やがてみなもは鴨のにぎわい…七十二候『鴻雁来(こうがんきたる)』 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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やがてみなもは鴨のにぎわい…七十二候『鴻雁来(こうがんきたる)』

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澄んだ秋空に映える雁の群れ

澄んだ秋空に映える雁の群れ

限られた地域でしか確認できなくなった真雁

限られた地域でしか確認できなくなった真雁

水辺に戯れる水鳥たち

水辺に戯れる水鳥たち

十月九日から、寒露の初候「鴻雁来(こうがんきたる)」。北帰行していた雁(がん・かり)が、冬越しのために戻ってくる、という意味です。
昨年度、日本で冬越しした雁類は20万羽を越え、あわせてカモ類は157万羽、白鳥類は七万羽を数えたそうです。もちろんカモ類には渡りをしない個体もありますが、やはり秋から冬は、湖沼や川べり、海岸は、多くの水鳥でにぎやかになり、ぷかぷかと水面に群れで浮かぶさまはかわいらしいですよね。

明治期から激減した雁

雁は鴨類・白鳥類と同じガンカモ科に分類されますが、一般的な鴨よりも大型で、見た目も白鳥に近い特徴を備えており、一応区別されています。現在日本で主に見られる雁の仲間はマガン、ヒシクイ、コクガン。
江戸時代には一般庶民が雁を狩猟することは禁じられていたために全国どこでも雁の姿は見られました。けれども明治になり、禁猟が解禁されると雁は反動のように乱獲され、みるみる数を減らしていきました。
それでも森鴎外の「雁」では、上野の不忍池にいる雁に石つぶてを投げつけて殺してしまう、という描写があるように、当初は東京都心でも普通に雁が見られたことがわかります。
しかし乱獲と生息地の乱開発は続き、シジュウカラガン、ハクガン、カリガネ、サカツラガンはほぼ絶滅、ついに宮城県の伊豆沼の一部でしか見られないほどに絶滅寸前になってしまいました。そこで昭和46年(1971年)から雁類、マガンとヒシクイの狩猟は全面禁止され、保護が徹底されるように。こうして次第に雁は数を再び増やしてゆき、現在では前述したように20万羽がわたってくるほどに回復しました。
けれども、それだけの数であってもそのほとんどは宮城県の伊豆沼を中心とした湖沼群に集中し、全国でその姿を見られる場所は数えるほどしかありません。南関東に住む筆者も、ヒシクイの群れは何度か見た以外、マガンは二度ほど迷い鳥を見かけた程度で、あの雁行の編隊を見たことすらありません。雁類は大きな湖沼と水田のある場所を好み、全国からこうした環境が減少したことは事実ですが、東関東、茨城南部から千葉北部にかけては、霞ヶ浦や牛久沼、印旛沼などの湖沼と広大な水田があり、その地にマガンが飛来しないのは不思議です。白鳥の飛来地もあり、もしかしたら、いずれマガンもやってくるようになるかもしれません。

いと文学的なる雁

「秋は、夕暮。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などの連ねたるがいと小さく見ゆるは、いとをかし。」(枕草子)
なぜか日本の文学者は雁を偏愛し、どの時代にもその作品の中に叙述してきました。
澄んだ秋空の夕映えを背景にV字型や一列の雁行のシルエットは、確かに心にしみるものがあります。
でも、編隊飛行をする渡り鳥は雁だけではなく、他のカモ類にも見られるもの。どうして雁がこれほど特別視されるのか、ちょっと不思議です。もしかしたら平安時代などには、鴨よりも雁のほうが多かったのかもしれません。
雁には故事成語や慣用句も多く、よくいわれる「雁首をそろえる」は、物音に驚いた雁の群れが、いっせいに頭を上げて同じ方向を見るさまのたとえです。「雁書」「雁の使い」「雁のたまずさ」というのは手紙のことですが、古代中国で匈奴(きょうど)の虜囚となった蘇武が渡ってゆく雁の脚に手紙をつけて漢帝に便りをしたためたという故事から。「がんじがらめ」も、雁にかかわるとされていますが、そのゆえんは諸説あり不明です。
食べ物では、おでんに欠かせないがんもどきは言うまでもなく「雁の味に似ている」ということからそう名づけられているそうですが、事実似ているとしたら、案外あっさりとした味なのかもしれません。しかし鴨よりもこってりしているという説もあり、実際にどんな味なのかはわかりません。筆者は雁の肉を食べられるよりも、身近で雁が普通に見られるようになってほしいと思いますが・・・。

カモっぽい水鳥たちのおおまかな分類を知ろう

さて、冬に向かうこれからは、さえぎる草や葉が少なく空気は澄み、バードウォッチングに最適な季節。特に水鳥の種類が多く、さまざまな種を観察できる機会です。えてして水に浮かんでいるずんぐりした水鳥はどれも「カモ」といっしょくたにしてしまうかもしれませんが、実はガンカモ類とはまったく違う種類がいくつもあります。
特にカイツブリの仲間はカモと混同する人が多いのですが、まったく違う目・科に属しています。近い種類はなんとフラミンゴ。
それから、鵜飼で知られる鵜の仲間。これは、ペリカンの仲間に属します。
そして、わりとよく見られる全身が黒いバンという水鳥もカモとよく似ていますがこれは鶴の仲間。
白鳥の仲間がカモ、アヒルや雁、フラミンゴの仲間がカイツブリ、ペリカンの仲間が鵜、鶴の仲間がバン、というふうに関連付けて、カモっぽい連中のこまかな違いを観察してみると楽しいと思います。
雁はなかなか見られませんが、仲間の鴨や水鳥たちを眺めても、きっと鴻雁来の季節を感じることはできるのではないでしょうか。


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