ドレスコードは真珠~メディチ家の至宝展~ジュエリーに宿るもの

2016/06/17 11:00

梅雨の晴れ間、真昼の月が白く空に輝くのを見かけます。ぼんやりとした縁取りの丸さは、6月の誕生石・真珠の柔らかな白さを想像させますね。 ルネサンス発祥の地、フィレンツェでその名をとどろかせた一族・メディチ家…6月の誕生石・真珠をふんだんに使ったジュエリーや、それを身に付けた一族の肖像画などから、その栄華を垣間見ることができます。 日伊国交樹立150周年の今年、日本初公開を含む数々の作品が、イタリアから東京・白金台の「東京都庭園美術館」に渡ってきています。 ドレスコードは真珠…お気に入りの真珠を身に着けて、ルネサンスの美術に浸ってみませんか? ブロンズィーノ 《マリア・ディ・コジモ1世・デ・メディチの肖像》 1551年 油彩/板 フィレンツェ ウフィツィ美術館(彫刻絵画美術館)蔵 ⓒA. Quattrone

月のしずくの異名を持つ「真珠」 東京都庭園美術館は、本館・旧朝香宮邸(重要文化財)の居室と、新館のギャラリーに展示をしている美術館です。 正門からのアプローチは、緑と季節の花に彩られ、都会の喧騒を忘れます。 本館の玄関を入ると、大広間から各居室へと、フィレンツェからやってきたジュエリーと肖像画が展示されています。 その中でも今回の展覧会で見逃せないのが、冒頭でご紹介した写真…日本初公開となる、マリア・ディ・コジモ1世・デ・メディチ[1540-1557]の肖像画です。 この肖像画はマリアが10歳の時にブロンズィーノによって描かれました。髪飾り、首飾り、イヤリング、ドレスの装飾に、真珠があしらわれています。それらを身に付けたその気品のある表情に、まだ10歳の少女?…と驚きをもってしまうほどです。 それもそのはず…この当時の肖像画はステイタスであると同時に、女性の場合は将来の結婚相手へのアピールという意味合いもありました。実際、この時マリアには婚約者がいたのですが、残念ながら花嫁衣裳をまとうことなく、マリアは17歳でこの世を去りました。父・コジモ1世も美しい娘の死をことのほか悲しんだと言われています。 その後、マリアの婚約者のブラッチャーノ公パオロ・ジョルダーノ1世へは、妹のイザベッラが嫁ぎました。 しかし、その結婚生活はあまり幸せな時間ではなかったようです。イザベッラの不貞により、夫の手で殺害されたと言われています。 セイレーンのペンダント…ルビーの太陽・七宝の三日月 セイレーンは、いわゆる人魚として知られています。古代ギリシャ神話では半人半鳥の怪物で、美しい歌声で海を渡る者を惑わせ、海に沈めてしまう…と伝えられています。 メディチ家のペンダントのセイレーンは、バロック真珠の上半身に七宝とルビー、ダイアモンドで彩られています。 その右手には放射状に輝く杖を持ち、表には太陽(ルビー)が、裏には月が七宝で描かれており、太陽と月=陽と陰を手中にするようです。 反対側の左手には、砂時計を抱えていて2つ重なる真珠が砂時計の見立てになっています。 公を意味する右手に太陽と月を、プライベートを意味する左手に時を象徴する砂時計を抱えるセイレーンは、メディチ家の栄枯盛衰を予言するようでもあります。 フランドルの金工家 《セイレーンがついたペンダント》 1570-1580年頃 金 多色七宝 26個のルビー 7個の真珠 5個のダイヤモンド フィレンツェ ウフィツィ美術館(銀器博物館)蔵 ⓒFirenze, Gallerie degli Uffizi-Museo degli Argenti
終焉…一族最後のアンナの子宝祈願のゆりかごと真珠 メディチ家最後の直系、アンナ・マリア・ルイーザ・デ・メディチ[1667-1743]は、一族の財宝をフィレンツェから持ち出さないこと、という条件の家族協約に署名し、メディチ家のコレクションを守るという大役を果たしました。 そのおかげで今日、私たちは遥か昔に作られた貴重な美術品の数々を目にすることが出来るのです。 そんな彼女にまつわるジュエリーは、真珠のゆりかごです。 子宝祈願として夫から贈られた、見事な金細工とバロック真珠のコンビネーションの煌きは、見ていて飽きない美しさですが、残念ながらアンナは子宝には恵まれずメディチ家直系最後の人となりました。 メディチ家一族の栄枯盛衰はもちろんのこと、ジュエリーに宿る何者かが、その時々の女性の人生に影響していたことに思いをはせる時間を過ごすことができる展覧会です。 梅雨の晴れ間、または梅雨雲の下…往時の煌きの奥に宿る「何か」を探してみてはいかがでしょうか。 オランダ(アムステルダム)の金工家 《赤ん坊を入れたゆりかご》 1695年頃 金 七宝 2個のバロック真珠 28個のダイヤモンド 20の真珠 真珠を縫いとめた青い絹 銘(裏面、2つの脚の間に)「AVGROR EVENIET」 フィレンツェ ウフィツィ美術館(銀器博物館)蔵 ⓒ Firenze, Gallerie degli Uffizi-Museo degli Argenti
美術鑑賞後の楽しみ リニューアル後に登場した新館のカフェでは、展覧会ごとにデザートや飲み物のメニューを考案しています。 今回の展覧会メニューとしては、「大人っぽいイタリアを楽しもう」というコンセプトのもと、レモンチェッロ&グリーンアップルソーダ (リキュール入りカクテル)と、ブラッドオレンジ&ベリーのジュース、展覧会限定スィーツのバルサミコアイス、更に展覧会期間限定オリジナルケーキ、ピスタチオ&ジャンドゥーヤが用意されています。 その他、こだわりのコーヒー・紅茶やサンドイッチなど、鑑賞の余韻に包まれながらのカフェタイムを楽しみたいものです。 また、ミュージアムショップでお気に入りの作品のポストカードなど、記念にするのもおススメです。 会期 ~7月5日まで(期間中の休館日は6月22日のみ) 時間 10時~18時(入館は17時半まで)※カフェの営業も美術館に準じます 料金 一般 :1,400円 大学生(専修・専門学校含む):1,120円 中・高校生:700円 65歳以上:700円 ・ドレスコード割引:真珠を身に着けて来館の場合、100円割引 ※他の割引との併用は不可

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