強い強い寒気が列島に流れ込み、なんと沖縄本島でもみぞれが観測され、信州・諏訪湖もほぼ全面氷結となりました。1月25日からの七十二候は、大寒の次候「水沢腹堅(さわみず こおりつめる)」。凍てついた厳冬の寒さが頂点となり、最低気温が観測されます。流れる沢の水も凍り、滝さえも巨大な氷柱へと変わるこの時節…樹氷、霧氷、流氷、御神渡り(おみわたり)、氷の教会など、厳しくも美しい氷の情景を集めてみました。

氷点下となり、流れる沢まで凍りつくこの時節に見られる「霧氷」「樹氷」

一年で最も寒いといわれる「大寒」の真ん中、「水沢腹堅(さわみず こおりつめる)」となりました。
流れる沢に氷が厚く堅く張りつめるという候ですが、沢の水どころか滝まで凍ってしまうと「氷瀑(ひょうばく)」に。滝によって、その年の気候によって、彫刻のような自然の造形がさまざまに楽しめるのも、自然がなせる技ですね。
また、気温が各地で水が凍る温度「氷点下」となり、凍てつく寒気に水道管が凍ってお困りの方も多いと思います。
「氷」は水が凍ったもの。氷点下の地上では「霜」、「霧氷」、「氷河」など氷の風景が現れます。
葉を落とした冬の樹木が、きらきらと輝く氷の衣をまとうのが、「霧氷(むひょう)」です。「霧氷」は、空気中の水蒸気や霧が樹木などに付着してできる氷のこと。白色や半透明の霧氷は間近で観察すると、その結晶がはっきりと見えて美しいものです。
また「霧氷」は、その生じ方によって「樹霜(じゅそう)」、「樹氷(じゅひょう)」、「粗氷(そひょう)」、の三種類に分類されているとか。なかでも「樹氷(じゅひょう)」は、氷点下5℃以下なって過冷却された濃霧などが、冷たい樹木などに当たり、瞬間的に凍結付着したものなのだそうです。蔵王(ざおう)などで見られるアイスモンスターは、この樹氷が樹木全体を覆ったもの。蔵王ロープウェイでは、ナイトクルーザーで行く「樹氷幻想回廊」ツアーが、今週から連日行われていますので、ライトアップされた巨大なモンスターたちを見に出掛けてみてはいかがでしょう。

北海道の東の果てオホーツクの海を覆う「流氷」。諏訪湖の「御神渡り(おみわたり)」は神さまの愛の道

北海道の東、オホーツク海を覆う氷の情景が「流氷」です。遥か北方から流れてくる流氷は1月中旬から道東で観測されますが、その多さは風や気温次第。折よく多くの流氷が接岸し、青い海が純白の世界へ一変する風景が見られることもあります。今年もそろそろ流氷のシーズンの到来ですね。

所変わって信州・諏訪湖で見られるのが、「御神渡り(おみわたり) 」。これは、諏訪湖が「全面結氷」し、寒暖差によって膨張と収縮を繰り返した氷が轟音とともに裂け、高さ30cmから1m80cmくらいに盛り上がるという現象。ちょうど馬の背に置く鞍のような形に隆起した山が湖の上を走るので、氷の鞍状隆起とも言われています。
この「御神渡り」には伝説があり、諏訪神社上社の男神・建御名方神(タケミナカタノカミ)が下社の女神・八坂刀売神(ヤサカトメノカミ)のもとへ通った道なのだとか。なんだかロマンチックな氷の道ですが、神さまが渡るだけに神聖なもの。「御神渡り」が現れた年は、「八釼(やつるぎ)神社」の神官による古式ゆかしい神事が行われ、その年の天候、農作物の豊・凶作、世相なども占われます。
2013年1月の出現を最後に近年見られていないという「御神渡り」。昨日25日の早朝、強い寒気で全面氷結となった諏訪湖では、今年こそと「御神渡り」への期待が高まっています。

北海道・トマムに厳冬の期間限定で出現する「氷の教会」

北海道の道央トマム、星野リゾートは雲海の絶景でも有名ですが、いまの時期、(2016年は1月8日~2月14日の予定)期間限定で出現するのが、「氷の教会」です。
世界的な建築家・安藤忠雄氏が設計した「水の教会」が、真冬の間は「氷の教会」となり、アナ雪気分のウエディングセレモニーも人気です。十字架もベンチシートも雪と氷で作られた礼拝堂は、まさにファンタジックな氷の世界。寒いからこそ互いの温もりがかけがえのないものに感じられ、愛もぐっと深まりそうですね。
マンモスが眠る永久凍土があり、世界一寒いといわれるロシアのヤクート(現サハ共和国)では、氷点下40度になると、大気中の水分がすべて結晶となる「氷霧(こおりぎり)」が発生。町中が乳白色のミルクの中に沈んだようになるのだとか。また、氷点下50度になると人の吐く息までが瞬時に凍り、「星のささやき」と呼ばれる、かすかな音が耳に響くそうです。
キンと冷え込んだ空気のなかで、凛と張り詰めた氷の情景。寒さの頂点を迎えたこの時候ならではの荘厳な美しさです。
※参考&出典
空の名前(光琳社出版)