夏編、お月見編、そして秋編とお送りしてきた、日本とアジアの星にまつわる物語。
今回は、いよいよ冬編です
。空気が澄みわたり、お星様がよく見える季節。今回は、この時期に日本からよく見える星についてのお話をお届けします。西洋星座とはひと味違う、アジアの人びとの世界観、宇宙観にふれることができますよ。
学校は冬休み、お勤めの方もそろそろ仕事納め……という方が多いのではないでしょうか。
夜更かしの機会も増える年末年始、ぜひ夜空を見上げてみてくださいね。

都会の夜空でも見つけやすいオリオン座
都会の夜空でも見つけやすいオリオン座

オリオン座の有名な「3つ星」、アジアではこんな伝説が

冬の夜空に輝く、おなじみの「オリオン座」。オリオンの帯にあたる「3つ星」のほか、「冬の大三角」の一角をなす赤い星ベテルギウスや、1等星リゲルがあることでも有名ですね。
昔の日本では、オリオン座の3つ星を「三つ星」「三丁の星」「三大師」などと呼んでいました。オリオン座全体をとらえた呼び名としては「鼓星」。3つ星を鼓のくびれに、周囲の4つの星を鼓の本体に見立てたのですね。
モンゴルの伝説では、オリオン座の3つ星は「3頭の鹿」の化身だとされています。昔むかし、フフデイという王様がいました。弓の名手だったフフデイ王はある時、3頭の鹿と出会い、その後を追跡します。王様に追われた鹿は天へと駆け上がり、3つの星になってしまいました。3つ星の近くで赤みがかった光を放つベテルギウスは、鹿の血で染まった矢が星になったのだと言われています。
タイ北部に伝わるのは、悲しい恋の物語です。赤く輝くベテルギウスは、ウペムという美しい娘さん。青く輝くリゲルは、クン・サルム・ロルという青年。反目する2つの村に生まれ、周囲の反対を押し切って結婚した二人は、不慮の死を遂げてしまいます。娘の死を嘆く母親が、それでもなお二人の仲を隔てたいと、二人が埋葬された地面に突き立てた3本の竹竿が「3つ星」なのだそうです。

おなじみの「オリオン座」
おなじみの「オリオン座」

冬の夜空でひときわ大きく輝く「シリウス」、その日本名は

ベテルギウスと同じように「冬の大三角」を構成する、おおいぬ座のシリウス。
地球から見える中では最も明るい恒星として知られ、青白い輝きを放つ姿から、昔の日本では「青星」「大星」などと呼ばれていました。中国名は「天狼」。これは、らんらんと輝くオオカミの目になぞらえたものと言われます。
このシリウス、モンゴルでは、上でご紹介した伝説に登場する「フフデイ王」の化身だとされています。オリオン座の星々より少し遅れて、天へと昇ってくるシリウス。今でも弓をつがえて、3頭の鹿を追い続けているのでしょうか。
ちなみに、「冬の大三角」のもう一つの星は、こいぬ座のプロキオン。シリウスのすぐ近くで、白く輝く1等星です。日本の出雲地方では、その白い輝きからプロキオンを「色白」と、シリウスを「南の色白」と呼んでいたそうですよ。
最後に、大晦日から元旦にかけて起きる天体ショー(?)をご紹介しましょう。
それは、月と木星の「大接近」。半分くらい欠けたお月さまと、そのすぐ近くで輝く木星の競演が楽しめます。
黄色がかったあたたかな色の光、大きく明るく輝くその姿から、古代中国や古代ギリシャでは、木星を「天空の貴族」「神々の王」になぞらえていました。また、インドの占星術では、サンスクリット語で指導者を意味する「グル」と呼ばれます。
年越しがてら夜更かし、または早起きをする方は、ぜひ仲よく輝く月と木星を眺めてみてくださいね!
参考:「アジアの星プロジェクト」海部宣男監修「アジアの星物語 東アジア・太平洋地域の星と宇宙の神話・伝説」
林完次「宙の名前 新訂版」「星のこよみ」

おおいぬ座
おおいぬ座