●ヤマボウシの実……600g  ●グラニュー糖……200g  ●レモン汁……大さじ1
①ヤマボウシの実を水で丁寧に洗いながら、皮のイボイボの部分を取り除く
②鍋に洗ったヤマボウシの実と砂糖を入れ、混ぜながら軽く実を潰したら、熱する前にそのまま1時間ほど置く
③鍋を弱~中火にかけ、木ベラで実を潰しながらゆっくりかき混ぜる
④沸騰後2~3分したら火を止めて、ザルでこす
⑤皮と種を取り除いた状態のものを再び鍋に移し、中火にかけ、焦げつかないよう木ベラでゆっくりかき混ぜる
⑥とろみがついたらレモン汁を加え、ひと煮立ちさせたら火から下ろす
⑦あらかじめ煮沸消毒し、乾かしておいた瓶に⑥を注ぎ、蓋をして冷蔵庫へ
はいこれで完成です!

簡単にできる、手づくり「ヤマボウシジャム」
簡単にできる、手づくり「ヤマボウシジャム」