七十二候「紅花栄(べにばな さかう)」。黄からくれなゐへ紅花の色が染まります

2016/05/26 11:00

早くも全国各地で真夏日を記録し、すっかり真夏の気配となった感のこのごろ。暦では、七十二候の第二十三候「紅花栄(べにばなさかう)」となりました。紅花の産地・山形での紅花の開花時期はもう少し先のようですが、アザミに似た可憐な花々が、黄色から次第に赤みを帯びていきます。

シルクロードを渡り5世紀ごろ日本へ渡来。染料や化粧品として古より人の暮らしを彩ってきた「紅花」 キク科ベニバナ属、草丈は50cmから100cmの「紅花」は、6月~7月に咲く初夏の花です。 原産地はエチオピアからエジプト周辺とされ、4000年もの昔から薬用や染料として栽培されていました。やがてシルクロードを経て東へ伝わり、紀元前2、300年頃には北方の遊牧民族・匈奴の地にもたらされたとか。その領地に攻め入り、紅花の産地を奪い取ったとのが、前漢の武帝。紅花は染料のほか、高貴な女性たちの化粧品に用いられていたため、匈奴の王は、「我が婦女をして顔色無からしむ」と嘆いたといいます。 そんな紅花が日本へ渡来したのは5世紀ごろで、栽培法と染色法と共に伝わったそう。 輝くように鮮烈で麗しい紅色となる「紅花染」は、「藍」とともに最も親しまれる日本の色の代表選手、いにしえより歌に詠まれ、艶やかな衣を染め上げてきたのです。
「紅」「艶紅」「深紅」「韓紅」「今様色」「桜色」…紅花の花びらから生まれる色たち 黄色と赤が入り交じった「紅花」の花は、見かけどおり黄と赤の色素を含みます。葉の刺が鋭いため、紅花染の材料となる花の採取は早朝。露を含んで葉がまだ柔らかなうちに、花びらだけを摘み取っていくのです。その花びらを乾燥→水に溶けやすい黄色の色素を洗い流す→藁灰汁を加えて赤色色素を抽出→酸性の液で中和するといった、非常に複雑な手間を染色に要するため、濃い紅染は高貴な人にしか着用が許されない「禁色(きんじき)」となりました。 紅花の花から染め上げられる「紅(くれない、べに)」のバリエーションも実にさまざまです。 たとえば「艶紅(つやべに)」は、紅花の色素を沈殿させた泥状のもので、黒味があるように見えるほど濃い赤色。白磁の皿などに塗ると、光線の具合で金色に輝きます。江戸時代以前には、この艶紅を口紅やほお紅として使用しています。 「深紅(ふかきくれない)」は、8日間ほどかけ染め上げた濃い紅色。唐の影響が強くなっていった奈良時代に、濃い紅花の赤をこう呼ぶようになった「韓紅、唐紅(からくれない)」。光源氏が最愛の紫の上に贈った可憐な衣の色「今様色(いまよういろ)」。ごく淡く薄く染めた「桜色(さくらいろ)」… はんなりしたピンクから金色を秘めた紅色まで、一輪一輪摘んだ花びらだけで染め上がる紅花染。手間の数ほどに深く濃く発色していき、匂い立つようなグラデーションを描く色それぞれに、日本人が寄せてきた色への思い、繊細な色彩感覚を感じます。 生薬名は「紅花(こうか)」、英名は「サフラワー」。紅花は女性に優しいハーブ 紅花は漢方では「紅花(こうか)」、英名では「サフラワー」。ハーブや生薬としても古くから親しまれてきました。血液の循環をうながすことから高血圧をはじめ、女性特有の不調緩和にも用いられてきたのです。これは、紅花に含まれるポリフェノールの一種「リグナン」に、ホルモンバランスの調整作用があるからだそう。血行不良・冷えの改善と相まって、バランスを崩しやすい月のリズムを正常化すると考えられているのです。また、紅花で染めた布を身につけると体が温まると言われ、肌に近い腹巻や腰布にも用いられていたとも聞きます。湿度があがり、暑い中でも案外冷えるこの時期も、紅花をお茶として飲めばプチ不調を改善できるかもしれませんね。 古くは女性のほほやくちびるを染め、王朝時代の衣を染め、そして冷えた体を暖めてくれる植物・紅花の花が、色鮮やかに赤く染まる「紅花栄」の時節がやってきました。
※参考・出典 日本の色事典(吉岡幸雄著)

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