江戸の職人の小腹を満たしたおそば、ロシアで愛されるそば粥。日本と世界のそばあれこれ

tenki.jp

高地や寒冷地でも生育するそば。写真はロシアの「... (16:30)tenki.jp

高地や寒冷地でも生育するそば。写真はロシアの「... (16:30)tenki.jp
夏そば、秋そばがあるなか、味、 香り、色に優れ、珍重される「秋そば」。
ざる、もり、天ぷらそば……と、私たちの生活に身近な「そば」ですが、原産地はシベリアから中央アジア。
縄文時代にはすでに日本に伝来していたと言われ、そばによる町おこし、村おこしも盛んです。
生育期間が短く、干ばつにも強いそばは、救荒作物として人びとの命を救い、今日では生活習慣病を予防する食品としても注目を集めています。
── 秋の気配が深まり、美味しいおそばが恋しくなる季節。そんなそばにまつわるお話を集めてみました。

昔は、お米のように「粒食」していた?

一般には「穀物」のように扱われているそばですが、植物の分類でいうと「タデ科」。
私たちが穀物と聞いて連想するコメやムギなどは「イネ科」に属していますので、かなり違う植物なのです。
そんなそばの種類は、大きく二つに分けられます。
ひとつ目は、日本や中国、ロシア、カナダなどで主に栽培されている「普通そば」。
もうひとつは、ネパール、ブータン、インドなどで主に栽培されている「韃靼そば」。苦みが強いのが特徴です。
ちなみに、日本でそばを麺に加工するようになったのは、鎌倉時代以降のことと言われます。中国から「ひき臼」が伝来し、製粉が手軽に行えるようになったのがきっかけでした。
それまでのそば、粒のまま炊いて食べていたようです。現在でも「そば米」の名前で「そばの実から表皮を取り除いたもの」が販売されていますね。四国や東北を中心に、そば米を食す文化が残っています。

蕎麦がき、切り蕎麦……そばにまつわる文化あれこれ

現在のような「切りそば」が普及する以前、人気だったのはそば粉をお湯でこねた「そばがき」。
豊臣秀吉もこのそばがきが好物で、好んで食したと伝えられています。やがて江戸時代になると、切りそばが一般的なものになっていきました。
江戸の職人や商人は、一度にたくさん食べて満腹になるのを「仕事の能率が落ちる」として嫌ったとか。少しずつ何度も食べる人が多かったので、町には軽食を売る屋台が並ぶようになりました。そのなかで、寿司、天ぷら、おでんとともに人気を博したのが、そばの屋台だったのです。
俳句や落語、浮世絵などにもそばが登場しているのはご存じの通り。
当時、最高級の文学は「漢詩」だったそうですが、江戸の知識人による漢詩にも、もちろんそばが登場します。
漢詩のお作法(?)どおり古典文学なども引用しながら、そばの素晴らしさや名店の味をたたえる……そんな作品が残っているようです。

世界の「ソバ」料理、どのくらい知っていますか?

世界各国で栽培されてきた「そば」。もちろん、そば料理も世界中に存在します。
ロシアをはじめ東ヨーロッパに伝わる「カーシャ」(そば粥)。
日本でいう「そば米」を煮たものに、バターや牛乳を加えて作るのが一般的です。中世ロシアでは、結婚披露宴にこのカーシャが欠かせず、宴そのものが「カーシャ」と呼ばれるほどだったそうですよ。
ポーランドには、そば粉を使ったプディングなどの料理が、アルプス山脈近くのチロル地方には、そば粉を使ったすいとん状の料理があります。
また、マスなどの淡水魚に、そば粉で作った詰め物をする料理も各地に残っています。フランスのブルターニュ地方で食べられている、そば粉で作るガレットも有名ですね。
ネパールやブータンも、そばを食べる習慣が広まっている国。
麺にするほか、そば粉のお菓子や、そばを原料にした焼酎などもあるそうです。最も一般的なのが「ロティ」。そば粉を練って丸く伸ばしたものを焼いて、辛いたれをつけて食べる、お焼きに似た料理です。
韓国料理屋さんや焼き肉屋さんのメニューでも、おなじみの「冷麺(ネンミョン)」。
そば粉や緑豆粉、小麦粉などで作られた麺で、地方により色々なバリエーションがあります。それ以外にそば料理として挙げられるのが「ムック」。そば粉やどんぐりの粉、緑豆粉などを水で溶いたものに寒天を加えて固めたもので、お祝い用の料理だそうです。
ちなみに、いわゆる「かけそば」が登場したのは元禄年間(1688年〜1704年)。
丼に入れたそばに汁をかけたものを「ぶっかけ」と称して売ったのが最初で、それが次第に「かけ」と呼ばれるようになっていきました。当時は下品な食べ物とされ、とくに女性は食べてはならないとされていたとか。誰が、どんなおそばを食べてもいい時代に生まれたことに感謝しつつ、今秋も美味しい「新そば」をいただきましょう!
参考:鈴木健一「風流 江戸の蕎麦」
荻野恭子・沼野恭子著「家庭で作れるロシア料理 ダーチャの菜園の恵みがいっぱい!」
社団法人農山漁村文化協会「地域食材大百科」

続きを読む

この記事にコメントをする

TwitterでAERA dot.をフォロー

@dot_asahi_pubさんをフォロー

FacebookでAERA dot.の記事をチェック