立秋から二週間、朝夕の風が変わり空も澄み始めてまいりました。季節の花が空に映る様子も爽やかですね!
新暦8月23日は二十四節気「処暑(しょしょ)」を迎えます。気象の特異日でもあるとか…。
このころの風物詩から、秋の足音に耳を澄ませてみましょう。

木芙蓉
木芙蓉

処暑のころの風物

二十四節気の「処暑(しょしょ)」とは読んで字のごとく「暑さのおさまる頃」という意味を持ちます。
この頃になりますと、秋の足音が確かに聞こえるようになります。それは少し前までより色濃く、街行く人の服の着こなしや、店先に並ぶ食品の種類、天気予報など…目に見える形であらわれて来ます。
他にも、処暑は気象の特異日として「台風が多い」と言われるとか…。
今週末も台風が日本列島に迫っています。予報や地域の注意報に十分な注意が必要ですね。被害がないことを祈りつつ、野分(台風)後の風景に目を向けてみましょう。

夏のかけらがかき消えて

台風一過(たいふういっか)という言葉があります。台風によって大掃除がされたかのように、空が透きとおり、対照的に地面には台風の名残…強風に飛ばされたいろいろ…をとどめる情景を表わしています。言外に、夏休みが終わる頃に感じる一抹(いちまつ)のさみしさと似た、不思議な切なさが漂います。地面に残った台風の足跡は「夏のかけら」を思わせ、まっさらになった空は、そのかけらも連れ去ったかのように感じているのかもしれませんね。
でも、嵐の後には、それを乗り越えた自然の美しさが私たちを待っていてくれます。例えば、今が見ごろの花のひとつと言えば…?

秋の季語は彩りゆたか!

夏に比べて静かでさみしいイメージのある「秋」。しかしながら、季語の世界では彩りゆたかです。
冒頭の写真の「酔芙蓉(すいふよう)」です。芙蓉は、初秋の花として馴染み深く(花期は8月~10月)、「白芙蓉」、「紅芙蓉」に加え、「酔芙蓉(すいふよう)」という品種があります。「酔芙蓉」の名の由来は朝は白く花開き、時間が経つにつれて赤みが増し、夕方になると紅芙蓉のような色になるところから、酔っぱらいのお花という呼び名がついたそうです。ご近所の芙蓉が朝夕で同じ色かどうか?…「暑さおさまる頃」、お散歩で観察してみるのも楽しいですね。
また、芙蓉は古来から「美しい人」を例える花とも言われており、枯れても「枯芙蓉(かれふよう)」と呼ばれて、枯れてもなお…と親しまれ、芭蕉・蕪村・漱石・虚子と、多くの俳人の句も残っています。
中でも、高浜虚子の『物かげに芙蓉は花をしまひたる』は、夕方にしぼむ花の様子が目に見えるようですね。

《参考文献・サイト》
俳句歳時記『秋』  角川学芸出版編
季節の花300(リンク参照)