暖かい冬の日が続いていましたが、先週になり日本列島を覆う大寒波が押し寄せました。
驚くことにその寒波は沖縄にも影響が……。冬の沖縄といえども1月の平均気温は17℃ほど。そんな過ごしやすいはずの沖縄でも「雪が降るかも」という信じられない予報が出ました。
そんな寒さに覆われた沖縄ですが、なんともう「桜」の季節がやってくるのです。
1月なのに桜? と不思議に思うでしょうが、もう間もなく濃いピンクの鮮やかな花が咲き始めます。
そんな沖縄の桜「寒緋桜」とはどんな桜でしょうか?

南国らしい晴れ渡った空、そして樹木と、美しい景観を見せる「寒緋桜」
南国らしい晴れ渡った空、そして樹木と、美しい景観を見せる「寒緋桜」

「寒緋桜」と「ソメイヨシノ」の違いとは?

本州で桜といえば「ソメイヨシノ」が一般的ですが、沖縄で桜といえば「寒緋桜」です。
この「寒緋桜」は、ひと足早く1~2月にシーズンを迎えるのですが、その姿を見た人の多くが「梅? 」と思いがちですが、実は「寒緋桜」……。
花びらの色は濃いピンク。花の向きは下向き、さらに、桜吹雪といわれるソメイヨシノのような散り方もなく、ボトッと花が木から落ちるのも、寒緋桜ならではの特徴です。
もちろん「さくらんぼ」もきちんと実をつけます。
ただ、普通のさくらんぼとは見た目も味もかなり違います。もし、寒緋桜のさくらんぼをそのまま口に入れたとしたら……。あまりの酸っぱさで食べられないこと間違いなしでしょう!

下向きに咲くのが寒緋桜ならでは
下向きに咲くのが寒緋桜ならでは

「やんばる」から咲く寒緋桜の不思議

沖縄本島の北部「やんばる」地方から咲く寒緋桜。
ソメイヨシノの場合は桜前線上昇というくらいですから、春の暖かい気候に沿って南から順番に咲いていくものです。
北から咲く「寒緋桜」、南から咲く「ソメイヨシノ」。
この二つ、聞くかぎりまったく違う性質のように聞こえますが、開花までの過程は実は同じ。
だからこそ、開花時期に変化が出るのです。
桜の芽は夏に作られ、秋から冬の低い気温の中でしばし過ごします。
その寒さが過ぎ、暖かくなってきた頃にようやく花を咲かせます。
一定期間寒い日を経験しなければ、桜は花を咲かせられないのです。
寒緋桜の場合、山のほうが十分な寒さを先に経験するため、山の多い「やんばる」地方から先に咲き始めるのです。

山が多い、やんばる地方の美しい風景
山が多い、やんばる地方の美しい風景

「桜の街・名護」に桜が多い理由

沖縄北部にある名護城中央公園では、毎年「名護桜まつり」が行われ、沖縄県内でも「桜の街」と呼ばれる地域です。
桜が名護に広まったきっかけは、1902年に建てられた県立農学校を通じて、公共施設や民家に苗木が配られたことから。
名護桜まつりの中心である名護城跡にも大正はじめ頃に、地元の青年団が50本あまりの苗木を植えたことから桜の名所となり、たくさんの人々が訪れるようになりました。
ただし、本州のように、桜の木の下に座り込んでお花見という習慣はあまりないよう。
花を楽しみながら、出店で買い物をしたり、イベントを楽しんだり……というのが、桜まつりの醍醐味となっています。
名護桜まつりは1月30・31日開催と、沖縄でもひと足早いスタートですが、那覇では2月中旬くらいまで寒緋桜が楽しめます。沖縄を訪れる人はぜひ、桜にも注目してみてくださいね。