蒸し暑い日が増えてきましたね。こう暑い日が続くと体調も気持ちも保つのが大変です。そんなときに「百合(ゆり)」が味方になってくれるかもしれません。
洋花のイメージが強いですが、山百合をはじめとして日本特有の品種が今も各地で自生しています。古くは鑑賞用としてより薬用としての効果に注目されていました。今では品種改良が進み、世界で百数十種類の百合が観賞用として親しまれています。
雨あがりにすっくと立つ姿はまるで貴婦人…そんな百合の見ごろはこれから…今年は観賞用として、さらに古来にならって薬用としても百合に改めて注目してみませんか。

華麗に咲く満開の山百合
華麗に咲く満開の山百合

薬用としての百合は、花も根もまるごと女性に優しい

百合は古来から、食用・薬用として親しまれていました。眺める花ではなく、役立つ花だったようですね。漢方としての百合は「びゃくごう」と読みます。その効能は花と根により違います。根は医学が発展する以前に、結核の治療薬としても用いられていました。百合の根には多くの「塩基(えんき)」が含まれているため、免疫力を調整する働きがあるため効果を発揮したと見られています。現代でも、漢方薬として気管支炎などに処方されているのですが、更年期障害など女性に優しい効能もあり、うれしいかぎりです。女性に優しい効果は花にもあり、肌を潤す美肌効果。心をやすらかにするリラックス効果が期待できます。薬膳として食すほかに、入浴剤として、またはお茶に煎じて飲むなどバリエーションも豊富です。これらは主に中国の宮廷で行われていたのですが、西洋においても、百合は薬用として利用され、現代にそのレシピが伝わっています。

現存する世界最古の薬局…Santa maria noverra(サンタマリアノベッラ)

中世のイタリア・フィレンツェでは、ドミニコ会の修道僧が薬草を栽培し、調合してハーブを作っていました。そののち、薬局として認可されたのがSanta maria noverra(サンタマリアノベッラ)です。そのレシピは門外不出のまま現代へと受け継がれています。
ここでエピソードを一つ。当時のトスカーナ大公であるメディチ家から、フランスのアンリ2世へ嫁いだカテリーナのために、Santa maria noverra(サンタマリアノベッラ)が「王妃の水」を作りました。これがオーデコロンの起源とも言われています。フィレンツェからフランスに嫁いだカテリーナがSanta maria noverraをヨーロッパへ広め、ヨーロッパ諸侯の評判もめでたく、Santa maria noverraはメディチ家から王家御用達の称号を受けました。フランスにフィレンツェから嫁いだカテリーナがいたからこそ、ですね。当時のフランス王家の紋章は百合(フルール・ド・リス)、今では国の花となっています。

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