そろそろ春の気配が訪れているとはいえ、北国はまだ寒さ厳しい冬の真っ只中です。北国でも、大きい道路は除雪されているので雪は少ないのですが、一歩、路地に入ると、狭い道路はまだまだ雪と氷に閉ざされています。そんなツルツルした道路を進んでいくと、白い雪道にポッカリと黒い穴が…。そう、「マンホールの穴」です。深さは20cm以上。けっこうな段差です。このように、北国では市街地のあちこちに、黒い穴が開いています。そして、そこに車のタイヤがはまると…。

道路のあちこちに穴が…。深さは20cm以上。下水道を流れる排水の熱が雪を解かす。

白い雪道にポッカリと開いている穴をのぞくと、マンホールのフタが見えます。北国の人にはおなじみの光景です。
マンホールの下には、家庭のお風呂や台所からの温かい排水が流れています。この排水が下水道の熱となり、マンホールの上に積もった雪を解かしてしまうのです。
大通りと違って生活道路は除雪車が入ることが少ないので、雪と氷が20cm以上も積もってしまいます。しかし、マンホールのフタがあるところは常に温かいので、積もった雪を解かし、氷に覆われることはありません。これにより、雪面とマンホールのフタがあるところに段差ができてしまうのです。

離れて見ればそうでもないが、実は深い“落とし穴”…。
離れて見ればそうでもないが、実は深い“落とし穴”…。

穴をうまく通過しないと、バンパーが壊れ、オイルパンが割れる…。

穴の近くを車で通るとき、穴が1つだけなら、ゆっくりとよけたり、片輪だけ穴を通ったりして車は通行できます。しかし、なぜか穴が2つ、3つ並んでいるところも少なくありません。また、穴が大きくなって、畳1枚分くらいの大きさになっていることもあります。そうなると、車は穴をよけられないので、覚悟を決めて、穴の上を通らなければなりません。
通過するスピードが少し速い場合は、運転手や同乗者がその衝撃で、一瞬、宙に浮いてしまいます。さらに、穴にはまった衝撃で、車のバンパーが壊れたり、オイルパンが割れてしまった、という話もよく耳にします。
タイヤが穴に落ちる衝撃で、人が浮かないように、そして、車が壊れないようにと、超低速でそろーりと通れば問題ないように思われます。しかし、あまりにもゆっくり進むと、穴が深い場合はタイヤがすっぽりとはまってしまい、穴から抜けられなくなってしまう、という別の恐怖もあります。
また、北国では雪解けが始まってくると、雪と氷に閉ざされた道路が一気にぬかるみだし、いたるところがザクザクのシャーベット状になります。しかも、そのシャーベットは20cm以上のけっこうな深さです。そんなときにマンホールの穴にタイヤがはまってしまうと、前にも後ろにも進めず、にっちもさっちも行かなくなってしまうこともあります。
穴にはまらないように少し速度をあげて進むと、人が浮き、車が壊れる。かといって速度を落として進んでも、タイヤがはまって動けなくなる…。毎年毎年、このマンホールの穴に北国のドライバーは悩まされています。

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