ニセコは北海道の西側、積丹半島の南側に位置し、古くからスキーと温泉の街として親しまれてきました。そんなニセコは2000年以降、良質なパウダースノーを求めるオーストラリア人が頻ぱんに訪れるようになり、再開発が急速に進みました。今では豪州をはじめ欧米やアジアからもスキー客が訪れ、高級ホテルや別荘、コンドミニアムが建ち並んでいます。冬にニセコを訪れると、右を見ても左を見ても外国人。ショップの客も従業員も外国人。「ここはどこの国?」と思ってしまうような冬のニセコは、日本で最も外国人率が高い街です。

夕暮れ時。デッカイ羊蹄山を眺めながら滑る。
夕暮れ時。デッカイ羊蹄山を眺めながら滑る。

暖冬でヨーロッパの雪不足が深刻。良質の雪を求めて、豪州や欧米のスキー通がニセコに集まる。

ヨーロッパの雪不足は年々深刻さを増しています。ヨーロッパではこの冬、スノーリゾート地のゲレンデは岩肌がむき出し状態だったり、雪不足でスキーの大会が中止になったりしています。イタリア北部のスキー場では、リフト乗り場の気温が10℃。標高2000mを超えても自然の雪がなく、スキーをする環境にありません。
そんな折り、BBCが天気予報で各国のスキー場を紹介する際、「日本のニセコ、積雪は330cm、雪質はパウダー」と伝えたところ、お天気キャスターが思わず喜びの声をあげたそうです。
ヨーロッパでは、アルプスなどの雪質は固く締まっています。一方、北海道はサラサラのパウダースノーで、ターンをするごとに、雪が高く舞い上がります。世界一と評される軽い雪質。毎日雪が降るので、毎日が新雪。ヨーロッパのような人工雪は必要ありません。
ゲレンデは、アルプスに比べてニセコは標高がぐっと低く、宿泊先のホテルから手軽に行くことができます。ナイター施設や温泉があるのも魅力の一つです。
〈参考:北海道新聞2016年2月16日号6面「BBC “ニセコ、積雪330センチ”」〉

外国人が長期滞在する。
外国人が長期滞在する。

ニセコはリゾート部門で3年連続1位 !! 世界一に輝いたホテルも。

欧米などのスキーリゾートを対象とした「ワールド・スキー・アワード2015」で、地域全体を表彰するリゾート部門では、ニセコ地域が3年連続で1位に選ばれました。
また、50室未満のホテル部門では、ニセコの高級デザイナーズ・ホテル「ザ・ヴェール・ニセコ」が、世界一に輝きました。ザ・ヴェールが世界一に選ばれるのは昨年に続き、2年連続です。
さらに、50室以上のホテル部門では「ヒルトン ニセコ ビレッジ」が3年連続で、ロッジ部門では「セッカカン」が2年連続で選ばれています。

高級ホテルやリゾートマンションが建ち並ぶ。
高級ホテルやリゾートマンションが建ち並ぶ。

アジアからの観光客が倍増し、ますます国際化。「外国人ばかりでつまらない」という外国人の声も。

最初はオーストラリア人から人気の火がついたニセコは、その後、インターネットなどで良質の雪についての評判が広がり、イギリス、フランス、ドイツなど、ヨーロッパ各国からもスキーヤーが訪れるようになりました。
なかでも、フランスのスキー雑誌の編集者が、「パウダースノーの世界一は北海道」と絶賛すると、スウェーデンやフィンランドからも訪れ、ますます外国人が増加しました。
2014年度の12月~3月に北海道に訪れた外国人の数は、2011年度に比べて、2倍以上も増えていて、その大半がスキー客であると北海道観光振興機構は分析しています。
さらに昨年あたりからは、香港やシンガポール、台湾、フィリピン、ベトナムなど、雪が降らない国からのスキー客が2~3割増え、ニセコで日本人を探すのが困難になるほど、外国人でにぎわっています。
そんななか、以前から訪日していたオーストラリア人などは、「ニセコは外国人だらけで日本らしくない」と、旭川に近い富良野のスキー場に行ったり、ニセコに近い島牧村でのバックカントリースキーツアーに参加するなどして、ニセコの喧騒を逃れています。

外国人にとってナイター設備があるのも魅力的。
外国人にとってナイター設備があるのも魅力的。

バックカントリースキーが人気。3月下旬からのツアーも。

最近のスキーは、ゲレンデを滑るのではなく、コース外の新雪や、人の手が入っていない林の中を滑る「バックカントリースキー」が人気です。昔は「山スキー」と呼ばれていて、専用の道具や用具と、ある程度の技術が必要です。
ニセコには5つのスキー場がありますが、そのなかでも、ニセコアンヌプリはバックカントリースキーヤーに人気です。以前のニセコでは、バックカントリースキーでコース外に出て遭難したり、立ち木に衝突するなど、命の危険を伴う事故がありました。そこで2001年から、コースの外に出られるゲートを設け、なだれが起きそうなときは通行を禁止する「ニセコルール」を運用しています。最近のバックカントリー人気を受けて、このようなゲートとルールは、近隣のスキー場にも広がっています。
ニセコはゴールデンウィークまで滑ることができるので、3月下旬以降も、バックカントリースキーのツアーが企画されています。たとえば、ニセコアンヌプリから日本海まで、温泉で2泊しながら8つの山を滑るツーリングや、羊蹄山に登って滑り降りる2泊3日のツアーなど、まだまだスキーを楽しむことができます。
40年以上も前から毎年ニセコに滑りに行くシニア世代のご夫婦は、何年か前にニセコの別荘を300万円で買わないかと、地元の不動産屋にすすめられたそうです。しかし、冬にしか行かないので、維持費のことを考えたらちょっと…と思い、そのときは断りました。ところが、欧米以外に香港やマレーシアなどからの投資も進んでいるためか、今では300万円の別荘は3倍以上の値がついているそうです。
ショップやレストランでは、客も従業員も外国人。メニューや値札は英語。値がはる食事。地元の学校は外国人の子が多く、新たにインターナショナルスクールも作られました。
オーストラリア人が来る前は、昼食は食堂でカツ丼やカレーライスなどの定番メニューでしたが、今はおしゃれなカフェでナイフとフォークで食べるのが主流。北海道の山奥が、気づけば外国人の街となっています。「ここは日本?」と思いたくなるニセコですが、ゴールデンウィークまで、まだまだスキーを楽しむことができます。

ニセコ連峰・目国内岳(めくんないだけ)でのバックカントリースキー。
ニセコ連峰・目国内岳(めくんないだけ)でのバックカントリースキー。