1923(大正12)年4月17日は、アメリカの古生物学者ロイ・チャップマン・アンドリューズ(米)が、ゴビ砂漠へ向けて出発した日です。
この探検調査で、アンドリューズは世界で初めて恐竜の卵と巣の化石を発見。
以来、恐竜の生態に関する研究が本格的に始まりました。
現在のようなハイテク装備がない中、未開の砂漠の冒険を繰り返したアンドリューズは探検家としても広く知られ、映画『インディ・ジョーンズ』の主人公のモデルの一人になったとも。
「恐竜の日」の今日、その歴史について考えてみました。

最強の恐竜と言われる「ティラノサウルス」の骨格
最強の恐竜と言われる「ティラノサウルス」の骨格

「恐竜」として最初に発見された「イグアノドン」

遙か1億年以上前の大昔、恐竜が地球上に暮らしていた時代があった ──。
約1億6000万年ものあいだ繁栄し、今から約6550万年前に絶滅した恐竜。
いまや誰もが知ることですが、恐竜が世に認知されたのは1820年代。わずか、200年ほど前のことなのですね。
1820年代、恐竜の研究はイギリスが中心でした。
発端は1822年に、マンテル夫婦(英)が「イグアノドン」の歯を発見したことに始まります。
1824年にウィリアム・バックランド(英)が、著書で化石に「メガロサウルス」と命名したのが、恐竜に初めて付いた名前。
そして1841年にリチャード・オーエン(英)が、これまでイギリスで発見されていた「イグアノドン」「メガロサウルス」「ヒラエオサウルス」の3種を徹底的に研究し、まったく新しい爬虫類として「Dinosauria(ダイノサウリア)」という新グループ名を提唱しました。
こうして世に認知された恐竜は、20世紀初頭になると、ヨーロッパのみならず世界各地でその化石の発掘競争が盛んになっていきます。

「イグアノドン」の化石
「イグアノドン」の化石

未開のゴビ砂漠で、壮絶な冒険の末に見つけたモノは?

アメリカ人であるロイ・チャップマン・アンドリューズは、もともとクジラの研究を行っていた人物でした。1910年には訪日もしている、日本にゆかりのある人物なのです。
そんなアジア圏に精通したアンドリューズが中央アジアに興味を持ったのは、ここに人類の起源的な存在があったと仮説を立てたからです。
最古の人類の発掘調査のために、アメリカ自然史博物館の調査隊を率いて北京に入り、さらにゴビ砂漠へと向かいました。
当時、ゴビ砂漠は欧米人にとって未探査の地。砂嵐に盗賊、軍隊、疫病……壮絶を極める苦難の末、小型の獣脚類であるヴェロキラプトルの頭蓋骨を発見します。
この冒険物語は『ドラゴンハンター ロイ・チャップマン・アンドリューズの恐竜発掘記』チャールズ・ガレンカンプ著(技術評論社)という本になっているほど。

ゴビ砂漠の位置(Googleマップより)
ゴビ砂漠の位置(Googleマップより)

また、プロトケラトプス、ピナコサウルスなど、多くの恐竜化石を次々に発見するだけでなく、世界初となる卵の化石を発見し、恐竜の生育環境などが解明されていくことになるのです。
アンドリューズは最古の人類を見つけることはかないませんでしたが、大偉業を達成したのですね。
また、知られざる地であったゴビ砂漠は、状態のよい恐竜の骨格が多く見つかる場所として、多くの調査隊が訪れるようになっていきます。
── これまで発見された恐竜の骨格は数百種。その骨格から、1億年前の地球の姿を想像する。
アンドリューズが切り開いた恐竜発掘から今に至るまで、大いなるロマンが恐竜の研究にはあるのですね。
明日は、恐竜の生態に迫ります。