「漂泊の詩人」とも称され、、圧倒的人気を誇る山頭火の魅力

2016/06/22 16:30

今週は週明けから梅雨前線が活発化し、九州で記録的な大雨となりましたが、本格的な梅雨を経て、これから青葉が眩しい初夏がやってきます。 そうした目にも美しい季節に思い出される句があります。 〈分け入っても分け入っても青い山〉 これは、種田山頭火(たねだ・さんとうか 1882~1940)の俳句ですが、都会に住んでいる者にも、ふるさとの美しい風景や、日本そのものの季節美が感じられます。 今回は、「漂泊の詩人」として今でも多くの人に愛される山頭火の世界を紹介します。

「漂泊の詩人」山頭火像
「漂泊の詩人」山頭火像
漂泊の詩人 日本人は「漂泊の詩人」というイメージを好みます。 西行、良寛、山頭火……。その中でも山頭火は、特に人気があるようです。 〈へうへうとして水を味ふ〉 〈うしろすがたのしぐれてゆくか〉 〈ころり寝ころべば青空〉 それにしても、これは俳句なのでしょうか。 五七五の音律の約束もないし、季語さえありません。 これは「自由律俳句」と呼ばれる詩形で、型にはまることをきらい、技巧を廃して眼前にある風景や感慨をそのまま詠おうとするものです。 大正時代には尾崎放哉、河東碧梧桐など、有名な俳人も出ています。 山頭火自身は「ぐつと掴んではつと投げる」と、自分の俳句について書いています。 托鉢と旅と俳句と酒 山頭火は山口県佐波村の生まれ。 早稲田大学まで進みますが、中退して故郷の酒造業に従事します。 大正2(1913)年、萩原井泉水に師事して俳句をつくるようになります。 しかし事業の経営に失敗してしまい、熊本や東京などに住みますが、結婚生活もうまくいかずその後出家、大正14(25)年にはあてのない放浪の旅に出ます。 その後は九州、四国、中国地方などを放浪しながら俳句を作りつづけます。 孤独を求めて旅に出たのに、孤独を耐えられず、もらった金で酒を呑む毎日です。 〈ふるさとの水だ腹いつぱい〉 〈もりもり盛りあがる雲へあゆむ〉 〈どうすることもできない矛盾を風が吹く〉 〈つきあたつて大きな樹〉 〈草の中に寝てゐたのか波の音〉 ある時期までは疲れるともとの妻のところに転がり込むこともありましたが、昭和7(1932)年には山口県小郡町に草庵を結び6年間を過ごします。 最後の地は愛媛県松山で、脳溢血で亡くなります。享年59。 社会も家族も捨てた、その人生は傍目には勝手気ままにも見えますが、彼にとっては作句と旅とは一種の修行であったようです。 自由な放浪へのあこがれ、自然の中での暮らし、そして独白のようなつぶやき──山頭火はなぜ日本人の心をとらえるのでしょうか。
山口県小郡町の其中庵跡
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