二十四節気で「夏至(げし)」となりました。北半球において一年で最も昼が長くなる日として、「夏至」は現代も耳にすることが多い節気だと思います。沖縄では梅雨が明けましたが、まだまだ本州ではあいにくの梅雨空が広がるころですが、太陽の高さが頂点を迎える夏至は世界各地でお祭りが開かれ、眩い光の恩恵に身も心も躍動する時節。さらに夜には、昨日ストロベリームーンと呼ばれる満月を迎えたばかりの月が、ほんのり赤みを帯びた姿で幻想的に浮かびます。

最も昼間が長い日「夏至」。最も短い「冬至」より5時間ほども明るい昼間が長いのです

沖縄はすでに梅雨明けを迎えましたが、本州はまだまだむしむしと湿度が高い梅雨のまっただなか。本日6月21日は二十四節気の第10節気「夏至(げし)」です。
ご存じのように「夏至」は、一年で最も昼間の時間が長い日。天文学的には太陽黄経が90度の点を通過するときを「夏至」といいます。太陽は赤道から最も北に離れ、北半球では正午の太陽の高度が最も高くなるのです。
ちなみに夏至と冬至。両方の日の出の時刻と日の入り時刻とを比較してみると、5時間ほど夏至の昼の時間は長いよう。
その分、夜は短く、秋の「夜長」に比べ、夏は「短夜」と呼ばれています。涼しく過ごしやすい夜がたちまち明けてしまうのを惜しむかのように、かの清少納言も枕草子の冒頭に「夏は夜」と綴ったのでしょうか。

英国ではストーンヘンジで。白夜の北欧ではロマンチックなお祭りが

日本では梅雨の時期であまり実感できない「夏至」の昼の長さですが、ヨーロッパ各地では眩い陽光のもと、様々なお祭りが行われます。
なかでも有名なのが、英国の古代遺跡ストーンヘンジで行われる夏至の祭典。紀元前2500年ごろに神殿として建てられた可能性があると考えられているこの世界遺産では、夏至の日、中心の祭壇石とその他の主な石の直線上に太陽が昇ります。どこか神秘的な日の出を見に大勢の人々が集い、失われた古代へと時を超え思いをはせるのです。
また夏至の日は、北緯66.6度以北の北極圏全域で白夜となり、南緯66.6度以南の南極圏全域では逆にまったく夜が明けない極夜となります。真夜中でも明るい白夜を迎える北欧では、暖かい夏が始まる日を祝って各国で夏至祭が行われます。フィンランドでは、コッコと呼ばれる篝火を焚いて豊作を願い、夜中過ぎまでパーティを楽しむとか。
また、スウェーデンの夏至祭も実にロマンチック。野の花を摘んでつくった花冠を頭にかぶり、蔦と花で作られたミッドサマーポール(トーテムポールのようなもの)の周りを、大人も子供も輪になって踊ります。この日の食卓を飾るのは、ミッドサマーの定番“いちごのショートケーキ”。北欧の夏で旬を迎える「いちご」たっぷりのケーキを囲むフィーカ(スウェーデンのティータイム)はとびきり心弾むひとときに違いありません。
ロマンチックな白夜の夏至祭には結婚式も多く、この夜赤ちゃんを身ごもる人も多いというのは、スウェーデンの友人に聞いた話です。北欧の人々にとってミッドサマーは、夏の訪れを祝うとともに、幸せや恋愛成就を願うお祭りでもあるのでしょう。

伊勢の二見興玉神社では、海から昇る神々しい日の出に冨士の姿が重なります

さて、所変わって日本へでは、伊勢の二見興玉神社で夏至の日の早朝、「夏至祭」が行われています。そもそも夫婦岩付近一帯は、古くより清渚と呼ばれ、伊勢参宮を前に人々が汐を浴び、心身を清めた禊(みぞぎ)浜として尊ばれてきました。朝日が最も北寄りに現れる夏至の日。大しめなわが掛かる男岩と女岩の夫婦岩の間から神々しい朝日が昇り、日の出の太陽に富士山のシルエットが重なります。美しいご来光を拝み、夫婦岩の前の海で禊を行う「夏至祭」は、年々参加者が増えているそうです。

一方夏至のころの夜には、各地でキャンドルナイトの催しも多く開催され、すっかりこの時節の風物詩となりました。
今宵はぜひご自宅でキャンドルを灯し、柔らかな明かりに包まれて、一年で最も短い夜を惜しむように、心静かに自然の気配を感じながら過ごしてみませんか。
さらに夏至の夜の月は、新月の場合は最も高くなり、満月は最も低くなるとか。昨晩の満月は、ストロベリームーンと呼ばれる、夏至のころ特有の赤みを帯びた月だったようですが、今宵もまた夕日のようにほんのり赤い月を天空に探してみるのも一興。恋をかなえてくれる月とも呼ばれているようですので、大好きな人と見上げてみるのもいいですね。
湿り気を帯びた風にのって、季節は次第に盛夏へ。梅雨明けが待たれる「夏至」の日です。