今年7月、NASA(米航空宇宙局)の無人探査機「ニューホライズンズ」が、約49億kmの旅を経て冥王星に最接近。
至近距離から捉えた冥王星の画像が公開され、人類が初めて目にする冥王星の鮮明な姿に、世界中から驚きと感嘆の声が上がりました。
それから約3カ月、いま現在も冥王星の新たな観測データを送り続けているニューホライズンズ。
その人類史上初となる壮大なるミッションと、神秘に包まれた準惑星・冥王星の姿に迫ってみました。

ニューホライズンズによって、太陽系の成り立ちに迫る新発見が期待されています
ニューホライズンズによって、太陽系の成り立ちに迫る新発見が期待されています

神秘のベールに包まれた準惑星「冥王星」

1930年にアメリカの天文学者クライド・トンボーによって発見され、2006年まで太陽系第9惑星とされていた冥王星。
しかし、太陽系の研究が進展する近年、天文学者の間で冥王星を惑星とみなすことへ疑問の声が上がり、2006年の国際天文学連合総会で惑星の定義が見直されました。
その結果、冥王星は惑星の区分から除外となり、現在は太陽系外縁天体内の「準惑星」として分類されています。
1周248年の楕円軌道で太陽の周りを公転する冥王星は、地球と逆向きに自転しているため、太陽が西から昇り東へ沈みます。直径は月の約3分の2と小さく、表面は氷と凍ったメタンで覆われていると考えられています。
地球からの見かけの等級は、わずか14等級以下。宇宙空間から地球軌道をまわるハッブル宇宙望遠鏡でさえ、ぼやけた画像しか撮影できないといいます。
あまりにも遠く・暗く・小さいため、地球から詳細に観測することができなかった冥王星。その正体は、これまで深いベールに包まれていました。

人知を超えた宇宙空間に迫るニューホライズンズ

そんな未知なる冥王星の姿が、NASAの無人探査機「ニューホライズンズ」によって、いま少しずつ明らかにされようとしています。
ニューホライズンズは2006年1月19日、米・フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から打ち上げられました。
打ち上げ後、1年ほどで木星に到達すると、木星の大きな重力を利用して飛行速度を時速8万3000kmまで加速。
弾丸よりも早いスピードで太陽系を疾走していきました。
そして、打ち上げから9年半を経た2015年7月14日、およそ49億km離れた冥王星の約1万2000km上空まで最接近したことが確認されたのです。
その際に撮影された画像には、驚くほど鮮明な冥王星の姿が映し出されています。
地表には大きなハート型の模様が広がり、画像をよく見ると巨大なクレーターや谷、富士山クラスの山々なども確認できます(※1・関連リンク参照「ニューホライズンズが撮影した冥王星/JAXA公式サイト」)。
NASAによると、これらの山は氷でできており、およそ1億年前に形成されたと考えられ、現在も成長している可能性があるといいます。そうしたことから、冥王星はこれまで考えられていた以上に、かなり活発に活動しているのではないかと見られています。

人類が託した夢とともに果てなき旅を続ける

今年7月の最接近後も、ニューホライズンズは冥王星の観測データを次々と地球へ送り続け、2016年5月までに全データの送信が完了する予定となっています。
これから届く画像や詳しいデータを分析することで、冥王星・太陽系の実態に迫る、人知を超えた新発見があるかもしれません。何だかとてもワクワクしますよね!
ちなみに、ニューホライズンズにはアメリカの星条旗や25セント硬貨、切手などの搭載物とともに、冥王星の発見者・トンボーの遺灰が収められているそうです。
冥王星に接近した後は太陽系を脱出し、可能な限り飛行を続けながら、知られざる小天体の探査へと向かっていくニューホライズンズ。
トンボーの遺志と人類の夢を託されたニューホライズンズの果てなき旅は、これからもまだまだ続いていきます。