気温が上昇し、心も体も開放的な気分になる春は、どこか目的をもってお出かけしてみたくなるもの。
でも、混雑しているところに行くのは億劫……。
そんな方におすすめなのが、文豪ゆかりの地巡礼です。
見どころ豊富でありながら、どこもそんなに混雑せず、気軽に楽しめるのでおすすめですよ。
春の陽射しに満ちた天気のよい日に、ぜひお出かけしてみてはいかがでしょう!

数々の名作を生み出した、文豪への想いを馳せる……
数々の名作を生み出した、文豪への想いを馳せる……

文豪の街をゆく 千駄木編

都内で文豪の街といえば、やはり谷根千。なかでも千駄木が有名です。数多くの作家が住んでいただけでなく、さまざまな名作の舞台にもなっています。
■夏目漱石との家 (千駄木駅から徒歩約10分)
千駄木駅から徒歩10分ほどのところにある「猫の家」は、夏目漱石がイギリスから帰国したあと、3年間住んでいたといわれる旧居跡です。
この3年の間に、東京大学と第一高等学校の講師をするかたわら、処女作である『吾輩は猫である』を執筆しました。
そして、この旧居は作品の舞台となったのです。ちなみに『草枕』や『坊ちゃん』もここで発表されています。

言わずと知れた夏目漱石
言わずと知れた夏目漱石

■森鷗外と観潮楼 (千駄木駅から徒歩約5分)
千駄木駅から歩いて5分のところにある「観潮楼(かんちょうろう)」、今の「森鷗外記念館」は、鷗外が30歳から60歳で亡くなるまでずっと住んでいた家があった場所です。
観潮楼は、鷗外主催の、歌人が集まって歌を詠み、批評しあう会の会場として使われ、会には石川啄木や木下杢太郎、斎藤茂吉などが集まりました。観潮楼は文人たちのサロンでもあったのです。
■江戸川乱歩と団子坂(本郷と谷中をつなぎ、東西に伸びる道)
江戸川乱歩の出世作『D坂の殺人事件』の舞台となったのは、千駄木駅の西に位置する急な坂道「団子坂」。
乱歩は大正8年に三重県・鳥羽から上京し、弟らといっしょに団子坂の上で古書店「三人書房」を開業。
大正9年の「三人書房」閉店まで、団子坂付近で過ごしていました。
このときはまだ『D坂の殺人事件』は執筆しておらず、大正11年になると『二銭銅貨』で探偵作家として認知され、大正14年に団子坂の古書店を舞台とした『D坂の殺人事件』を発表したのです。

乱歩が古書店を開業していた団子坂エリア
乱歩が古書店を開業していた団子坂エリア

文豪の街をゆく 全国津々浦々編

■太宰治記念館「斜陽館」 (青森県五所川原市金木町朝日山412-1)
今もなお、若者から年配まで幅広く支持されている太宰治。
彼が生まれ育った故郷が五所川原にある「斜陽館」です。
大地主の津島家に生を受けた太宰は、この地で多感な少年時代を過ごしました。
斜陽館は、太宰の生家を利用した記念館で国の重要文化財として、また『津軽』や『思い出』の舞台としても有名です。
※ ~4月30日/9::00~17:00(最終入館16:30)
※ 入館料(一般500円 高・大学生300円 小・中学生200円 ほか)
■宮澤賢治「イーハトーブ館」(岩手県花巻市高松1-1-1)
宮澤賢治は37歳の若さで亡くなり、生前に出版されたのは『注文の多い料理店』と、詩集『春と修羅』だけでしたが、世代をこえて多くの人々に読まれている日本を代表する文豪です。
そんな賢治のことをもっと知りたい人のためにつくられた施設が新花巻駅にある「イーハトーブ館」。
この施設では賢治に関する数多くの資料を見たり、触れたり、利用することができます。
※ 8:30〜17:00(最終入館16:30)
※ 入館無料
── 生家や記念館などへ行くと、直筆の原稿や資料の豊富な展示や、作家がそこで過ごしていた雰囲気が感じられ、より深く、より作品の世界観にひたれそうです。
掌編をポケットに忍ばせ、作家へ思いを馳せながら、文豪ゆかりの地へおでかけしてみませんか?

歴史をうかがわせる佇まいの「斜陽館」
歴史をうかがわせる佇まいの「斜陽館」