日本に帰ってくるツバメと交替するように、花曇りの空を旅立つ鳥たちがいます。4月10日〜14日頃は『鴻雁北(こうがんかえる)』。雁(ガン、かり)が北の国へ帰っていく時季です。現在ほとんど宮城県の一部にしか渡ってこないといわれる雁ですが、人間の目には昔から思慮深く情の深い鳥と映ってきたようです。「あはれな」雁にまつわる70年代のテレビコマーシャルをご記憶の方も、いらっしゃるかもしれません。

宮城県上空をV字飛行中。先頭入れ替わります!
宮城県上空をV字飛行中。先頭入れ替わります!

なぜわざわざ北へ? 日本にいればいいのに・・・

ツバメのように、春に日本に帰ってきて子育てし、秋になると南へ旅立つ「夏鳥」。雁やオオハクチョウのように、寒さが厳しくなる頃日本にやってきて冬を越し、春には子育てのためまた北の国に戻る「冬鳥」。そしてシギやチドリの仲間のように、日本より北の地域で子育てし、日本より南の地域で冬を越す(渡りの途中で日本に立ち寄って休む)「旅鳥」。渡り鳥は、こんなふうに3種類に分けられます。
なにかと謎の多い渡り鳥も、渡る主目的はやっぱり子育て! 食べ物が入手しやすくヒナを育てやすい場所へと、体内時計を駆使して太陽や星座をたよりにそれぞれ決まったコースで移動します。旅鳥には、行きと帰りで違うコースをとるために日本で見られる数が秋と春で大きく違う種類もあるそうです。
『鴻雁来(こうがんきたる) 』の秋に日本に来る雁は、カモより大きくハクチョウより小さい水鳥です。これからいよいよシベリア方面へ向けて出発します!
ふだんの食事は米・草の葉や茎・地下茎・種子・果実・・・とベジタリアン系ですが、多くの鳥と同様に、ヒナは昆虫で育てます。それなら危険を冒してわざわざ北に行かなくても、そのまま日本にいれば夏の虫も捕れるでしょうに?と思いますが、冬鳥たちはきっと日本より涼しい環境が好みなのですね。それに寒い地域では夏の短期間で一斉に虫が発生するので、効率よく食べ物をゲットできるという魅力もあるようですよ。

「落ち穂拾い」するオオハクチョウ
「落ち穂拾い」するオオハクチョウ

CMでも話題になった『雁風呂』伝説とは?

羽を休める沼と、落ち穂や雑草が食べられる田んぼ。
その両方がある場所は、いまの日本にはもうあまり残っていません。日本に来る雁の仲間は6種類くらいで、その中で最も多いマガン約7〜9万羽のほとんどすべてが、伊豆沼や蕪栗沼など宮城県北部で冬を越すといいます(それで雁は宮城の県鳥になっています)。

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