コランダム(鋼玉)と呼ばれる鉱物が、クロムを含むことで赤色を帯びた「ルビー」。
ビルマやタイ、スリランカなどが、原産地として有名です。
その色から「出血をとめる力がある」とも「争いごとを鎮める力がある」ともいわれ、古くから護符やお守りとして用いられてきました。
燃えるように赤く輝くその姿に、人びとはどんな願いを託したのでしょうか。
7月の誕生石・ルビーにまつわる、さまざまな言い伝えをご紹介します。

古来、炎にたとえられたルビーの輝き
古来、炎にたとえられたルビーの輝き

不思議な力を秘めた、燃えるような輝きを放つ石

ラテン語で「赤」を意味する「rubeus」がルビーの語源。
古代インドでは「宝石の王」と称され、「石の中で炎が燃えている」「布に包んでもその輝きは隠せない」と称えられました。
かつてビルマでは、ルビーには「身に着ける人を不死身にする」(!)力があると考えられていたそう。
装身具としてだけでなく、身体に埋め込むことも行われたのだか。
ルビーには「若々しさを保つ力がある」と考えていたのは、セイロン(スリランカ)の人びと。
セイロンの王さまは、巨大なルビーを顔に当て、みずみずしい若さを保とうとしていたのだそうです。

ルビーの原石。鉱物としては「コランダム」に分類される
ルビーの原石。鉱物としては「コランダム」に分類される

古代の「ルビー」は、実はルビーではない可能性も?

神の偉大さが、宝石に託して表現されている「聖書」の世界。
旧約聖書では「出エジプト記」「ヨブ記」など、新約聖書でも「ヨハネの黙示録」にルビーに関する記載が出てきます。
ただし、現代的な鉱物の知識がまだなかった時代には、色々な赤い石をまとめて「ルビー」と呼んでいた可能性があるのだとか。
コランダムはダイヤモンドに次ぐ硬さを持つため、加工する技術が確立したのは中世以降だという説もあるようです。

お守りとして、薬(?)として……ルビーはまさに万能の宝石

中世ヨーロッパの人びとは、ルビーを所有すれば「誰とでも仲良くすることができる」「危険から身を守れる」と信じていました。
また、その赤い色からの連想で、「出血をとめる」「炎症を鎮める」力があるとも考えられていたようです。
なんとルビーをすり潰して、薔薇水などと混ぜて飲むことも行われていたのだとか。
ちなみに、治療目的でルビーを身に着ける場合には「人差し指につける」のが良いとも、「身体の左側につけるのが良い」とも言われるそうですよ。
もちろん科学的な根拠はありませんが、ちょっと実践してみたくなる言い伝えですよね。
最後にご紹介するのは、漢字の横につけられた、小さなフリガナ(ルビ)のお話。
その由来がルビーであることを、ご存じの方も多いと思います。
かつてイギリスでは、活版印刷で使われる活字を、大きさに応じて「ダイヤモンド活字」「エメラルド活字」「ルビー活字」などと名づけていました。
それが明治時代の日本に導入され、フリガナに使う大きさの活字(ルビー活字)が、次第に「ルビ」と呼ばれるようになっていったというのです。
何かと話題豊富で、魅力あふれる宝石「ルビー」。
7月生まれならずとも、身近に置けば何かいいことがあるかもしれません!
参考:ジョージ・フレデリック・クンツ(鏡リュウジ監訳)「図説 宝石と鉱物の文化誌 伝説・迷信・象徴」(原書房)
塚田眞弘(松原聰監修)「天然石と宝石の図鑑」(日本実業出版社)
L.クリス=レッテンベック、L.ハンスマン(津山拓也訳)「図説 西洋護符大全」(八坂書房)

さまざまな民族が、ルビーを護符やお守りに用いた
さまざまな民族が、ルビーを護符やお守りに用いた