8月10日は「やきとりの日」! 定番メニューに秘められた波乱の歴史とは?

2016/08/10 16:30

今日8月10日は、8と10にかけて「やきとりの日」です! ビールのつまみに、おうちの食卓に、居酒屋メニューに……と、おなじみの「やきとり」ですが、実はニワトリの肉を使った「焼き鳥」が、一般に普及したのは1960年代以降と意外と最近のこと。 そして全国的に見れば、鶏以外の肉や臓物を使ったもの、味噌だれ、串にささず鉄板で焼く、など多種多様な「やきとり」が存在しています。 そこで今回は、やきとりにまつわる物語をご紹介します!

ハツ、皮、レバー……いろいろな部位が楽しめるのもやきとりの魅力
ハツ、皮、レバー……いろいろな部位が楽しめるのもやきとりの魅力
昔の日本では、ジビエ(野鳥食)がポピュラーだった! 人類がニワトリを家畜化したのは、約6000年前だそう。 中国ではおよそ3000年前から養鶏がはじまり、やがて日本にも伝わりました。 書物によれば、平安時代には養鶏が行われていたのだとか。 ニワトリは「時を告げる」ことから神さまの使いとされ、またタマゴを生むことからも大切にされました。 かなり早い時期から、タマゴを生まなくなったニワトリ(廃鶏)を食べることは行われていたようです。 やがて7世紀の「肉食禁止令」によって、表向き肉を食べることは禁忌に。 とはいえ、上記のようなかたちでニワトリを食べることは続いていたとみられます。 歴史的に見れば、日本でニワトリよりもよく食べられてきたのは「野鳥」です。 江戸時代の書物「料理物語」には、ハクチョウやカモ、キジ、サギ、ウズラなどの「串やき」に関する記述が。 ちなみにこの書物には「やきとり」の記載もありますが、これは単に「焼いたとり」だった可能性が高いようです。 江戸時代の後期には、気軽なスナック(?)として「ゆでタマゴ」が人気に。 その廃鶏を使った「とり鍋」が登場するなど、ニワトリを食べる習慣が少しずつ広まっていきました。 明治・大正・昭和……激動の時代とともに進化した「やきとり」 明治時代の「やきとり」は、もっぱら屋台で食べるもの。 鶏の臓物をかば焼きにしたもので、お金のない人が口にする食べ物という位置づけだったようです。 長く肉食が禁じられていた日本で、肉食の普及に一役買った(?)のが、1912(大正元)年のコレラの流行。 生ものを食べるのが政府によって禁じられ、刺身などの代わりに肉類を購入する家庭が増えたのだそうです。 1923(大正12)年の関東大震災も、東京周辺のやきとり事情に大きな影響を与えました。 すべてを失った人びとが、生活のために「すぐに商売ができるものを」と注目したのが、格安で仕入れられる牛や豚の臓物。 これらを串にさした「やきとり」店や「煮込み」店が数多く誕生しました。 1945(昭和20)年のいわゆる「戦後」にも、類似した事態が起こりました。 戦争の混乱で、配給や流通のシステムが崩壊。非公式なルートで仕入れた物資を商う「ヤミ市」が各地に生まれます。 やがて政府の規制が復活するも、牛や豚の臓物は対象外に。これらを使った飲食店が繁盛したのです。 各地の「ご当地やきとり」にも、「戦争を背景に、養鶏や養豚が奨励された」 「炭鉱や工場で働く人びとが、安くて栄養のある食事を求めた」 など、それぞれのストーリーがあります。興味がある方は、ぜひ調べてみてくださいね。
震災、戦争……焼け野原から多くの「やきとり」店が生まれた
震災、戦争……焼け野原から多くの「やきとり」店が生まれた
ブロイラーの登場がなければ、「やきとり」の普及はなかった? 「やきとり」にとって大きな転機となったのが、1960年代のブロイラー(肉用鶏)の登場。 それまでの「タマゴを生まなくなった鶏を食べる」という概念が覆されました。 ブロイラーの登場のおかげで、高価だった鶏肉が安く仕入れられるように。 大衆的なやきとり店が、「鶏肉を使った」やきとりを出せるようになりました。 また、タマゴを生ませずに若い段階で出荷するブロイラーは、肉がやわらかくすぐに焼き上がるため 「高温で、短時間で焼く」やきとりに適していたのです。 その後、1980年代になると「地鶏」や「銘柄鶏」が登場。 放し飼いなど、昔ながらの方法で育てられた鶏などに、人びとの関心が集まるようになりました。 とはいえ、遠隔地からフレッシュなまま鶏肉を運べるようになったのは、道路網の整備や、保冷車などの発達のおかげ。 「昔ながらの」ものを楽しむために、実はテクノロジーを大いに利用しているというわけですね。 「ねぎま」は、玉ネギ?長ネギ?問題 本州の多くの地域では、やきとりの「ねぎま」といえば、もちろん長ネギ。 しかし、北海道や青森では、玉ネギを使ったねぎまが主流です。 さらに細かく見ていくと、「北海道でも函館は長ネギが多い」「岡山や山口の一部は玉ネギ」など、地域によってこだわりがあるのだそう。 旅行や出張の際に、やきとりの食べ比べをしてみるのも楽しそうです。 ごく身近な食べ物でありながら、実は奥が深いやきとりの世界。 「なぜ串にさすようになった?」など、興味は尽きません。そのお話は、また日を改めてご紹介したいと思います! 参考:土田美登世「やきとりと日本人 屋台から星付きまで」(光文社新書) はんつ遠藤「全国ご当地やきとり紀行」(幹書房)
豚肉と玉ネギの「ねぎま」だって「やきとり」なんです
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