バレンタインを迎えたこの週末は、全国的に一挙に気温がアップ!春を飛び越え、関東ではゴールデンウィークの暖かさになるという予報です。七十二候では今日2月14日より第三候「魚上氷(うおこおりをいずる)」。凍った川や湖も春の兆しに溶け出し、割れた氷の間から銀色の魚たちが飛び跳ねるころを迎えています。

漢字で書くと「公魚」。春の兆しが起こり始めるころ旬を迎える魚「わかさぎ」

今週末は思いがけなく吹いた強い南風と、一挙に春めいた気候に驚いた方も多いと思います。
本日より七十二候では、「立春」の末候「魚上氷(うおこおりをいずる)」。氷の下に閉じ込められていた魚たちも動き始め、勢いよく跳びはねだすという意味合いです。
この頃旬を迎える魚には、例えば「わかさぎ」がありますね。
北海道や東北など厳冬の地方では、凍りついた湖面にドリルで穴を開けて、その隙間から糸を垂らす「わかさぎ釣り」の風景がよく見られます。ピチピチとあがる(大きいもので10センチほど)銀色の小さな魚は、天ぷらやフライにすると頭から丸ごと食べられ、おいしいものですよね。
そもそもこのわかさぎは、海にいた魚。ですが、明治の終わりごろから全国の湖や沼でも放流され、繁殖していったとのこと。漢字で「公魚」と書くのは、かつての常陸国麻生藩が徳川11代将軍徳川家斉に年貢として納め、ご公儀(幕府)御用魚とされたことに由来するのだそうです。
暖冬の今年は、群馬県や東北地方では氷が十分に張らず、氷上のわかさぎ釣りが行われない釣り場も続出。年々進む温暖化による影響がこんなところにも現れているのですね。

中国では、なんと体温で氷を溶かし、魚をゲットする親孝行伝説も!

所変わって、中国の氷と魚に関するお話を少々。
その昔、極寒の時節に魚が食べたいと言った母親のために、川に行った王祥(おうしょう)という若者がおりました。けれども、冬なので当然のことながら、川は凍りつき、魚の姿はどこにも見えなかったそうです。そこで何を思ったのか、衣服を脱ぎ冷たい、冷たい氷の上につっぷした王祥。体温でじんわりじんわり氷が融け、なんと、魚が飛び出してきたのだとか。
早速その魚を獲って母に与えた王祥は、孝行息子として評判に。王祥が伏した所には毎年、人が伏せた形の氷が出るという伝説も生まれたとのことです。
この逸話は、孝行に関して特に優れた人物24人を取り上げた中国の書物「二十四孝(にじゅうしこう)」に収められたもの。(親孝行を徳とした)儒教を重んじた歴代中国王朝をはじめ、江戸時代の日本でも広く親しまれ、歌川国芳もこの逸話を浮世絵に描いています。
また、同じく中国北東部の吉林省で行われる、凍った湖に穴をあけて網を下す氷点下の漁も圧巻です。漁民たちは厚さ1~2メートルもある湖面の氷に穴をあけ、巨大な網を入れ、数頭の馬を使って網をゆっくりと引き揚げます。するとその網には、鯉などの大きな魚が大量にかかり、揚がった直後からたちまちカチンコチンに凍り付いてゆくのです。そんな厳冬のアイスフィッシングは大陸ならではのスケールの大きさで、日本のわかさぎ釣りとはまた違った趣ですね。

春一番も観測!春の嵐が去って、いよいよ季節はこのまま……?

昨日は四国で春一番も観測され、東海や関東地方では20度以上の気温が予想されるこの週末。けれども明日月曜日からはまた10度ほど下がり、冬に逆戻りなのだとか。
寒暖の気候が入れ替わったりするのも、この時期ならではとはいえ、アップダウンが激しすぎるような気もしますね。もともと冬の時期に使われていた「三寒四温」という言葉のとおり、寒かったり、暖かかったりを繰り返し、これから本格的な春が訪れようとしています。
マンサクが咲き、梅が咲き、椿も咲き…
森や山でもところどころで雪がとけ、地面が見えているところに、福寿草やふきのとうの花たちの姿もちらほら。
氷の下で縮こまっていた魚たちが躍り出るように、「春になったら○○へ行きたいな」とか、「春になったらあんなことを始めたい」など…、そんなことが自然に頭に浮かび、心も次第に浮き立ってくる。
来る春を目前に、誰もがそんな気持ちへと誘われる「魚上氷(うおこおりをいずる)」の時節です。