のどけき春のサバイバル・七十二候・菜虫化蝶(なむしちょうとなる) (2/2) 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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のどけき春のサバイバル・七十二候・菜虫化蝶(なむしちょうとなる)

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モンシロチョウ

モンシロチョウ

スジクロシロチョウ

スジクロシロチョウ

シロチョウ戦国記

このように、モンシロチョウも今のようにずっと栄えていたわけではありませんでした。
むしろ日本在来のスジグロシロチョウのほうが人里近くに多く生息する時代が長かったと思われます。人間の栽培作物の変化に加えて、もともと日本のうっそうとした半日陰の環境を好むスジグロシロチョウと、ヨーロッパ育ちで明るい草原を好むモンシロチョウとでは、戦後の森林の伐採・市街化という環境の変化が大きく優劣を分けることとなり、モンシロチョウがスジグロシロチョウを「日陰者」に追い込みました。
モンシロチョウに駆逐されたスジグロシロチョウは、人里から離れた日陰の多い山林などに生活の場を移していました。ところが近年、ふたたびスジグロシロチョウが町や人里に勢力を伸ばし、モンシロチョウが減ってきている、という変化が見られるようなのです。
原因はどうやら、ビルの乱立による都会の日陰の増加では、といわれています。昭和30~40年代の日本の風景の映像を見ると、今と比べて大きな建造物が少なくスカスカして明るい印象です。そして郊外には今よりたくさんの畑や田んぼがありました。こうした環境がモンシロチョウには最適だったのでしょう。

では、これからはスジグロシロチョウがモンシロチョウに取って代わるのか。小原嘉明東京農工大名誉教授によると、モンシロチョウとスジグロシロチョウの交配種と思われる個体を見つけ、観察を続けたところ、モンシロチョウのオスがスジグロシロチョウのメスに交尾を仕掛けるシーンを目撃します。小原教授はこうした雄を「パイオニア雄」と名づけました。
そして、このような別種である二種が「パイオニア雄」の行動で交配交雑し新しい種が生まれる、というダイナミズムこそ生物の進化に欠かせない営みであり、それが生物のオスの存在理由なのではないか、との話。将来はオス(または男性)がいなくなるとか不要になる、なんていう学説もあったりしますが、それとはまったく逆の面白い説だと思いませんか?
また、北海道ではオオモンシロチョウという外来種が約20年ほど前から全域で繁殖しはじめ、モンシロチョウを駆逐する勢いでした。北海道在住の方に聞いたところ、それよりかなり以前からオオモンシロチョウの青虫を見かけることはあったのだそう。モンシロチョウのアオムシとちがい、非常に気味が悪いのでよく覚えているそうです。

オオモンシロチョウは勢いに乗って東北北部にも勢力を広げつつありました。ところが、ここ数年の間に、急にオオモンシロチョウが衰退し、個体数が減って見かけられなくなってきている状況だとか。蝶のウォッチャーたちは原因がわからず戸惑っているようです。
将来は、こうして栄枯盛衰を繰り広げるシロチョウ界隈の勢力図がどう変わるのか。見たことのないハイブリッド種が栄えていたりするかもしれませんね。

紋が黒いのにモンシロはおかしい? ホントの名前があるんだよという怪説

モンシロチョウ、江戸時代ごろには「粉蝶」「素蝶」などとと呼ばれていました。方言でもあまり数が多くなく、モンツキ、モンガレ、シロチョウチョなどという呼び名はあるようですが、総じてあまり多くはありません。やはり、江戸期にはモンシロチョウは影の薄い存在だったのですね。
明治時代を迎え、正式にこの蝶は「モンシロチョウ」と名前を付けられたのですが、ところでこの名前が変だ、と近年一部で話題になっていることはご存知ですか?
「モンシロチョウは紋(前翅にある黒い斑)が黒なのにどうしてモンクロじゃなくてモンシロなの?」ということのようです。するとそれに呼応するように、実はもともと学者は「モンクロシロチョウ」(紋が黒くて翅が白い蝶)と名前を付けたのだが、長すぎて呼びにくく、子どもたちに覚えられないということでモンシロチョウになったのだ、というトリビア風の薀蓄がまことしやかに流布するようになりました。

でも、この説を裏付ける資料や文献を探しても見つからないのです。第一、「モンクロシロチョウ」だとしても、昆虫の名前として決して長いものではありません。ウラギンスジヒョウモンとかスジグロチャバネセセリ、とか長い名前の蝶はたくさんあります。そもそも日本在来のシロチョウであるスジグロシロチョウという蝶もいます。モンクロシロチョウが覚えにくいとか言いにくいというんなら、こちらも縮められていないとおかしいですよね。長いから、もしくは覚えにくいから縮めた、というのはかなり妙な疑わしい話です。
そもそもモンシロチョウは、シロチョウ族という蝶の仲間。つまり、紋のような模様のあるシロチョウ、という意味で、紋が白い蝶という意味ではありません。近縁にモンキチョウという蝶もいますが、これも「紋のある黄色い蝶」で、「黄色い紋の蝶」という意味ではありません。「モンシロチョウという名前がおかしい」という人は、モンキチョウについては変だと思っていない(もっともモンキチョウには後翅に中心がレモン色の紋もありますから黄紋でもおかしくない、といえばそうもいえるのですが)ようです。

断言は出来ませんが「本来はモンクロシロチョウという名前だった」というのは、「昔の人がメジロをウグイスと見間違えた」という説と同じように、現代人が後付けで昔の人の考えを忖度した創り話である可能性が高いかと思われます。
モンシロチョウだけではなくこれからの季節はさまざまな蝶が飛び交う季節。ときには食害があって困りものでもありますが、やっぱり蝶や蜂が身近に舞う、のどかな春の景色であってほしいですよね。


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