雷様は稲の妻? 七十二候「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」 (1/2) 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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雷様は稲の妻? 七十二候「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」

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3月30日より、春分の末候「「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」。この時期より秋分にかけて、雷の発生が多くなるシーズンです。雷を発生させる寒冷前線や積乱雲は、雹や大雨を降らせたり、そして落雷では人身被害や火災、停電を起きたりと、何かと厄介ですが、古来より雷は稲作に恵みをもたらすとされ、篤く信仰されてきたのです。

春秋去来・山の神は春、里に下りてきて田の神となる

農事と歳時記は密接に関連しています。日本を含めアジアの農耕民族は、稲作とともに一年のサイクルを繰り返すと言っても過言ではありません。そんな稲作農耕民にとって春雷は、米作りの時期の開始を告げる音でもあるのです。雷と言う字は読んで字のごとく、「雨」が「田」の上をおおっているさま。稲の生育を見守る田の神は、冬の間山へと戻り、山の神となり、春の訪れを告げる春雷とともに再び里に下りてくる、という春秋去来の信仰があります。石川県の能登地方では山から下りてきた田の神を屋敷にお迎えし饗応する「アエノコト」と称する民俗行事が知られています。
雷の別名は稲妻。そのままの意味では、稲の妻(奥さん)ということになりますが、「つま」とは古語では配偶者双方を指したので、この場合は「つま」で「夫」の意味となり、つまり雷は「稲の夫」であり、雷は稲をはらませる(実らせる)、とされてきたのです。
決してこれは迷信ではなく、実際落雷が稲の豊作と関連しているのは科学的事実。稲作に限りませんが、農作物の生育に欠かせない栄養素の一つが窒素。窒素は多く空気中に含まれ浮遊していますが、マメ科の植物は多く窒素を吸収して固着するので、マメ科の蓮華を米に先立ち田んぼに植えて、土にすきこむ農法がかつてはよく行なわれました。
なんと、雷もまた、落雷によって空気中の窒素を土中に固着させる作用があるんだとか。つまり水田に落雷するほど、土中・水中に窒素が増えて、稲の実りがよくなる、というわけです。
雷の月別平均落雷件数を見ますと、冬の間は日本海側の豪雪地帯に局所的に発生していた落雷が、三月から四月にかけて全国的に発生し始め、五月、六月と夏に向けて急速に発生するのが見て取れます。そして、八月をピークにして秋の稲の刈り入れシーズンを迎えるとガクッと数が減ります。まさに、稲作は雷とともにはじまり、雷とともに終わるものだ、ということがわかりますし、農民たちも強く実感していたのでしょう。

聖域と生殖をあらわす雷の文様

私たちのごく身近にも、雷をかたどった意匠があります。神社の注連飾りや玉ぐし、お正月飾りの鏡餅などにたらされている段々に折られた紙を紙垂(しで)といいますが、これは一説では雷光、稲光をかたどったものといわれています。大相撲の横綱の土俵入りで紙垂がたらされますよね。相撲も本来、五穀豊穣を祈る神事。ちなみに宮沢賢治は教鞭をとった花巻農学校で「注連縄の本体は雲を、〆の子(細く垂れ下がっている藁)は雨を、紙垂は雷(稲妻)を表わしている」と教えたそうです。


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