真冬の陽気に一転! あったかい鍋ものが恋しい! というわけで、「鍋」の歴史を調べてみました

2016/01/12 16:30

暖冬の気配から一転、今日は全国的に冷え込んだ陽気に……。 東京では明け方に初雪が降りましたが、気温が下がると「鍋ものが食べたい」という方も多いかもしれません。 でも、現在のように多くの家庭に土鍋が普及したのは昭和の中期以降と、意外と最近のことのよう。 人類が「鍋でゆでる」調理をするようになったのは、およそ1万年前のことだと言われます。この発明は、私たちの生活にどんな変化をもたらしたのでしょうか。 今回は、人間と「鍋」の深~い歴史をひも解きます。

鍋とともに発展した各国の料理。写真はフランスの伝統料理ポトフ
鍋とともに発展した各国の料理。写真はフランスの伝統料理ポトフ
鍋の発明がなかったら、人類の発展はなかった!? まだ「鍋」がなかった時代、人類はどのような食事をしていたのでしょうか。 火の使用は200万年前から始まっていたと言われますので、おそらく食材を棒などに刺し、炙り焼きして食べていたのだろうと考えられています。 その後、約1万年前になって、貝殻や甲殻類、木の実、動物の胃袋などを利用した道具で、食材を煮て食べる方法が考え出されます。硬くて食べられなかった食材や、あくが強く食用に向かない食材も、何時間も煮ることで食べることが可能になったのです。 それまでの人類にとって、歯を失うことは死活問題でした。 しかし、鍋でお粥やごった煮を作れるようになったことで、生存のチャンスが高まりました。また、「ゆでる」以外に「味のついた汁で煮る」「蒸し煮にする」など、調理のバリエーションも広がっていきました。ただ生きるためではなく、「楽しむ」ために食事をすることができるようになったのです。 紀元前2000年ごろになると、古代エジプトやメソポタミア、古代中国などの文明において金属鍋の使用が始まります。さらに時代を経ると、陶器の鍋やホーロー鍋など、鍋の素材も多様化していきました。料理に合わせて、さまざまな形状の鍋が発明されていったのです。 ちなみに、日本でいう土鍋は、中国では「砂鍋」。煙突のついた「火鍋」も有名ですね。
薬膳鍋として知られる「火鍋」
薬膳鍋として知られる「火鍋」
おなじみのポトフやシチューも、鍋の歴史を物語る料理 ヨーロッパにおいては、大きな鍋(コルドロン)一つですべての調理を済ませる時代が長く続きました。 フランスのポトフ、アイルランドのシチュー、スペインのコシードなど、多くの国に「鍋一つで作れる伝統料理」があるのは、それを物語っています。 寒い地域が多いヨーロッパでは、暖炉に鍋をかけて煮込むのは、火を絶やさない工夫だったとも言われます。室内の温度を快適に保ち、薪も無駄にならない、まさに一石二鳥だったのですね。 このように「一つの鍋で何もかも調理する」時代が終わり、大小さまざまな鍋を使い分けるようになったのは、18世紀になってから。フランスで「啓蒙思想」が普及した影響から、「料理一つひとつに、それに合った鍋が必要だ」という考え方が生まれたのだそうです。 大鍋に食材と香辛料を投入して煮込む中世以来の調理から、バターや柑橘類を使った新しい調理へと、料理そのものも進化の時代を迎えていました。ココアやコーヒーなど、新しい食材が登場したことも、多様な鍋が必要になる背景となりました。結果、多くの鍋が生産されるようになり、金属加工業が活性化。工業の発展へと結びついていったとも言われます。 キッチンの構造、家族の人数、使用人の有無、食べ物の嗜好、テクノロジーの発達、環境への配慮……鍋の歴史には、さまざまな社会的な要因が関わっています。 たとえば、巨大な鍋を取り扱っていた時代には、料理は男性が担う重労働でした。 また近年、「タジン鍋」が日本で流行したのは、ヘルシー志向が関係しているのでしょう。私たちが日々なにげなく使っている鍋にも、まだまだ知られざる物語がありそうです! 参考:ビー・ウィルソン著(真田由美子訳)「キッチンの歴史 料理道具が変えた人類の食文化」 サカイ優佳子・田平恵美編「ポプラディア情報館 世界の料理」
タジン料理
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