貴重な栄養源、交易品として……そして近代化とともに「工業製品」に?「サケ」と人間の長くて深~い歴史 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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貴重な栄養源、交易品として……そして近代化とともに「工業製品」に?「サケ」と人間の長くて深~い歴史

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ルイペ(ルイベ)、オハウ(汁もの)、チタタプ(叩き)……アイヌもサケとの関わりが深い民族。写真は伝統の寒干し

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食材の味わいが増し、風味豊かになる雪中貯蔵庫「雪室(ゆきむろ)」

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おにぎりのキホンはやっぱりサケですよね

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本日、11月11日は「鮭の日」です!
漢字の「鮭」のつくりを分解すると「十一十一」になるからだそう。
日本はもちろん、サケは古くから世界中で食べられてきた魚。
塩鮭、粕漬け、バター焼き、石狩鍋、ちゃんちゃん焼き……をはじめ、お刺身や寿司ネタとしも美味しいサケ。たくさんの料理が思い浮かびますね。でも、生のサケがこれほど出まわるようになったのは、ごく最近のことなのです。
「鮭の日」にちなんで、サケと人間の歴史を紐解いてみましょう!

大昔から、人びとの暮らしを支えてきたサケ

サケの仲間は、北太平洋、および北大西洋に生息しています。たんぱく質と脂質が豊富で、すぐれた栄養源として人びとに愛されてきました。
サケの生態には「遡河性」という、人間にとって「都合のよい」特徴があります。淡水の川で生まれ、海に下って過ごし、一生を終える頃に再び川に帰ってくる……。
いわば、人間のもとに「規則正しく届く」食料、というわけです。この生態が、古くから人びとの暮らしを支えてきました。
北アメリカに暮らす先住民族の人びとは、何千年も前から川をせき止める「やな」や罠かごを使って鮭をとっていたといわれています。サケは単なる食べ物を超えた大切な存在であり、財産として扱われるほど重要なものでした。
北欧諸国でも、古くからサケ漁が行われていました。サケは大切な交易品であり、人びとの貴重な食料でもあったのだとか。
貯蔵や保存のために、活用されていたのは意外にも「地中」……。スウェーデンやノルウェーなどの北欧では、地中の温度の低さを利用して魚を埋めて保存したのだそう。日本にも「まろやかさ」や「甘み」などの美味しさがプラスする雪深い地域独特の食品保存「雪室」がありますが、それとよく似ていますね。

近代化と技術革新で、サケは「工業製品」に

18世紀、アラスカやカムチャツカが開拓の時代を迎えた頃から、サケ漁の「近代化」が始まります。商業漁業が始まり、19世紀には「サケの缶詰」が登場。大量に収穫したサケを、工業製品として製造する時代がスタートしたのです。
ヨーロッパやアメリカで、「サケは健康にいい」といったキャンペーンが実施されました。その効果もあり、サケの缶詰は家庭の常備品として、また軍隊の糧食として普及していきます。
ロシアやアメリカ、オーストラリア、日本などの企業が、カナダやアラスカの各地に進出し、サケを加工する工場を建設。魚体をさばくために、また加工した身を缶に詰めるために必要とされた膨大な労働力は、地元の人びと、そして海外から移住してきた人びとが担いました。
やがて技術の進歩により、多くの作業が機械化されると、缶詰をはじめとするサケの加工品はより安く大量に流通するようになります。
さらに1980年代になると、コールドチェーン(食品を冷蔵・冷凍で流通される仕組み)が発達。それまでは加工品が主流だったサケが、生の状態で消費者まで届くようになったのです。

「養殖」による、安定・大量供給の時代へ

サケを語るうえで、忘れてはならないのが「養殖」です。
1960年代、ノルウェーで最初の鮭の養殖が始められました。当時、サケ漁の衰退に危機感を持ったノルウェー政府が、養殖事業を支援。技術開発を進めるとともに、サケの消費が多いフランスや日本向けにキャンペーンを行うことで、サケの養殖を軌道に乗せていったのだそうです。
南米の「チリ」も、サケの養殖で最も成功した国のひとつです。サケは北太平洋、北大西洋に生息する魚ですから、もともと天然のサケがいない地域で養殖をしているというわけです。
日本にも、このチリで養殖された鮭がたくさん輸入されています。コンビニのおにぎりの具の「鮭」は、この「チリギン」(チリ産のギンザケ)が多いのだそうですよ。
ちなみに、1980年代までの日本では、「紅色の身」と「しっかりした歯ごたえ」のサケが好まれていたそうです。その後、ノルウェーサーモンなどの普及により「たっぷり乗った脂」「やわらかい歯ごたえ」を好む人が増えたといわれます。
「昔から変わらないもの」「伝統的なもの」と思いがちなサケ料理ですが、その味わいは時代とともに変化しているのですね。
次にサケをいただく時は、どの種類のサケなのか、サケが辿ってきた旅路なども思い浮かべつつ、味わってみてください!
参考:ニコラース・ミンク著(大間知知子訳)「鮭の歴史」、農山漁村文化協会「地域食材大百科」、中川裕・中本ムツ子「CDエクスプレス アイヌ語」


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