バジルの旬は、日本では7~8月。まさにこれからが収穫期です。
「ベランダガーデンでバジルを育てている」という方にとっては、楽しみな季節の到来ですね。
バジルにはカルシウムやカリウムが豊富に含まれており、美味しくて体にもいいハーブとして世界じゅうで愛されています。
日本には、江戸時代に伝わったバジル。和名は「メボウキ」というのですが、いったいどんな由来があるのでしょう?
バジルにまつわる、様々なお話をご紹介します。

旬のバジルを、パスタに添えて……この時期ならではの楽しみ
旬のバジルを、パスタに添えて……この時期ならではの楽しみ

古代の人びとにとっては、厄除け、毒除けの薬草だった

原産地のインドでは、「バジルには空気を清浄にする」「邪悪なものから身を守る」力があると考えられていたバジル。
ヒンドゥーの神さまに捧げる植物としても珍重されていました。
ヨーロッパへは、アラビアを経由して伝わったバジル。
一説には、アレキサンダー大王がヨーロッパに持ち帰ったとも言われているとか。
インドとは違って、かなり冷涼な気候のヨーロッパ。
バジルの栽培には向かないはずなのに、それでもバジルが愛好されたのは、その美味しさ、香りのよさ故でしょうか。
古代ギリシャでは、バジルは「高貴な草」を意味する「バジリコン」と呼ばれ、これが「バジル」の語源となりました。
香水の原料に使われたほか、名前が伝説上の怪物バジリスクに似ていることから、毒除けの霊草としても扱われたと言われています。

咳どめ、痛みどめ? はたまた、愛のキューピッド?

強い殺菌作用を持ち、食用としての他に、「咳どめ」「痛みどめ」「嗅ぎ薬」などとして利用された歴史も持つバジル。
世界じゅうに、バジルを煎じて飲む習慣や、虫よけとしてバジルの鉢植えを窓辺に置く習慣などが残っています。
イタリアでは、バジルは「求婚のシンボル」とされ、昔はバジルの葉を髪に挿してプロポーズしたのだとか。
一方、ルーマニアには「バジルを手渡す女性は、受け取った男性から愛される」という伝承があるそう。
多少ニュアンスの違いはあるものの、バジルに愛の橋渡しをする力がある(?)のは確かなようですね。

バジルには食用だけでなく、虫よけなどの利用価値も
バジルには食用だけでなく、虫よけなどの利用価値も

江戸時代の日本、バジルシードの意外な使い道

バジルが日本に伝わったのは意外と古く、江戸時代のこと。
漢方薬として中国から伝わったという記録が残っています。
ところで、バジルの種子(バジルシード)が、水にひたしておくと吸水してゼリー状になるのをご存じですか?
台湾やタイでは、デザートの材料に使われていますよね。
近年は、「少量で満腹感を得られる」と、ダイエット食品としても注目を集めています。
なんと江戸時代には、このゼリー状になったバジルの種子を使って、目に入ったごみを取り除いたらしいのです。
いったいどんな治療だったのか、知りたいような、知りたくないような?
とにかく、このことから、日本ではバジルを「目を掃除する」=「メボウキ」と呼ぶようになりました。
バジルのお話、いかがでしたか?
乾燥バジルや、バジルペーストも美味しいですが、せっかく夏が旬のバジル。
新鮮なバジルを、食卓に取り入れていきたいですね!
参考:金城盛紀「読むハーブは美味しい」
農山漁村文化協会編「地域食材大百科」

バジルの種は、水でふやかすとゼリー状に。ダイエットに使われることも
バジルの種は、水でふやかすとゼリー状に。ダイエットに使われることも