稲の若苗が伸び、田植えの準備が始まるころ。七十二候 「霜止出苗 (しもやみて なえいずる)」。 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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稲の若苗が伸び、田植えの準備が始まるころ。七十二候 「霜止出苗 (しもやみて なえいずる)」。

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田の神様(たのかんさあ)

田の神様(たのかんさあ)

空ろな木だから「ウツギ」。

空ろな木だから「ウツギ」。

満開のころの「発知の苗代桜」。

満開のころの「発知の苗代桜」。

4月も下旬になり、桜前線は最終地点の北海道に上陸しました。道南ではようやく桜が咲き、北海道では遅い春を迎えようとしています。4月25日からは七十二候の「霜止出苗(しも やみて なえ いずる)」。霜が降りなくなり、若緑色の稲の苗がぐんぐん成長する時期です。農家は活気にあふれ、今年も米づくりが始まりました。

水口(みなくち)に花や焼き米を供える。稲の豊作を願って、苗代に種をまく日に。

最近では田植え機が普及して、苗代(なわしろ)で稲の苗を育てる農家はめっきり少なくなりましたが、かつては苗代に種もみを植え、水をはって苗を育てました。芽が出て苗が20cmほどになると、抜き取り、田んぼに植えかえます。人の手による田植えは、親類やご近所、総出で行われていました。
春になると、山の神が里へ降りてきて田の神となり、農民の田んぼの作業を見守り、稲が順調に育つのを助けるといわれています。秋になって収穫が終わると田の神は山に帰り、再び山の神となります。
苗代に種もみをまく日、農民は苗代の水口(みなくち)に、焼き米や御幣、松の苗や木の小枝、ワラの束など、そして、依代(よりしろ)となる季節の花を供え、いい苗が育つようにと田の神に祈ります。供えるものは地方によってさまざまです。農家ごとにひっそりと行われますが、豊作を願う心はみな同じです。苗の出来によってその年の米づくりが左右されるので、苗代での苗づくりは、とても気を遣う作業でした。

苗代を作るころに咲く花々。ウツギの 「ウ」 は卯月の 「ウ」。

田植えの時期に咲く花を「苗代花(なわしろばな)」と呼びます。ウツギをはじめ、山吹、ツツジ、アヤメ、カキツバタなどなど。
日本の唱歌「夏は来ぬ」でも歌われているウツギは、茎や枝の芯が空洞なので、「空木(うつぎ)」と書きます。別名は「卯の花」。ウツギの「ウ」をとって「卯の花」と名づけられました。旧暦の4月が「卯月」と呼ばれるのは、卯の花が咲く時期だから。
豆腐の「おから」は「卯の花」と呼ばれます。「おから」をウツギの白い小さい花に見立てたためだといわれていますが、「おから」が「お空(から)」、つまり、空っぽを連想させるのはよくないということで、「卯の花」と呼ぶようになったともいわれています。また、ウツギの茎が空洞で空っぽなので、おからの「空(から)」に通じるから、という言葉遊びだとも考えられています。
ウツギの花言葉は「秘密」「古風」「秘めた恋」など。苗代を作るころに咲く花として古くから親しまれいて、苗代の水口に供えられることも多いようです。

桜が咲いたら田んぼの準備が始まる。苗代を作るころに咲く 「苗代桜」。

岐阜県下呂市の和佐地区。大和橋を渡った小さい丘に、2本が寄り添うように立っている吉野桜。樹齢はおよそ400年。昔は、この美しい桜の花が咲くのを待って、農家の人々が苗代の準備を始めたことから、「苗代桜(なわしろざくら)」の名前がつきました。別名は「暦桜(こよみざくら)」。桜の周りの田んぼに水がはられると、水面に満開の苗代桜が映しだされます。
群馬県沼田市の発知(ほっち)地区。あたりを見渡す高台に一本の大きな彼岸桜が咲いています。樹齢は300年以上。桜の周りは「発知田んぼ」と呼ばれ、田んぼが広がっています。高台に咲く一本桜なので、平地のどこから見ても、その堂々とした姿を目にすることができます。ちょうど苗代を作るころに花が咲くので、「発知の苗代桜」と呼ばれ、多くの人に親しまれています。
春になり高い山々の雪もとけて、残雪と岩肌がまだらになると、山肌の模様が何かの形に見えてきます。これは「雪形」とよばれ、この形を見て昔の人々は、土を耕したり、田植えを始めたり、豆を撒いたりしてきました。桜が咲いたら苗代を作る、残雪の形が馬になったら田植えを始める…。昔の里人は、季節の移ろいとともに米づくりを始めていました。
田植えの時期は地方によってさまざまですが、秋の豊作を祈りつつ、今年も各地で米づくりが始まりました。


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