梅を漬けるのに、よく使われる「赤じそ」。


青じそより香りは弱めですが、鮮やかな赤い色が魅力です。
塩漬けにした梅を太陽の光に当てると、梅の実に含まれる色素が化学反応を起こし、黄色から淡いピンク色に変わります。さらに数年置いておくことで、次第に紅色になっていきます。
「もっと早く、赤い色にしたい」江戸時代にそう考える人が現れたのが、赤じそを使って漬けるようになった理由だそう。昔の人は、意外とせっかちだったのかもしれませんね。
食欲がない時に、ぴったりの一品
食欲がない時に、ぴったりの一品

薬用に、そして食用に……戦国武将たちの思惑

6世紀に成立した中国の書物「斉民要術」には、「白梅(干した梅)」「烏梅(燻製)」「青梅(蜜漬け)などの加工法が出てきます。
とくに、梅の実を真っ黒に燻した「烏梅」は、薬用として珍重されました。
この烏梅を日本に持ち帰ったのが、遣隋使、遣唐使の人びと。解熱剤や咳止めとして使われたようです。
「うめぼし」の名前が最初に文献に現れるのは、室町時代。武家の食卓に「ムメほし」が並んだとの記録があります。
同じ頃、全国にウメの木の栽培が広まり、「梅酢」が重要な調味料になっていきました。
醤油が普及する以前、「日本食」の味わいは現在とはだいぶ違うものだったようですね。
戦国時代には、傷の消毒や気付け薬、病気予防などに梅の実が有効であるとの理由で、ウメの植樹が奨励されました。音頭をとったのは、各地の武将たち。
小田原や水戸、紀州田辺などの城下町に梅林が残っているのは、こんな理由があったようです。
── まもなく、青果店やスーパーの店頭に青い梅の実が並ぶ季節。
梅酒や和菓子など、梅干し以外の加工法については、また次回にお届けします。
参考:農山漁村文化協会編「地域食材大百科」
小清水正美編「梅干しの絵本」(社団法人農山漁村文化協会)