知床斜里と網走を結ぶ「流氷ノロッコ号」は、流氷が訪れるオホーツク海を望みながら、のんびりと走る、冬季限定の観光列車です。今季も1月30日から運行が始まりました。流氷ノロッコ号は、厳寒の流氷や、大雪原のキタキツネを眺めながら、時速30kmでゆっくりと進みます。毎年2万人が利用する人気の観光列車ですが、JRは今季限りで、運行を取りやめる検討を始めています。

1990年に運行開始。冬のオホーツクの風景を楽しむ、人気の観光列車。

流氷ノロッコ号は、知床の山々を望み、しばれるオホーツク海に押し寄せる流氷を眺めながら、のんびりと進む観光列車です。今年は1月30日から2月28日までの流氷が見られる時期に、知床斜里と網走の間を1日2往復転します。
「ノロッコ」という呼び名は、「のろい(速度が遅い)」と「トロッコ」をかけ合わせた造語です。5両の客車をディーゼル機関車が引き、大雪原を時速30kmでゆっくりと進みます。車内には昔懐かしい石炭式のダルマストーブがあります。暖房用のストーブですが、スルメや魚の干物を焼いて食べることもできます。
列車の窓から見える景色は、どこまでも続く青い空と海、まぶしい雪山と雪原、そして流氷。自然以外は何もない、それこそが魅力の北海道の冬の大自然を、車窓から堪能することができます。
今年は2月3日、斜里に流氷が接岸し、流氷の海を進む観光船「おーろら号」の運航も始まりました。暖冬で流氷が来ないという心配もなく、順調に流氷を見ることができそうです。

うまくいけば、流氷の上のオオワシに出会えるかも。
うまくいけば、流氷の上のオオワシに出会えるかも。

廃止の理由はディーゼル機関車の老朽化。でも、新しい車両で復活も !?

JR北海道は、老朽化したディーゼル機関車を順々に廃止する予定です。釧路支社でもディーゼル機関車1両が廃止され、3両体制になります。しかし、ノロッコ号を引く機関車はもともと、ラッセル用として作られたものなので、冬季は、ノロッコ号を引くだけでなく、除雪にも利用されます。そのため、3両では流氷ノロッコ号を引く機関車を確保できない、というのがJR北海道の主張です。
しかし、北海道の観光資源である冬の大自然を楽しむことができる列車が廃止されると、観光への影響も大きいと、沿線の自治体は存続を望んでいます。また、スピードを求め、トンネルばかりの新幹線と違い、流氷ノロッコ号は、北海道の冬景色をのんびりと楽しむことができる人気の観光列車なだけに、廃止になるのを惜しむ声も多数聞かれます。
ただ、JRは、古くなったディーゼル機関車は廃車を進めていますが、流氷ノロッコ号に関しては、運行する期間が短く、スピードを求める列車でもないので、車両を整備・改修して使えば、存続の可能性もあるとしています。その際は、自走できるディーゼル動車を改造し、デザインを新しくして、観光客に楽しんでもらえるようにしたいとしていますが、今のところ、はっきりしたことは何も決まっていないようです。

除雪でがんばるノロッコ号。
除雪でがんばるノロッコ号。

釧路湿原や富良野・美瑛など、夏場のノロッコ号は存続する。

JR北海道では、ディーゼル機関車が引く観光列車は、流氷ノロッコ号のほかに、「くしろ湿原ノロッコ号」と「富良野・美瑛ノロッコ号」があります。これらは夏に運行されるので、ディーゼル機関車が除雪に利用されることはありません。機関車が充分に確保できるということで、この2つの運行については存続されるようです。しかし、昨年度は「SLニセコ号」や「SL函館大沼号」、「SLはこだてクリスマスファンタジー号」が廃止されました。人気の観光列車といえども、廃止されないとは言い切れないかもしれません。
3月26日に北海道新幹線が開業し、北海道と本州とのアクセスの幅が広がってきます。新幹線の終点・北斗市の隣に位置する函館市は、空港が市街地から車で20分ほどの好立地です。終点の「新函館北斗駅」(北斗市)から空港への往復が便利になるのであれば、本州からの観光客を北海道の北部や東部へと呼び込むことができます。新幹線開業というせっかくのチャンス。人気の流氷ノロッコ号が廃止されようとしているのは、大変残念なことです。日本で流氷が見られる唯一の道東。世界遺産の知床。その観光資源を生かすためにも、流氷ノロッコ号の存続を願わずにはいられません。
《参考:北海道新聞2015年11月11日号31面「流氷ノロッコ号 最後の冬」》
《参考:北海道新聞2016年1月30日号夕刊1面「今季限り? ノロッコ号が始動》
《参考:北海道新聞2016年2月4日号2面「ノロッコ号 代替検討」》

夏の「くしろ湿原ノロッコ号」は存続。同じノロッコ号なのに…。
夏の「くしろ湿原ノロッコ号」は存続。同じノロッコ号なのに…。