処暑の七十二候は、次候「天地始めてさむし(てんちはじめてさむし)」(8月29日~9月2日)に入ります。
「天地始めてさむし」は、「天地始粛」と表記していました。空も大地もすべてが粛し、改まるという意味があります。季語や味覚とともに、秋の浸み行くようすをお伝えしてまいります。

すっかり秋めいて、爽やかから秋冷へ

二十四節気「処暑(しょしょ)」も、七十二候が次候をむかえました。七十二候は二十四節気を三等分にした歳時記なので、その節気の真ん中にあたります。
「処暑」は暑さおさまる、ですが「天地始めてさむし」も、空や空気や大地に処暑の「気」がすべてに新しい季節が宿りはじめることを言います。「処暑の中の処暑」とでもいいましょうか…。
朝夕の風だけでなく、一日の最低気温や最高気温もほんの一週間前と比べてずいぶん変わりましたね。陽射しが隠れてしまうと爽やかを通り越し「冷ゆ」という季語が浮かんでしまいます。

山から里へ…水に秋が宿る季語「水澄む」

季語は春夏秋冬でそれぞれ対比している言葉が多いのですが、秋に「水澄む(すむ)」という季語があり、春の「水温む(みずぬるむ)」に対比しています。
春の「水温む」には、山の雪解け水も温まってきた柔らかさがありますが、秋の「水澄む」は、秋冷をふくんで流れる水の、爽涼であるからこその透明感が伝わってまいります。
水は山から里へ、そして海へ流れています。山の気候がすすむにつれ、流れる水も冷たくなる。海水浴で賑わった夏が遠い過去の様に思われて来るから不思議ですね。

本格的な秋を前に「葡萄」で実りの秋を!

とは言え、お天気は気紛れです。涼しくなったな~そろそろ長袖を…と思ったら、残暑がぶり返したり、秋雨前線に伴う湿気で体感温度が実際より高く感じたり…そんな日々を幾度かくりかえして、秋は日本列島を駆け廻ります。
そのそれぞれが「実りの秋」のために欠かせいことを私たちは知っています。
「実りの秋」のひとつ、「葡萄(ぶどう)」は今が食べごろを迎え、甘酸っぱさと一緒に瑞々しさが口の中に広がります。最近では種無しが増え、皮ごと食べられる品種もあり嬉しいですね。ゆっくりやって来る秋を、私たちも一つずつ堪能したいものです。良い週末をお過ごしください。

《参考文献・サイト》
俳句歳時記「秋」 角川学芸出版
ブドウ狩り 2015年版