霊魂が下界をさまよう「鬼月」、中国のお盆「中元節」の深い意味を探る

2016/08/16 16:30

夏の甲子園2016も今日から3回戦に突入し、連日、白熱した試合が続いていますが、気がつけば8月も半ば……。 今年もお盆の時期を迎えました。お盆休み中に、帰省先でお墓参りに行かれた方も多いことでしょう。 同じく中国でも、明日8月17日は日本のお盆あたる「中元節(ちゅうげんせつ)」を迎え、霊魂を供養する祭事があちこちで行われます。 お盆の時期にちなんで、中国の夏の伝統行事・中元節についてご紹介しましょう。

台湾の中元節を彩る幻想的な提灯
台湾の中元節を彩る幻想的な提灯
死者の魂を送り迎えする「道教」の年中行事 旧暦7月15日(2016年は8月17日)の「中元節」は、旧暦1月15日の「上元節」、旧暦10月15日の「下元節」と並ぶ道教の年中行事「三元」のひとつで、とくに道教の信仰が厚い台湾の人々の間で深く浸透しています。 上元節では「天官大帝」、中元節では「地官大帝」、下元節では「水官大帝」と、それぞれの神様の生誕を祝います。なかでも、中元節で祀られる地官大帝は「冥界の帝」であることから、死者の魂を送り迎えする重要な祭事として盛大に執り行われます。 これに合わせてデパートやスーパーなどでは、お供え物の食品・酒類などを扱う中元節セールが大々的に催され、街中は多くの買い物客で賑わうそうです。 旧暦7月は霊魂が下界をさまよう「鬼月」 「鬼月」と呼ばれる旧暦の7月は、霊界の門が開いて霊魂が下界をさまよう月。その1ヵ月のちょうど中間にあたる中元節には、霊魂が最も多くさまようとされ、一般家庭や会社、店舗などの軒先にお供えをして霊魂を慰める習慣があります。 お供え物や提灯とともに線香も焚かれますが、これは霊が迷わないための道しるべだそう。線香を焚いた後には、故人があちらの世界でお金に困らないように、金紙(きんし)と呼ばれる紙のお金を燃やします。 こうして下界の人々は霊を迎え、心を尽くしてもてなし、そして見送るのです。 また、鬼月の期間は霊がさまよっているため、タブーとされる行為(やってはいけないこと)がいくつかあります。 たとえば、結婚式・引っ越し・旅行はNG。その他、夜に洗濯物を干さない、玄関に靴を出したままにしない、お供え物を盗み食いしない、落ちているお金を拾わない(着服しない)など、日常生活の中にもさまざまなタブーがあるとか。 地域によってタブーは少しずつ違うそうですが、日常の振る舞いについては普段から心がけたいところですね。
故人への財物として焚き上げられる金紙
故人への財物として焚き上げられる金紙
日本のお盆行事やお中元の由来にも 古来中国では、中元節と同じ日(旧暦7月15日)に、「盂蘭盆会(うらぼんえ)」という先祖供養の仏教行事も行われてきました。 この道教・仏教の二つの行事が習合して日本に伝わり、親戚が集まって祖先の霊を供養するお盆行事として定着。さらに江戸時代以降、お盆の時期に恩人へ贈り物をする風習が広まり、現在の「お中元」に発展していったといわれています。 ちなみに、中元節の主祭神「地官大帝」は、別名「赦罪大帝」ともいうそうです。 つまり、中元節の行事・タブーや、贈り物をするお中元の習慣は、贖罪・懺悔の意味も含んでいるんですね。 その本来の意味を考えると、なんとも面白いと思いませんか? 昔から伝わる風習はよくできたもので、実に奥が深いと感服してしまうばかりです。

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