蛾界のスーパーアイドルグループ・SMGこと『スズメガ』はタレント揃い!

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まるで芸術作品。迷彩柄が美しいウンモンスズメ (18:30)tenki.jp

まるで芸術作品。迷彩柄が美しいウンモンスズメ (18:30)tenki.jp
世の中には故もなく誤解され忌み嫌われる生き物も多いもの。たとえば蝶と蛾は生物的には同じ種ですが、蝶=きれい・かわいい、蛾=汚い・気持ち悪い、とイメージ先行しがち。でも実際には蝶以上に美しい蛾もたくさんいて、シンジュサンやオオミズアオなどヤママユガの仲間はきれいな蛾として特に有名ですよね。そしてそれに負けず劣らずきれい・かわいい揃いのグループといえばスズメガです。熱狂的ファンも多数。初夏から秋まで、全国で見られるようになります。 鳥にも負けない飛翔力・君たちは本当に蛾なのか 以前、筆者は知人から「庭にハチドリが来てたんだけど見間違いかな? 日本にハチドリなんていないよね? しかも触角みたいなのが生えてたし何だったんだろう」と興奮気味に訊ねられました。すぐに「ははぁ、多分オオスカシバかホシホウジャクを見たんだな」とわかりました。オオスカシバもホシホウジャクも、スズメガの仲間。蜂のようにすばやく羽をはばたかせ、空中でホバリングして口吻を伸ばして蜜を吸う姿は、たしかにハチドリのよう。自国にハチドリの多い南米の人も、日本に来るとこれらをハチドリと思っている人がいるらしい、とか。 蛾の仲間は、フワフワフラフラと頼りなげに飛ぶ種類が多いのですが、スズメガの仲間は胴体が太く強力な飛翔筋を持ち、風切羽の役を担う前翅(頭に近い側についた翅)は先端がとがり高速飛行に特化した独特の三角形。昆虫の中でも飛翔能力はトップクラスでトンボと同等の時速50kmで飛行するほか、蜜を吸うためのホバリング機能も備えたハイスペック。その姿がスズメのフォルムにも似るので「スズメ」蛾、と名がつきました。実際飛ぶ能力だけ見れば、並みの虫を超えて、鳥と言っても過言ではないかもしれません。 天然キャラにボーカリスト…SMG(スズメガ)の個性派メンバーをご紹介! スズメガの仲間はどれも人目をひき、アイドル性抜群。そんな中でも特にスター性の高い個性的メンバーをいくつかご紹介しましょう。 《ベニスズメ》 鮮やかなピンクが全身にあしらわれたカワイイ系の代表選手。個体数も多く、夜、食草(ホウセンカ、オオマツヨイグサ、カラスウリ、スイカズラなど)の近くに行ってみれば見つけられることも多いと思います。スズメガに魅せられる人は、ベニスズメを見てという場合が多いよう。 《キイロスズメ》 「スズメ」という名がもっともふさわしい色と形をした種。しゃきんと伸びた刃物のような前翅はメタリックにも見える横紋が入り、カッコカワイイ系といえるかも。ジェット機のようにも見えて飛行機マニアの推しも強いようです。 《ウンモンスズメ》 こちらは鮮やかな緑とうねるようなタビー(雲紋)が美しく、実際に見ると息を呑むほど。ベニスズメと並ぶアイドル選手。 《エゾスズメ》 「エゾ」とついていますが北海道だけに住むわけではなく、個体数は比較的少ないものの全国で見られます。大きくウエイブした後翅が、すそがひらひらしたドレスのようで、スズメガの中でももっとも美麗だといわれます。 《エビガラスズメ》 胴体の模様はまるで車えびのようで、「エビガラ」と名前がつきました。特徴は、とてつもなく長い口吻。世界最長の口吻を持つ(長さ35cm)キサントパンスズメガには及びませんが、それに近いほど長い個体もあるとか。この口吻を伸ばして、蜜の位置が深いユウガオなどの花の蜜を吸います。エビガラスズメの蛹は、この長い口吻のかたちをすでにそなえていて、クルンとした「アホ毛」のような特徴的な突起がファンたちを萌え狂わせているとか。 《オオシモフリスズメ》 長野県を北限として繁殖する、日本のスズメガの中でもっとも大きな種です。開張は15cm以上に。王者の風格をしめすように、銀ぎつねかクロテンの毛皮をまとったような豪奢な模様をしています。しかし何と言ってもこの子の特徴は、虫でありながら「鳴き声を出す」ということ。ネズミのようなチューチュー、またはジュージューというような声を出す、蝶の仲間では珍しいボーカリスト。幼虫も声を出します。パシッ、ピシッというようなクラック音をだして捕食者を驚かせて撃退します。 《クロメンガタスズメ》 関東以西で見られます。メンガタ(面形)スズメの仲間は、背面上部に人の顔、もしくは「ドクロ」に見える模様が浮かび上がる妖しい美しさの蛾で、世界中に熱狂的な愛好家がいます。複雑な暗色の色模様で彩られた真ん中にぽっかりと浮かび上がる仮面のような顔はとても印象的。 ドクロ蛾、骸骨蛾、などの名もあり、映画史上に輝くサイコホラー『羊たちの沈黙』の、あの印象的なポスターで主演女優の口元にあしらわれた蛾が、この種の仲間のヨーロッパメンガタスズメ。本編の中でもこのサナギが登場し、雰囲気を盛り上げていました。ちなみにこのメンガタスズメの仲間も声を出します。姿とあいまって、人によっては怖いと感じる人もいるようで、上級者向けのアイドルかもしれませんね。 《オオスカシバ》 漢字で書くと大透翅。名の通り、翅に燐粉がなく、透明な羽をもっています。このオオスカシバは天然キャラ。実は羽化してすぐのときには、オオスカシバの翅には燐粉がついています。この燐粉を、みずからふるい落としてしまうのです。なぜそうするかというと、蜂、特に危険なスズメバチに擬態しているからといわれています。でもこれが全然似てない。まず色からしてオレンジと黒の縞模様のスズメバチとは、背面が鮮やかな緑がかった黄色、おなか側が白いオオスカシバではまったく違う。申し訳のように腰の部分に黒と赤の帯状のポーターラインがありますが、これでスズメバチに擬態してるとしたらあまりに無理があり物まねとして完成度が低い。本人がそのつもりなのだとしたら、天然そのものでそこがまたかわいいやつだと思いませんか。 《ホシヒメホウジャク》 ミニサイズのホウジャクです。くしゃっと縮んだような褐色の翅は、枯葉の擬態。活発なタイプが多いホウジャク類の中で、ひっそりとおとなしげな生態が、名前とともになんともかわいらしく感じさせる種です。 まずはスズメガを探してみよう さて、こんな個性派揃いのスズメガたち。見てみたくはありませんか? オオシモフリスズメは、3月から5月の一時期にしか現れませんが、多くのスズメガは春から秋、中には通年見られるものもあります。 特に多く見かけられるのは梅雨から夏の終わりごろまで。多くは夜行性なので夜探すのが最適ですが、昼間でもよくよく見ると樹木や植え込みの葉などにとまって休んでいます。 スズメガは長い口吻を持ち、また運動量が多いためよく蜜を吸い、植物にとって良客。スズメガにあわせて進化した花もあり、これをスズメガ媒花といいます。梅雨から真夏にかけての夜に咲く花には、何らかのスズメガがやってくるスポットです。テッポウユリ、スイカズラ、カラスウリ、オオマツヨイグサ、サギソウなどのラン、ヨルガオ、オシロイバナ、ジャスミンなどの花の近くに行ってみましょう。夜間に強く芳香を放つ白や黄色の目立つ花はねらい目です。昼間は、よく公園の植栽にされるアベリアに、ヒメホウジャク、オオスカシバ、ホシホウジャクなどのホウジャク類が多くやってきます。ところでイモムシというと、毛のない蝶の幼虫全般を言うように誤解されがちですが、本当はこのスズメガの幼虫をさす言葉です。初夏から夏にかけて栄養を補給したスズメガの成虫は、やがてえんどう豆のような卵を産み落とし、秋にはこれが幼虫となります。そして好むのが、収穫期前に生育したサトイモやサツマイモ、ヤマイモの葉。イモの葉によくついているので「イモムシ」といわれるようになったというわけです。 胴体が太く運動能力が高いスズメガは栄養価が高く、近年では昆虫食としての利用価値に着目されているとか。人間には敵いませんね。スズメガたち、逃げてー!

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