すっかり春めいてきましたね! 気温が上がって、天体観測も気軽に楽しめる季節が到来。
3月9日には部分日食(インドネシアなどでは皆既日食が見られるそうですよ)がありますので、楽しみにしている方も多いかもしれません。
さて、昨年の夏からお送りしてきた、日本とアジアの星にまつわる物語も、いよいよ最終回。
春に日本からよく見える星を中心にセレクトしてお届けします。
花粉症でお悩みの方も、昼間より夜は症状がやわらぐことがありますよね。
星空の輝きに、しばし癒されてみてはいかがでしょうか。

古来、さまざまな物にたとえられてきた北斗七星
古来、さまざまな物にたとえられてきた北斗七星

舟のかじ、ひしゃく……北斗七星、あなたは何に見えますか?

はじめにご紹介するのは、おなじみの「北斗七星」。
一年じゅう観測できる北斗七星ですが、春は天空の高い位置にあるため見やすい季節です。
推古天皇の時代に、陰陽道や天文学とともに中国から伝わった「北斗七星」の名前。
「斗」とは「ひしゃく」のことで、日本でも古くから「ひしゃく星」「ます(枡)星」、舟の舵にたとえて「かじ星」などと呼ばれてきました。
昔の中国では、北斗七星は「帝車」=天帝の乗り物だと考えられていたそうです。
天の中心を回りながら、帝国を視察している……そんな風に見えたのでしょうか。
一方、モンゴルの昔話に出てくる北斗七星は、巨大な鳥にさらわれたお姫さまを助けた兄弟たち。
末っ子が動かない星(北極星)、北斗七星はその世話をする7人の兄たちなのだそうです。
インドネシアでは「ワニの星」と呼ばれる北斗七星。欲に目がくらんだばかりに、ワニに生まれ変わった金持ちの男。寺院に財産を寄進することでその魂は救われ、星になったと言われています。
「行き過ぎた欲は身をほろぼす」と、空から私たちをいましめているのかもしれません。

空に輝く道しるべ、その名は「北極星」

次にご紹介するのは「北極星」。一年じゅうほぼ同じ位置に見える星ですが、最終回になってようやくの登場となりました。
日本では「北の一つ星」「目あて星」「方角星」などと呼ばれてきた北極星。
ハワイでは、「不動」を意味する「キオパ」と呼ばれていました。
昔の人びとは、北極星の位置で方角を知り、旅行や航海の道しるべ、目印にしていたのですね。
ネパールに伝わる神話では、北極星はドルーヴァという王子さまの化身。
ナーラーヤナという神さまを慕って、瞑想生活に入った王子が姿を変えたものとされています。

ハワイでは日本より低い位置に見える北極星
ハワイでは日本より低い位置に見える北極星

ふたご座のカストルとポルックス、観測したことはありますか?

仲よく並んで輝く2つの星、「カストル」と「ポルックス」。
その姿から、古くから「蟹の目」「の目」などにたとえられてきました。
「めがね星」「きょうだい星」なんて呼び名もあるようです。
夜更かしさんにぜひ見つけてほしいのが、おとめ座の「スピカ」。
アークトゥルスやデネブとともに「春の大三角形」をかたちづくる星です。
春の夜更け、南の空に輝くスピカ。その清楚な輝きから、「真珠星」なんてきれいな別名がついていますよ。
5回にわたってお送りしてきた、日本とアジアの「星にまつわる物語」。
西洋星座とはちょっと違ったユニークな見立て、ロマンあふれる物語を、堪能いただけたのではないでしょうか

このコラムでご紹介できたのは、ほんの一部にすぎません。興味がある方は、ぜひ他の伝説も調べてみてくださいね。
参考:「アジアの星プロジェクト」海部宣男監修「アジアの星物語 東アジア・太平洋地域の星と宇宙の神話・伝説」、林完次「宙の名前 新訂版」「星のこよみ」