9月に入り、カボチャが旬をむかえています。カボチャの作づけ面積・収穫量、ともに日本一の北海道の和寒町(わっさむちょう)をはじめ、北海道では昼夜の寒暖の差を利用して、さまざまな品種のおいしいカボチャが作られています。そんな“カボチャ界”で、ビックリするような高価格のカボチャがあるのをご存じですか。それも、毎年飛ぶように売れるとか。この、箱に入って売られる高級カボチャ、どうしてそんなに高いのでしょうか。その秘密は…。

昼と夜の寒暖差が大きい北海道では、デンプン含有量が増えるので甘くなる!!
昼と夜の寒暖差が大きい北海道では、デンプン含有量が増えるので甘くなる!!

栗山町の 「栗マロンかぼちゃ」。1玉1玉大切に育てられ、甘さ・ホクホク感・コクのバランスが絶妙 !!

名前に「栗」と「マロン」がついている「栗マロンかぼちゃ」。栗のようにホクホクで、糖度は15~20度、なんとメロン並みです!! カボチャに含まれるデンプンの量が一般的なカボチャの5倍もあるので、甘さとホクホク感とコクのバランスがよく、何の味つけもせずレンジでチンしただけでも、とてもおいしいと評判です。
「栗マロン」は最初、宮崎の農家が「ものすごくおいしいカボチャ」の種を手に入れ、生産がはじまりました。しかし、味はいいものの玉のサイズが小さく、収量を上げることができません。そこで、北海道夕張郡の栗山町に種が持ち込まれ、栽培の研究が始まりました。玉のサイズを大きくするため、幾度となく試行錯誤が繰り返された結果、現在のような大きな玉に成長させることに成功しました。「栗マロン」の「栗」は、「栗山町」の「栗」からきています。
栽培でまず大事なのは土づくり。土に魚カスの粉末を混ぜてアミノ酸を増やし、微生物を活発に働かせます。また、高級メロンを育てるように、1本のツルに実は1個だけにして栄養を集中させます。さらに、実が日に焼けるのを防ぐため、一つ一つを新聞紙でくるむこともあります。
収穫のタイミングも重要です。日が当たらなかった部分の皮が黄色く色づいていればOKです。これはグラウンドマークといって、カボチャの熟期が外から見てわかります(上の写真参照)。収穫後、ヘタにひびが入ったらヘタを実のギリギリのところでカットし、10日ほど乾燥させて味に深みを持たせてから出荷します。栗山町にはカボチャ専用の倉庫があり、温度と湿度が徹底管理されています。収穫後は農家同士で一つ一つの見た目や味を確認し、出荷できる基準に達しているかを厳しくチェックします。
「栗マロン」を作っている生産者は長崎と宮崎のごく一部、そして北海道では函館近郊の森町(もりまち)と夕張郡の栗山町だけ。生産者の数は100人にも満たないという少なさですが、「栗マロン研究会」を立ち上げ、難しい栽培法をこと細かく記したマニュアルを作成し、「栗マロン」のブランドを大切にしています。
都内の有名デパートなど、限られたところや通販でしか売られていない「栗マロン」は、1玉2000円のものもあるという高級なカボチャですが、毎年飛ぶように売れています。メロンのように一つ一つ、愛情を込めてていねいに育てられた「栗マロン」。生産者の手間ひまが実り、今が旬です。

森町の 「くりりん」 は、“有機JAS” 認定の無農薬カボチャ。1玉6000円でもあっという間に売り切れ !!

函館から車で1時間、茅部郡(かやべぐん)森町(もりまち)の「くりりん」は、みよい農園で作られている有機無農薬のカボチャです。「栗マロン」同様、糖度が高く、ホクホクとした舌ざわりとコクが特徴の、甘いカボチャです。
森町は活火山である駒ケ岳の近くに位置しているので、土壌は火山灰。大変水はけのよい畑です。そんな畑でとれる「くりりん」。そのおいしさの秘密はズバリ、“海の恵み”です。森町は海沿いの町でホタテの養殖が盛んなのですが、毎年、大量のホタテの貝殻が産業廃棄物として大量に廃棄されていました。現在では貝殻は、学校のチョークや、白線ラインの粉として利用されています。みよい農園では、この貝殻にくっついている海藻や小さい甲殻類に目をつけ、貝殻を肥料として使ったところ、畑がいきいきとし、カボチャの糖度も上がりました。また、塩分を抜いた海洋深層水を畑にまくことで上質なミネラルを取り入れ、土の中の微生物を増やしています。
こうして手間ひまをかけて栽培されている「くりりん」のうち、1玉が3.5kg以上のものを敷地内の大きな熟成庫に入れ、45℃まで温度を上げ、そして下げる、これを繰り返して熟成させます。こうしてできるのが、「黄金のかぼちゃ」。1玉なんと6000円!! 糖度は25度以上。ちなみに、去年の最高糖度は30.5度。一般のカボチャの2倍の糖度です。
最近は、手軽に料理やお菓子づくりに利用できる「うらごし有機南瓜」という、便利なペースト状の加工品も販売されています。
「くりりん」は11月上旬まで出荷されますが、今が一番おいしい時期だといわれています。海の栄養分を利用した有機無農薬の「くりりん」。こちらも今が旬です。
北海道は昼と夜の寒暖差が大きいので、カボチャのデンプン質が増えます。まさにカボチャの栽培に向いている気候といえます。上川郡の和寒町(わっさむちょう)は、カボチャの作づけ面積、収穫量、ともに日本一を誇っています。ほかにも北海道にはカボチャの産地が多数あります。そんな「かぼちゃ王国」北海道で、高級メロンのように手間ひまをかけて育てられた絶品カボチャ。一度食べてみたいものです。

カボチャのスープで甘さを実感 !!
カボチャのスープで甘さを実感 !!