桜前線よりひと足早めに、南の国から日本に帰ってくるツバメ! 去年の秋に残していったマイホームは無事でしょうか。そこで子育てするのは、去年と同じカップル? 若いツバメたちは、婚活して新居を構えることができるでしょうか。さらに、仲良し夫婦を不倫に走らせるという「○○○の長いオス」の魅力とは・・・?!

来年も君と住めるといいな♪
来年も君と住めるといいな♪

「愛のロマン巣」が君を待つ!!

ツバメは、 結婚した相手との相性がよければ、どちらか一方が死ぬまで「つがい」関係を維持するといいます。そして春がくるたびに、夫婦はそれぞれ長い旅をして日本で待ち合わせ、仲良く子育てするのです。
去年の秋に子供を育てあげてから南に渡ったオスは、奥さんや若者たちよりひと足先に帰国し、速攻でマイホームを目指します。というのも、ぐずぐずしていると家を乗っ取られる恐れがあるからです。
半年間ほったらかしの巣はたいていあちこち壊れているので、すぐ生活できるよう修繕しながら奥さんを待ちます(海外転勤のお父さんみたいですね)。なかには20年以上使用されている巣も。
もし去年の巣が使えない場合は、近所に残っている巣をさがして占領するか、もとの巣の近くでメスを待つのだそうです。
一方、若者など持ち家のない場合は 一から大工仕事をしなくてはなりません。泥やわら・枯れ草を唾液と一緒に固めて、10日間くらいかけて作ります。
ツバメはたいへん飛翔能力に優れていて翼が頑丈な反面、脚はとても華奢。「空中生活者」と呼ばれ、食事どころかお風呂さえ飛びながらすますほど、下に降りるのが苦手なのです。ところが、愛の巣作りだけは別!危険もかえりみず自ら地面を歩き、泥をくわえ、材料を集めます。婚活する男のロマン全開ですね。

本気見せたる〜
本気見せたる〜

よその夫が妻を誘惑(自分もだけど)!!

数日後、お待ちかねの奥さんがやって来ました。
夫は妻にあらためてプロポーズ! この鳴き声は「土食って、虫食って、渋〜い」と、聞きなしされます。人の耳に巣作りの苦労が伝わった結果でしょうか。
ところでもし、奥さんが来なかったら? 命がけの旅で夫婦どちらかが帰れなかったときは? 「ウマが合わない」ことがわかって離縁したなら?
去年と同じカップルは、全体の約半分なのだそうです。巣作りのタイムリミットが近づくと、ツバメは相手をなくした者どうし、または若い相手と再婚します。ときには、奥さんの到着が何日か遅れたために夫婦がすれ違ってしまうという悲劇もおこるようです。
巣作りの内装の工程は、奥さん担当。
夫は手伝うのではなく、じっと見守って(見張って)います。これは外敵というよりも、よそのオスが侵入してきて奥さんと不倫するのを阻止するため! とはいえ、じつは自分のほうも機会があればよその奥さんと懇ろになろうとねらっているわけで・・・みなさん自分のDNAを残すことで頭がいっぱいのようです。
守られている奥さんは、もちろん旦那さま一筋!!と思いきや、こちらもイケメンのオスを見ると、フラフラと引き寄せられてしまうのでした。ツバメにDNAの親子鑑定をしたところ 夫以外の子(ヒナ)が26.6%も含まれていた、という検査結果もあるのだとか。
夫を見限った妻は、見張りをかわしてどこかへ飛んで逃げようとします。仲良し夫婦の場合でも、自分の夫より魅力的なオスにせまられると、バレないように密かに不倫することがあるそうです。
そうまでして関係を持ちたいイケメンとは、どんなツバメなのでしょう?

電線で見つめ合うカップル☆
電線で見つめ合うカップル☆

モテ条件は、経験豊かな○○○

ツバメも多くの鳥類と同様、結婚相手を決めるのはメス!
相手に許す「待ち時間」からして、オスは先に着いたらしばらくメスを待っているというのに、メスは到着したときにオスがいなければすぐ別の相手を探しにいってしまいます。「メスを待たせるようなオスは即離婚」・・・容赦ない女王妻です。
モテモテなのは、「尾羽(おばね)が長い」オス!!
ツバメにとって尾羽が長いということは、成熟した大人であり、ダニの寄生がない証拠であり、遺伝的に優れていることを示します。
試しにモテているオスの長い尾羽を短く切ってみると、とたんにモテなくなるのだとか。逆に、それまで尾羽が短くてメスに軽んじられていたオスに尾羽を継ぎ足して長くしてやると、急にモテだすのだそうです(トリも見た目が9割、なのでしょうか)。また「つがい外子」を産むメスは、多くの場合夫の尾羽が短いという調査報告もあるそうです。
ツバメ社会では、独身の「若いつばめ」より経験豊富で実績のある既婚者のほうが人気なのですね。
そして夫の座はいつも安泰ではなく、結婚しても妻を他のオスに奪われないように絶えず目を光らせたり、奥さんに愛をアピールし続けたりする必要があるようです。

さあ、今年も子育てシーズン始動です!

去年の巣を活かすように、ツバメはこれまでの実績を翌年以降に活かしながら生きてきました。
人間の住環境が変化し、ツバメの数は年々減少しているともいわれます。これから夏の終わりまで、ツバメ家の子育てシーズン。今年もたくさんのカップルが仲良く子育てできるといいですね。
<参考>
『ツバメ 春にくる渡り鳥』亀田龍吉 (あかね書房)
『ツバメ観察事典』本若博次・小田英智(偕成社)
『ツバメのくらし百科』大田眞也(弦書房)
『ツバメの謎』北村亘(誠文堂新光社)

がんばる親ツバメ
がんばる親ツバメ