〈『この味がいいね』と君が言ったから七月六日はサラダ記念日〉 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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〈『この味がいいね』と君が言ったから七月六日はサラダ記念日〉

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明日、7月6日は「サラダ記念日」です

明日、7月6日は「サラダ記念日」です

〈ハンバーガーショップの席を立ち上がるように男を捨ててしまおう〉

〈ハンバーガーショップの席を立ち上がるように男を捨ててしまおう〉

〈のぼり坂のペダルを踏みつつ子は叫ぶ「まっすぐ?」、そうだ、どんどんのぼれ〉

〈のぼり坂のペダルを踏みつつ子は叫ぶ「まっすぐ?」、そうだ、どんどんのぼれ〉

実はサラダではなく、鶏の唐揚げだった!

実はサラダではなく、鶏の唐揚げだった!

本格的な夏の訪れを感じさせる今日このごろ。明日、7月6日は「サラダ記念日」です。
40代から上の年齢層ならご存じでしょうが、若い方にとって「サラダ記念日」は聞き慣れない言葉かもしれません。
『サラダ記念日』は俵万智さんの第1歌集。1987年に初版が発行されるやいなや、280万部のベストセラーとなった、現代短歌の先駆け的存在です。
今回は、「サラダ記念日」にちなみ、俵万智さんの歌を中心に「口語短歌」について紹介します。

時代の鏡・短歌

〈「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日〉
この歌をはじめとする歌集『サラダ記念日』が発売されたのは1987年。同年は電電公社が民営のNTTに再生され、朝シャンがブームになり、元祖“国民的美少女”と言われたゴクミ人気が大フィーバーした年。懐かしいですね。
当時、歌集としては異例の売れ行きで、1987 年の新語部門・表現賞にも選出。
約30年の長きにわたり、現在にいたるまで店頭に並べられ、版を重ねています。
〈「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ〉
この歌も有名ですね。恋愛の喜びや日常の細部を見つめた歌が中心の歌集をあらためて読んでみると、こんな歌もあります。
〈ハンバーガーショップの席を立ち上がるように男を捨ててしまおう〉
〈大きればいよいよ豊かなる気分東急ハンズの買物袋〉
〈ゆく河の流れを何にたとえてもたとえきれない水底(みなそこ)の石〉
今となってみれば、こうした歌は1980年代の雰囲気を濃密に写しているといえるでしょう。短歌も時代の鏡なのです。

「口語短歌」

俵万智さんはこの歌集で鮮烈なデビューを飾り、以後『かぜのてのひら』『チョコレート革命』などの歌集を出版しています。
最新歌集は『オレがマリオ』。
俵さんは早稲田大学在学中から短歌を始めていますが、その時の先生は歌人の佐佐木幸綱氏です。佐々木氏の歌は、
〈のぼり坂のペダルを踏みつつ子は叫ぶ「まっすぐ?」、そうだ、どんどんのぼれ〉
こうした歌を「口語短歌」と呼びます。
現代の短歌は、文語でも口語でも書かれます。佐々木氏は口語ばかりで書いているわけではありませんが、現代の語彙が自在に使われています。こんな歌もあります。
〈びしょ濡れのレインコートのままに佇(た)ちどの男どの男も一人〉
「口語」は話し言葉のことですが、話し言葉に基づいた書き言葉のことも含みます。
和歌・短歌は伝統的に「文語」(平安時代以降の古典語に基づいた書き言葉)で書かれてきましたが、明治時代になって、書き言葉と話し言葉は統一されるべきだ、という言文一致運動の流れの中で、口語短歌が提唱されるようになったのです。 『サラダ記念日』が刊行された年から約100年前の明治21(1888)年。
この年に発表された林甕臣の口語短歌(言文一致歌)に、次のものがあります。
〈ギラギラト。ヤブレ障子ニ。月サエテ。風ハヒウヒウ。狐キャンキヤン〉
現在の私たちにはあまりピンとこないかもしれませんが、当時はかなり前衛的な響きだったのではないでしょうか。
こののち石川啄木らによって口語短歌は洗練されていきます。
現在の口語短歌を3首挙げておきます。
〈海から風が吹いてこないかどこからかふいてこないかメールを待ってる〉加藤治郎
〈子を真似て私も本を噛んでみる確かに本の味がするなり〉俵万智
〈ぼくはただあなたになりたいだけなのにふたりならんで映画をみてる〉斉藤斎藤
── 冒頭にあげた〈「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日〉の一句。
実は、俵万智さんご本人が、のちにTwitterで、サラダではなく「鶏の唐揚げ」だったと裏話を公開。
いつもの鶏の唐揚げをカレー風味でアレンジしたら、当時つきあっていた彼が「おっ、この味いいね」と褒めてくれたそう。夏のきらめきのような、パッと華やぐ女性の笑顔が連想できるみずみずしい一句ですね。


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