今が旬の「禁断の果実」といえば……そう「無花果(イチジク)」です。
乾燥したイチジクは1年中食べられますが、フレッシュな生のイチジクは今の時期にしか味わえません。生ならではのジューシーでとろけるような美味しさは、やはり格別ですよね!
ところで、なぜイチジクは禁断の果実と呼ばれるのでしょうか?
さらに、無花果(花が無い果実)と書くイチジクは、本当に花が咲かないのでしょうか?
どこか神秘的な魅惑の果実・イチジクのアレコレにフォーカスしてみました。

この時期にぜひ味わいたい生イチジク。シャンパンやワインのお供にもGOOD!
この時期にぜひ味わいたい生イチジク。シャンパンやワインのお供にもGOOD!

「実」ではなく「花」を食べていた!?

イチジクは【イラクサ目・クワイ科・イチジク属】の落葉樹です。露地物のイチジクの収穫期は長く、初夏から夏にかけて実を付ける「夏果」と、夏から初秋にかけて身を付ける「秋果」があり、夏と秋の両方に実を付ける品種もあります。
イチジクは「無花果」と書きますが、実際に花が咲かないわけではありません。イチジクの花は「隠頭花序(いんとうかじょ)」と呼ばれ、実の中に無数の白い花を付けます。花弁が外から見えず、花が咲かないように見えることから、「無花果」という字が当てられたのでしょう。
ちなみに、一般的に食用にされている実の部分は、植物学的には果実ではなく、花軸が肥大化したものです。イチジクの実を切ると、中に白い粒々が付いているのが見えますが、これが先にもご説明した花の部分に当たります。つまり、私たちはイチジクの「実」ではなく「花」を食べていたんですね。

「禁断の果実」と呼ばれる理由とは?

ところで、どうしてイチジクは禁断の果実と呼ばれているのでしょうか?
その理由には諸説ありますが、元となったのは『旧約聖書』の創世記に記された「アダムとイブの神話」といわれています。
皆さんもご存じの通り、アダムとイブは神から「食べてはいけない」とされた禁断の果実を口にしたことで、エデンの園から追放されてしまいました。この禁断の果実とは、一般的に「リンゴ」とされていますが、創世記には単に「果実」とあるだけで、リンゴとは書かれていないそうです。リンゴはギリシア神話で魅惑の象徴とされていたため、「禁断の果実=リンゴ」という説が広まったようです。
一方で、アダムとイブが果実を食べた後にイチジクの葉で裸を隠したことから、キリスト教徒や聖職者の間では「禁断の果実=イチジク」と考えられています。古来、イチジクは女性の性的なシンボル・象徴とされており、イタリア・ルネサンスの時期には、イチジクを禁断の果実として描いた絵画作品(システィーナ礼拝堂の天井画が有名)が多く生み出されました。
いずれにせよ、その真相はベールに包まれていますが……皆さんはどう考えますか?

ミケランジェロが描いたシスティーナ礼拝堂の天井画「最後の審判」
ミケランジェロが描いたシスティーナ礼拝堂の天井画「最後の審判」

美容と健康に役立つ栄養素がたっぷり

そんな、ちょっぴり謎めいた魅惑の果実・イチジクは、低カロリー(100gあたり54kcal)で栄養的に見ても魅力たっぷり。美容・健康に役立つ栄養素が豊富に含まれています。
●腸の活動を活発にする水溶性の食物繊維「ペクチン」を豊富に含み、便秘の解消に役立つ。
●ナトリウム(塩分)の排出を促すカリウムを多く含み、塩分の採り過ぎによる高血圧やむくみの解消に役立つ。
●カルシウムや鉄分など、血液や骨の素となるミネラル分をバランスよく含み、貧血や骨粗鬆症の予防に役立つ。
●タンパク質分解酵素の「フィシン」を豊富に含み、消化促進や二日酔いの予防に役立つ。
栄養豊富で身体にも嬉しいイチジク。
とくに、旬の今しか食べられないフレッシュなイチジクは、まさに禁断(?)の美味しさ。
ぜひ、この機会に味わってみてはいかがですか?