夏の終わりを惜しむように愉しみたい「線香花火」が描く十数秒のドラマ 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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夏の終わりを惜しむように愉しみたい「線香花火」が描く十数秒のドラマ

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ワラに火薬をつけた素朴な線香花火も

ワラに火薬をつけた素朴な線香花火も

酷暑から一挙に涼しくなったこの8月。夏をもっと満喫したかったのに、ちょっぴり肩すかしをくらった気分の方も多いのではないでしょうか。そこで、夏休み最後の日にお届けするのが、懐かしの「線香花火」のお話。盛大に夜空にあがる打ち上げ花火とはまた異なる魅力で、近年じわじわと人気上昇中です。儚い夢にも似た光のドラマを、夏の終わりに愉しんでみませんか?

見た目もおしゃれに!懐かしき「線香花火」がじわじわ復活

夏の風物詩・花火。盛大な打ち上げ花火とはまた違い、家庭や親しい人たちとわいわい愉しむ、玩具花火もいいものですね。
勢い良く発火する花火やネズミ花火などもいいけれど、やっぱり最後の最後に点火するのは、しみじみとした情趣あふれる「線香花火」という方も多いのではないでしょうか。
ちっちっとかすかな音をたて、繊細な火花が次々ときらめいた後、火の玉がポトンと落ちてしまう「線香花火」には、日本人なら誰しも感じる情感……夢のような儚さや、うつろいゆく時や季節を惜しむ、もののあはれに満ちています。
パック売りの玩具花火が主流となり、単体での線香花火をあまり見かけないと思っていたら、近年、おしゃれ雑貨として、デパートやセレクトショップに登場。
じわじわ人気が高まり、今年はとくにデザイン性に優れた商品が数多く出回っているような気がします。美しい和紙などに包まれた線香花火は、特別な人へ気持ちを伝える贈り物にしたくなるほどです。それらは希少な国内生産品で、花火職人が1本1本丁寧に手作りしたもの。日本人ならではのこまやかなもの作りの精神は、こんな小さな花火にもやっぱり活きていると思うと、なんだか嬉しく、愛おしさすら感じます。

昔ながらの製法で作られた国産品は、ワインように熟成もOK!?

一時は中国産に押され、国内での生産がゼロになったという線香花火ですが、その発祥は江戸時代。
稲ワラの中心の固い芯、ワラスボの先に火薬を付け、それを香炉に立てて火をつけて遊んでいたことが、始まりだと言われています。その後ワラが豊富にある関西地方へ伝わり、ワラに火薬を直接付けた「スボ手牡丹」という線香花火として今に残っています。
現在国産のスボ手型は、福岡県みやま市にある筒井時正玩具花火製造所(下記リンク先参照)のみで作られているとか。
300年変わらない線香花火の素朴な原形です。
一方、関東地方では紙すきが盛んだったためか、ワラではなく和紙で火薬を包んだタイプが主流に。紙で火薬をくるんで丁寧によりあげて作る線香花火は「長手牡丹」と呼ばれています。
ところで、折角買い求めた国産の線香花火。タイミングを逃して使い残す場合もよくあると思います。
なんとなく長く置けばしけちゃいそうで、買ったその年に使いきらなければと、筆者自身もそう思っていました。
ところがなんと! ワインと同じように線香花火も「熟成」によって味わいが深まるとのこと。何十年でも置けば置くほど火薬がなじみ、光が美しくなるというのですから驚きです。
湿気にはくれぐれも気をつけて(ビニール袋入りの場合は出したほうがいいかも)戸棚や桐箱の中に保管しておけば大丈夫ということですから、あえてとっておいて、長く熟成させてみるのも一興かもしれません。

人の一生にもたとえられる、儚くきらめく十数秒間を愉しむ方法

さて、線香花火の愛で方、愉しみ方について少々。
点火してから燃え尽きるまでわずか数十秒の間に、多様な変化を見せるのが線香花火の特徴です。その燃え方には4つの段階があり、それぞれ以下のような風情ある名がつけられています。
ものがたりの起承転結のような、能楽の序破急のような、春夏秋冬のような、はたまた人の一生のような…実際に線香花火を愉しむ際は、移り変ってゆく光のドラマをぜひじっくりとご堪能ください。
●蕾/点火とともに、命が宿ったかのように膨らむく火の玉は、これから花を咲かせる直前の「蕾」のよう。
●牡丹/パチッパチッと勢いよく火花が咲き出す様は「牡丹」の花を思わせます。
●松葉/「松葉」のような火花が、華麗に飛びはじめます。優美にして繊細な炎はまさに芸術的。
●散り菊/衰えた火花が一本、また一本と燃える「散り菊」。やがて赤から黄に変わった火の玉は光を失い静かに落ちてゆきます。
都会ではなかなか花火ができる場所は少なくなってきましたが、線香花火なら比較的大丈夫。炎も小さく、煙りも少ないので、場所を選ばない点が何より魅力ですね。
小さいけれど、ドラマチック。
儚いけれど、いさぎよくもあるような。
古き懐かしい「線香花火」に今宵炎を灯せば、今年の夏がよりかけがえなく、思い出深い記憶に変わります。
WEB上で線香花火と検索すれば、いつでも手軽に購入できますので、ぜひ花火を囲んで、しばし夢幻のひとときをお愉しみください。
※参考・出典
筒井時正玩具花火製造所サイト
山縣商店サイト


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