オトナの恋愛を描いた名作や、心の機微を丹念にすくいとる大作……。
映画鑑賞を楽しむ時季としては、感受性が高まり、物事に熱中できる秋〜初冬が最適!
昨今では劇場派はもちろん、有料コンテンツ派、映画専門チャンネル派、レンタル派……と、鑑賞スタイルのチャネルが多様化し、7.1chのホームシアターを完備する家庭も多いようです。
そこで今回は去りゆく秋を偲び、タイトルに“秋”“Autumn”がつく映画を厳選!
あなたは誰と、どの作品を観たいですか?

鑑賞スタイルのチャネル多様化に伴い、最近では7.1chホームシアターを完備する家庭も
鑑賞スタイルのチャネル多様化に伴い、最近では7.1chホームシアターを完備する家庭も

まずは米国発の、恋愛映画をご紹介

恋愛映画の旗手的存在といえるリチャード・ギア。1949年生まれの彼は『愛と青春の旅立ち』『プリティ・ウーマン』などで、女性の心をわしづかみにしてきたハンサムガイですが、日本に由来する映画『Shall We Dance?』(2004年)、『HACHI 約束の犬』(2009年)の主演を務め、最近は洋風・寅さん(?)を演じたCMでも話題に。
そんな彼が、恋多き女優ウィノナ・ライダーと主演を務めた『オータム・イン・ニューヨーク』は、美しい詩のような寓話性が魅力。監督は上海生まれの女優ジョアン・チェン。東洋人ならではの感性がちりばめられた絵画的な映像にも注目です。
『オータム・イン・ニューヨーク』
●製作年2000年─米国●監督は『ラストエンペラー』に出演した女優のジョアン・チェン。病により死にゆく身と知る自由奔放な若き女性(ウィノナ・ライダー)と、高級レストランの経営者で独身プレイボーイ(リチャード・ギア)との恋の行方は……?

あなたは劇場派? 家庭観賞派?
あなたは劇場派? 家庭観賞派?

次に、ヨーロッパ発の3作品

『恋の秋』
●製作年1998年─フランス●秋の穏やかな自然の空気に包まれながら、40代男女の恋模様を軽やかなタッチで描いた一編ながら、1998年のヴェネツィア国際映画祭最優秀脚本賞受賞。主演は『冬物語』のマリー・リヴィエール、『レネットとミラベル』のベアトリス・ロマン。
『秋のミルク』
●製作年1988年─西ドイツ●1938年の西ドイツバイエルン地方が舞台。ナチズムの嵐に覆われていた戦時下、西ドイツの農村を舞台に、少女が母となるまでの成長を軸に、ひとりの女性としてたくましく生きていく姿を骨太に描く。監督は今作がデビューとなったヨゼフ・フィルスマイヤー。
『秋のソナタ』
●製作年1978年─スウェーデン●名女優イングリッド・バーグマン最後の映画作品。異なった環境で生活する母と娘の微妙な絆とともに、奔放に生きる母と、彼女に不満を抱える娘の心の葛藤を描いた人間ドラマ。監督・脚本はスウェーデンが誇る巨匠イングマール・ベルイマン。

躍進著しい韓国映画から2作品

近年の韓国映画市場の活性化には目を見張るものがありますが、ご紹介する2作品も韓国が製作に名を連ねています。
『レイトオータム』
●製作年2010年─韓国・香港・アメリカ●1966年に製作された韓国映画の名作『晩秋』を、『家族の誕生』などのキム・テヨン監督がリメイク。霧の街・シアトルを舞台に繰り広げられる、切なくも、愁いあるしっとりとした恋物語が胸に迫る。
『春夏秋冬そして春』
●製作年2003年─韓国●『悪い男』で知られる韓国の鬼才、キム・ギドクが織り成す詩情豊かなドラマ。四季の移り変わりをとらえた情緒あふれる映像美のなか、人生の旅路を四季の変化と重ね合わせ、罪、心の傷、裏切り、欲望、癒やし、再生を、優しく温かなまなざしで描く。

原節子さんの訃報に際し、邦画から2名作をご紹介

最後は日本映画です。
先日、小津安二郎とえにしのあった名女優・原節子さんの訃報が伝えられたばかりですが、名匠・小津安二郎の代表的作品『麦秋』をご紹介します。
麦秋とタイトルに“秋”はつくものの、麦秋は初夏のこと。小津安二郎がタイトルをなぜ「麦秋」としたのか……それも本作の見どころでしょう。
『麦秋』
●製作年1951年─日本●世界的名監督・小津安二郎の作品において、原節子が「紀子」という名の役を3作品にわたって演じた「紀子3部作」の2作目。小津監督が「ストーリーそのものより、もっと深い《輪廻》《無常》を描きたいと思った」と語った意欲作。
『秋深き』
●製作年2008年─日本●原作は昭和の文豪・織田作之助の短編『秋深き』(1942年)『競馬』(1946年)。胸の大きな美人ホステスは男の一途さに惚れ、男は女の乳房に恋をした……。 おかしくて、泣けて、ほのぼのと心温まる“純情”さが薫る恋物語。主演は八嶋智人と佐藤江梨子。
──灼熱の陽光が照りつける海沿いの道や海、凍てつく氷河、雪深き町など、登場人物の服装や町の様子から季節感は読みとれますが、春&秋そして、今の時季の初冬が舞台の映像は、登場人物の心の機微や、思い通りにいかない切なさ……といった不条理を描くケースが多く、それだけに監督やキャストの“思い”をくみ取れるオトナが楽しめる側面があるといえます。
マシンガンや拳銃で撃ち合う派手なアクションシーンこそありませんが、情感に満ちた作品を観賞し、心豊かな時間を堪能してはいかがでしょう。

晴れ渡る空とコントラストをなす、黄金色に輝く「麦秋」
晴れ渡る空とコントラストをなす、黄金色に輝く「麦秋」