「鵡川(むかわ)ししゃも」のブランドで有名な、北海道胆振(いぶり)のむかわ町。シシャモがたくさん獲れるとあって、むかわ町のシシャモは全国でも人気です。ところが、ここ数年、むかわ町のシシャモの漁獲量が激減しています。今年も水揚げ量が少なく、シシャモの高値が続いています。

居酒屋の定番メニュー、焼きシシャモ!!
居酒屋の定番メニュー、焼きシシャモ!!

オスが先に川を上り、後から上ってくるメスを迎え入れる。

襟裳(えりも)岬から海岸線に沿って北西に向かった先、苫小牧市と日高町のちょうど真ん中あたりに位置するむかわ町。農業・漁業・畜産業ともに盛んな町で、シシャモをはじめ、メロンや和牛などの特産でも有名です。
シシャモは、北海道の太平洋沿いの、水深120m未満の限られた地域でしか分布していない、日本固有の魚です。漢字で書くと「柳葉魚」。名前の由来は、アイヌ語で「柳の葉の魚」を意味する「シュシュ・ハモ」、または「スス・ハム」といわれています。
シシャモは10月下旬、満潮と日没が重なるときに川を遡上し、産卵します。この時期は群れをなして川を上りますが、まず先にオスが遡上し、メスが上ってくるのを待ちます。そして、日が沈むとメスは、オスが待っている川を遡上します。その夜に産卵を終えるとすぐにメスは川を下りますが、オスは数日の間、川にとどまります。
川でふ化した仔魚は、翌年の4月ころから川を下り、海へと旅立ちます。そして2年後、再び生まれた川へと戻ってきます。

シシャモの不漁の原因は不明。2010年から年々漁獲量が減少。

10月上旬から始まったむかわ町のシシャモ漁は、11月7日に終わりました。平年だと11月中旬まで続きますが、今年はシシャモの川への遡上が早かったため、漁を早めに切り上げたのです。
今年のシシャモの漁獲量は、前年に比べて6トン少ない8.1トン。鵡川漁協が厚真(あつま)漁協と合併したのが1998年。今年の漁獲量は合併以降、最も少ない8.1トンにとどまりました。漁獲量が少ないため、価格も高騰。1キロあたりの価格は、不漁で高値だった去年の2842円をさらに上回り、2964円となりました。
飲食店では、むかわのシシャモを食べにきた観光客に、よそで獲れたシシャモを出すわけにもいかず、価格を上げて地元のものを出しています。
2010年以降、シシャモが減少している原因については、よくわかっていません。マツカワというカレイ科の高級魚がシシャモをエサにしているのではないかともいわれていますが、詳しいことは不明です。
〈参考:北海道新聞11月1日号1面、「シシャモ不漁、むかわ苦境、最少の昨年並み、浜値高騰、料理店値上げも」〉
〈参考:北海道新聞11月11日号4面、「シシャモ 不漁のまま幕、むかわ漁獲量 98年以降で最低」〉

「シシャモ」 にそっくりな 「カラフトシシャモ」。紛らわしいネーミング、でも全く違う種類の魚。

「シシャモ」が不漁といっても、「あら、スーパーで普通に売っているわよ」と思っている方、もしかしたらそれは、「カラフトシシャモ」という魚かもしれません。一見するとそっくりな「シシャモ」と「カラフトシシャモ」。でも、まったく違う種類の魚です。
まず、価格が違います。スーパーなどで「安いな」と思ったら、「カラフトシシャモ」の場合がほとんどです。パックをよく見ると、「カラフトシシャモ」、または「カペリン」と書いてあるはずです。
「シシャモ」は北海道でしか獲れません。サケ目キュウリウオ科シシャモ属で、秋に北海道の川に遡上して産卵します。
一方、「カラフトシシャモ」の“本名”は「カペリン」。サケ目キュウリウオ科マロータス属の魚で、シシャモとはまったく種類が違います。北海道よりさらに北の、北極を中心に分布しています。ずいぶん前から、シシャモの干物の代用品として輸入されていて、価格が安いこともあり、広く出回っています。今まで、カペリンをシシャモだと信じて食べている方も多いはず。
しかし、よく見ると「シシャモ」と「カラフトシシャモ」は違います。「シシャモ」はウロコが大きく、1枚1枚がはっきりとしていますが、「カラフトシシャモ」のウロコはとても細かいので、まるでウロコがないように見えます。体の色も、「シシャモ」は背中が暗い黄色、腹が銀白色なのに対し、「カラフトシシャモ」は全体的に青みがかっています。
今まで、「カラフトシシャモ」を「シシャモ」だと信じて食べていた方は、一度、本物の「シシャモ」を食べてみてください。「シシャモ」の味の濃厚さ、しっとりした身の食感…。全然違う種類の魚であることがわかると思います。
北海道では、サンマに続き、シシャモも不漁です。ただ、サンマの場合は、海水温の上昇や乱獲など原因がはっきりしていますが(下記リンク先参照)、シシャモの不漁については詳しい原因がわかっていません。
一方、サンマやシシャモにかわり、北海道では昨年からブリの水揚げが好調です。昨年は海水温が上がったため、なんと、マンボウが“豊漁”でした。
いろいろな要因が重なり、北海道の「お魚マップ」が年々変わってきています。地元の特産だった魚も、いずれ変わってしまうのでしょうか。