深まりゆく秋から初冬にかけて、たとえば、少し暖かな小春日和に枯れ葉を踏んで散歩をするのは、心穏やかで楽しいもの。散歩やハイキングのかたわら、美しい秋の景色を背景に、カメラでスナップを撮っている人も多いですね。
そこで、散歩の途中にでも、昔懐かしい現代美術の技法「こすり出し」を試してみませんか。
こすり出しは簡単な遊びでもありますし、ちょっとした日常の記録にもなるので、お子さんと一緒に頼んでみるのも、素敵なひとときとなりそうです。

現代美術の技法として「フロッタージュ」とも呼ばれる「こすり出し」
現代美術の技法として「フロッタージュ」とも呼ばれる「こすり出し」

「こすり出し」「フロッタージュ」「乾拓」

いろいろなものに紙を当てて、鉛筆などで上からこすると白黒の模様が浮かび上がってきますね。
ご存じ「こすり出し」です。子どもの頃、百円玉などをこすり出して遊んだことのある人は多いでしょう。
あるいは、美術の授業で習った人もいるかもしれません。
「こすり出し」は、現代美術の技法として「フロッタージュ」などとも呼ばれます。
シュルレアリスムの画家マックス・エルンストが、いわば再発見したものです。
エルンストは、さまざまなフロッタージュをコラージュして、動物の姿などの作品を残しています。
原理としては石碑などの文字を記録する「拓本(たくほん)」と同じで、水を使わないので「乾拓(かんたく)」ともいいます。
対象物がそのままの大きさで、しかも少し違った姿で浮かび上がってくるのは、かすかな驚きがあって楽しいものです。対象物が汚れることもありません。布目などでも可能です。

こすり出しでアート

これを散歩の途中で試してみるのも一興です。
石碑、ブロックのパターン、石垣、建物の壁面の割れ目などなど……。
凹凸があれば、どんな物でも面白いパターンや文字が浮かび上がってきます。
たとえば枯葉をこすり出すと、樹によって葉脈のパターンが異なっているのがわかります。
マンホールなどでは都市ごとに模様が異なっていたりして、興味深いドキュメントにもなります。
道路のアスファルトをこすりだすと、まるで抽象絵画です。
シュルレアリストを気どって、不思議な作品を作ってみてはいかがでしょうか。
特別な道具などは必要ありません。紙と濃いめの鉛筆があれば十分。
画材屋に行けば専用のクレヨンが売っていますし、書道用品店に行くと「乾拓墨」というものも売っています。
コツも簡単です。紙が破れないよう、鉛筆の芯ほを少し斜めにしてこすってみましょう。こすり方の強弱で「作品」の表情も変わってきます。
昔懐かしい「こすり出し」で、晩秋の一日を芸術的に楽しんでみましょう。

身近にある物でも、こすり出しをすると芸術的風合いに
身近にある物でも、こすり出しをすると芸術的風合いに