桜が終わると同時に、花水木が咲き始めます。
数々の和食店の店名をはじめ、市区町村の花にも指定されている「花水木」ですが、カタカナな「ハナミズキ」は、シングルヒット曲のタイトルとしても有名ですね。
そもそもアメリカ産の樹木であり、バージニア州、ノースカロライナ州の州歌にも指定されている「花水木」。
通勤・通学路や、駅までの道の街路樹にも多く植えられている身近な樹木についてご紹介します。

北アメリカ原産

桜が終わる頃にその名残を惜しむように、咲き始めるのが花水木(実際の花は真ん中の緑の部分)です。
初夏に向けて、白くまたはピンク色の花をつけて街路樹などとして目を楽しませてくれます。
秋には赤い実を付け美しく紅葉します。
栽培も難しくなく、成長も早いので、広く庭木などにも植えられます。
ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉高木。
英語では dogwood。樹皮を煎じて犬のノミ退治に使ったことからついたということです。日本に自生する山法師に似ているところから、アメリカヤマボウシとも呼ばれます。アメリカ山法師とも呼ばれます。
もとは北アメリカ原産の樹木で、日本への移入は今から約100年前。
1912年当時の東京市長・尾崎行雄が、アメリカのワシントンへサクラ(ソメイヨシノ)を贈った際、3年後の15年に、その返礼として贈られたのが始まりされいます。
「ハナミズキ」の語呂の美しさからか、樹木としての佇まいの美しさからか、今日では飲食店や介護施設の名前になっていることも多いようです。

花水木の実
花水木の実

独特の明るさと憂い

街路樹に植わっている姿は、花が高い位置に咲くからか、つま先立ちをしているような表情があります。
その姿はなんとなく空に憧れて手を伸ばしているようにも見え、どことなく男性でもない女性でもない、中性的な少年の姿も連想させます。
花の色が若葉とのコントラストのせいか、すこし青ざめて見えて、それが独特の明るさと憂いを含んでいるような雰囲気につながっているのでしょう。

季語しての花水木

歳時記によっては、春の季語となったり夏の季語となっています。
近代になってから日本に定着した植物ですから、季語としてはまだ十分に定着したとはいえないようです。
実際に、こんな句があります。2句ご紹介しましょう。
〈はなみづき十(と)あまり咲けりけふもさく〉水原秋櫻子
〈一つづつ花の夜明けの花みづき〉加藤楸邨
── 明治末期の1912年、アメリカ合衆国と日本国の間の友好関係を育て強めようと、日本から桜、米国から花水木を寄贈しあったことは意外と知られていません。
いまや、ワシントンD.C.のポトマックで毎年行われる一大イベント「全米桜祭り」には、春の始まりを告げる桜を観賞するため70万人以上の人々が訪れるそう。
そんな歴史に思いをはせ、ツンと空を向いて咲いている花水木を眺めながら腕を振って歩いてみると、気分が変わるかもしれませんね。

ワシントンモニュメントと桜並木
ワシントンモニュメントと桜並木