ブリは漢字で書くと「鰤」。師走(12月)になると脂が乗っておいしくなる魚だからこの字になった、とも言われている通り、日本海の寒ブリは、今がまさに旬です。ブリは需要が高い魚なので、西日本では養殖が盛んです。ところが、ここ数年は北海道でもブリが獲れています。それも、大豊漁です。今、北海道のスーパーでは天然のブリの切り身が3枚で300円というお手ごろ価格。どうして、暖流を好むブリが、寒い北海道の海で豊漁となっているのでしょう。

海水温の上昇で、ブリやメカジキなども北海道で獲れる。

研究者によると、ここ数年、北海道、特に道東の海面の水温が、夏から秋にかけて高くなっています。地球温暖化により、大気だけでなく海水も温められているため、暖水の塊が北海道沖にできて、暖流の魚が北上しています。そのため、ブリやメカジキなど、本来は暖流で獲れる魚が北海道でも獲れている、ということです。
ブリは九州の南部で産卵します。その稚魚は北海道の南部へと北上し、北の海の豊富なエサをたくさん食べます。秋になり水温が下がると南下して、九州へと戻ります。この南下の途中に日本海の石川・富山・福井あたりを通るのが、ちょうど今ごろで、この時期のブリが「寒ブリ」と呼ばれ、最も脂がのっていておいしいといわれています。
ブリの高水温の限界は23℃。これが以前は道南あたりだったのですが、最近はオホーツクにまで上がることもあります。7月に積丹半島あたりへ北上してきたブリは、さらにオホーツク海へと回遊します。そのため、秋になり南下をはじめた脂ののったブリが、石川よりも北の海でも獲れるようになった、というわけです。

船の上で “活締め” し、鮮度を保つ。日高ではブランド化。羅臼でも価格が安定。

襟裳岬の西側に位置する日高で、10年ほど前からブリの水揚げが増えています。9~10月の秋サケの定置網にブリがかかり、最近では10キロ前後の大型のブリも混獲されています。2011年以降は毎年100トンの水揚げがあり、今後も豊漁が見込まれています。これを受け、ひだか漁協では、日高のブリのブランド化に取り組んでいます。6キロ以上のブリは船の上ですぐに血抜きし、鮮度を保ちます。この、“活締め”ブリは産地別に、「三石ぶり」、「はるたち(春立)ぶり」と分けられ、ブランド名をアピールしています。さらに、脂肪率を計測してそれを表示するなどの付加価値も施し、それぞれのタグをつけて、独自の販路を開拓しました。野じめ(氷によって一気に締める方法)のブリに比べ、2割ほど魚価が上がっています。
知床半島の東側に位置する羅臼町(らうすちょう)。サケやスケトウダラ、ホッケやイカの水揚げを誇るこの町で、ここ数年、サケの定置網にブリが大量に混獲されるようになりました。温かい海水を好むブリが、オホーツク沿岸の羅臼町で…。地元の漁業関係者も困惑の色を隠せません。しかし、ここ羅臼のブリは形がよく、脂ものっているので評判がいいようです。水揚げ後すぐに、船の上で活締めされたブリは、今のところ価格が安定しています。今後ブリは、羅臼の主要水産物となるのでしょうか。

照り焼きもおいしい !!
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